日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG53] 地震動・地殻変動・津波データの即時把握・即時解析・即時予測

2021年6月6日(日) 13:45 〜 15:15 Ch.18 (Zoom会場18)

コンビーナ:小木曽 仁(気象庁気象研究所)、山田 真澄(京都大学防災研究所)、太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、近貞 直孝(防災科学技術研究所)、座長:近貞 直孝(防災科学技術研究所)、太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)

15:00 〜 15:15

[SCG53-06] 地震波振幅を用いた震源分布の準リアルタイム把握

*小木曽 仁1 (1.気象庁気象研究所)

キーワード:地震波振幅、震源分布、リアルタイム解析

地震活動の監視において、震源分布は極めて重要な情報であり、活動活発化の際にはその重要性は一段と大きくなる。地震の震源を推定するにはP波やS波の到達時データを使用するのが一般的であるが、特に地震が多発している状況では到達時データの自動・手動読み取りは困難であり、震源決定数の減少につながる。

 地震波振幅を用いた震源決定手法(Amplitude Source Location method: ASL法)は観測される地震波振幅をそのまま震源推定に用いることから、到達時データを必要としない利点があるが、一般的に振幅から推定される震源の精度は到達時から求めた震源の精度より悪いという欠点があった。しかし、Ogiso and Yomogida (2021, EPS)は基準イベントと対象イベントの観測振幅の比を取ることにより、ASL法の震源精度に大きく影響するサイト特性をキャンセルしたうえで震源の相対位置に関する線形の方程式が得られることを示し、また、この定式化に基づいて得られた震源分布は地震波振幅を用いているにも関わらず到達時から推定した震源分布と比肩しうるものであることを示した。したがって、Ogiso and Yomogida (2021)の手法を準リアルタイムに適用できれば、到達時を用いた自動震源決定手法(例えばTamaribuchi, 2018, EPS)を補完する情報となるであろう。本発表では、Ogiso and Yomogida (2021)の手法(以下、本手法)を準リアルタイムに適用して地震活動を把握するための検討状況を述べる。

 地震活動が活発な事例のひとつとして、北海道東部に位置する雌阿寒岳における2008年9月29日14:00~16:00の連続波形に本手法を適用した。この時間帯では火山性微動の発生後に地震が多発し、札幌管区気象台によると2時間の間に約230個の地震が発生している。本手法を連続的に適用したのち、震源振幅の時系列に基づいた簡単なスクリーニングを行うことで103個の震源を推定することができた。同時間帯に札幌管区気象台が推定した震源は34個であった。

 雌阿寒岳の事例はOgiso and Yomogida (2021)で使用されている近似条件を満たすものであるが、より範囲の広い地震活動ではこの近似が満たされない可能性がある。そのため、2016年熊本地震の余震活動の把握を念頭に置いた数値実験を行い、近似条件の影響を調査した。その結果、対象イベントが基準イベントから約25km離れている場合でも、イベントの振幅切り出しが正確に行われていれば少なくとも震央に関しては十分推定可能であることがわかった。すなわち、走時差の補正を行うことで対象イベントが基準イベントから大きく離れている場合でも本手法が適用できる可能性があることがわかった。