17:15 〜 18:30
[SCG53-P02] 日本周辺で起きた陸域・海域の浅発地震に見られるPL波 とその生成要件ーPL波を用いた津波の即時予測の可能性
キーワード:PL波、地震波伝播、差分法計算、津波即時予測
1.PL波とは
PL波は、P波とS波の間に見られる周期数秒〜数十秒程度のやや⻑周期の相である。浅い震源から放射されたP波が地殻内を多重広角反射により伝播する過程で干渉を起こし、長周期の波群を形成したものである。Sommville(1930)は、この波をP-long waveを意味するPLと命名し、その後、Oliver and Major(1960)によりレイリー波のリーキングモードとして解釈された。上部マントルにおいて同様のメカニズムで生成する、より長周期(100〜1000秒)の相はKanamori (1993)によりW-phaseと名付けられ、大地震のCMT解析・津波即時予測に広く活用されている。近年、W-phase解析は近地強震記録に見られる周期数十秒以下の波群(すなわち、PL波)への適用も進められている(例えば、Duputel et al., 2012; Hayes et al., 2009; 碓井・山内、2013)。
本研究では、近地波動場に見られるPL波を、津波発生の可能性を即時的に判断する指標として活用するために、海溝型の大地震に見られるPL波の特徴とその生成・伝播要件を地震波伝播シミュレーションに基づき検討した。
2.海溝型大地震で観測されるPL波
PL波の観測例として、2009/3/9に発生した東方地方太平洋沖地震の前震(M7.3, 深さ8 km)における、K-NETの上下動速度記録を図1aに示す。震央距離310 kmのAOM014(K-NET子ノ口)観測点において、Radial(R) とVertical(Z) 成分のP〜S相の間に、周期20秒程度のPL波の波群が顕著に認められる。PLは弱い正分散性を示し、その長い波群はS波を越えてレイリー波へと繋がっている。PL波振幅の方位分布はレイリー波の放射パターンに対応し、粒子軌跡は、レイリー波と反対のProgradeの回転を示す。
東北沖で発生した地震を広く調べたところ、地震規模が大きく(M>M7)震源の浅い(< 40 km)地震において、周期20秒程度の卓越周期を持つPL波が常に観測されることがわかった。これに対し、たとえば2021/2/13の福島県沖の地震(M7.3, 深さ55 km)のように、震源が深いスラブ内地震ではPL波の震幅が極めて小さい(図1b)。このことから、近地強震記録におけるPL波の有震幅から、地震の規模と深さ、すなわち津波発生可能性を簡便に評価できる可能性がある。
3.PL波の生成・伝播シミュレーション
浅い、規模の大きな海溝型地震によるPL波の生成と伝播特性を確認するために、2次元差分法を用いて地震波伝播シミュレーションを行った。宮城県沖〜東北日本を断面とする領域を選び(図2a)、JIVSM(Koketsu et al., 2012)モデルを用いて堆積層・地殻・マントル構造を設定し、地震波伝播計算を行った。震源は簡単のために点震源とし、2009/3/9の地震のGCMT解析結果に基づき、周期20秒の三角型の震源時間関数を用いて地震波を放射させた。Z成分速度波形のレコードセクションを図2bに示す。また、震源の深さを、1, 2, 4, 8, 16, 32, 64 km と変えた場合の、震央距離310 kmの地点での波形を図2cに比べる。結果、深さ8 km以浅の地震において、S波あるいはレイリー波と同程度の大きな振幅のPL波が生成し、深さと共に振幅が弱まることが確認できた。なお、PL波の主な特徴は、堆積層や海水層の厚さを変えても不変であり、浅い地下構造によらず常に生成することも分かった。次に、震源の深さを8 kmに固定し、震源時間関数を3〜120秒と変えた場合に生成するPL波の振幅を確認した。結果、広い震源時間関数の範囲でPL波が生成し、特に20秒前後で振幅が大きくなることが確認できた。これより、断層すべり速度が速い通常の地震だけでなく、津波地震のような長い震源時間関数を持つ地震でもPL波が生成すると考えられる。
4.PL波の津波即時予測への適用に向けて
海域で発生する、規模が大きく(>M7)震源の浅い(< 40 km)地震における周期20秒程度のPL波の観測により、遠地・近地波形記録を用いたW-phase(PL波)のCMTインバージョン解析に先だって、津波の発生可能性を簡易に評価できる可能性がある。内陸で発生し、陸路を伝播した地震では周期7秒前後の短周期のPL波が卓越することから(Furumura and Kennett, 2018)、海域で発生した地震との区別が可能である。
本研究では、宮城沖の地震を対象に検討を進めたが、陸域と海域の伝播経路でPL波に違いが見られるように、その伝播特性と卓越周期は、地殻の厚さなど深部構造の影響を受けるものと考えられる。南海トラフ沿いや日本海東縁部など他地域での観測波形解析と地震波伝播シミュレーションによる検討をさらに進め、PL波伝播の地域性を確認する必要がある。
PL波は、P波とS波の間に見られる周期数秒〜数十秒程度のやや⻑周期の相である。浅い震源から放射されたP波が地殻内を多重広角反射により伝播する過程で干渉を起こし、長周期の波群を形成したものである。Sommville(1930)は、この波をP-long waveを意味するPLと命名し、その後、Oliver and Major(1960)によりレイリー波のリーキングモードとして解釈された。上部マントルにおいて同様のメカニズムで生成する、より長周期(100〜1000秒)の相はKanamori (1993)によりW-phaseと名付けられ、大地震のCMT解析・津波即時予測に広く活用されている。近年、W-phase解析は近地強震記録に見られる周期数十秒以下の波群(すなわち、PL波)への適用も進められている(例えば、Duputel et al., 2012; Hayes et al., 2009; 碓井・山内、2013)。
本研究では、近地波動場に見られるPL波を、津波発生の可能性を即時的に判断する指標として活用するために、海溝型の大地震に見られるPL波の特徴とその生成・伝播要件を地震波伝播シミュレーションに基づき検討した。
2.海溝型大地震で観測されるPL波
PL波の観測例として、2009/3/9に発生した東方地方太平洋沖地震の前震(M7.3, 深さ8 km)における、K-NETの上下動速度記録を図1aに示す。震央距離310 kmのAOM014(K-NET子ノ口)観測点において、Radial(R) とVertical(Z) 成分のP〜S相の間に、周期20秒程度のPL波の波群が顕著に認められる。PLは弱い正分散性を示し、その長い波群はS波を越えてレイリー波へと繋がっている。PL波振幅の方位分布はレイリー波の放射パターンに対応し、粒子軌跡は、レイリー波と反対のProgradeの回転を示す。
東北沖で発生した地震を広く調べたところ、地震規模が大きく(M>M7)震源の浅い(< 40 km)地震において、周期20秒程度の卓越周期を持つPL波が常に観測されることがわかった。これに対し、たとえば2021/2/13の福島県沖の地震(M7.3, 深さ55 km)のように、震源が深いスラブ内地震ではPL波の震幅が極めて小さい(図1b)。このことから、近地強震記録におけるPL波の有震幅から、地震の規模と深さ、すなわち津波発生可能性を簡便に評価できる可能性がある。
3.PL波の生成・伝播シミュレーション
浅い、規模の大きな海溝型地震によるPL波の生成と伝播特性を確認するために、2次元差分法を用いて地震波伝播シミュレーションを行った。宮城県沖〜東北日本を断面とする領域を選び(図2a)、JIVSM(Koketsu et al., 2012)モデルを用いて堆積層・地殻・マントル構造を設定し、地震波伝播計算を行った。震源は簡単のために点震源とし、2009/3/9の地震のGCMT解析結果に基づき、周期20秒の三角型の震源時間関数を用いて地震波を放射させた。Z成分速度波形のレコードセクションを図2bに示す。また、震源の深さを、1, 2, 4, 8, 16, 32, 64 km と変えた場合の、震央距離310 kmの地点での波形を図2cに比べる。結果、深さ8 km以浅の地震において、S波あるいはレイリー波と同程度の大きな振幅のPL波が生成し、深さと共に振幅が弱まることが確認できた。なお、PL波の主な特徴は、堆積層や海水層の厚さを変えても不変であり、浅い地下構造によらず常に生成することも分かった。次に、震源の深さを8 kmに固定し、震源時間関数を3〜120秒と変えた場合に生成するPL波の振幅を確認した。結果、広い震源時間関数の範囲でPL波が生成し、特に20秒前後で振幅が大きくなることが確認できた。これより、断層すべり速度が速い通常の地震だけでなく、津波地震のような長い震源時間関数を持つ地震でもPL波が生成すると考えられる。
4.PL波の津波即時予測への適用に向けて
海域で発生する、規模が大きく(>M7)震源の浅い(< 40 km)地震における周期20秒程度のPL波の観測により、遠地・近地波形記録を用いたW-phase(PL波)のCMTインバージョン解析に先だって、津波の発生可能性を簡易に評価できる可能性がある。内陸で発生し、陸路を伝播した地震では周期7秒前後の短周期のPL波が卓越することから(Furumura and Kennett, 2018)、海域で発生した地震との区別が可能である。
本研究では、宮城沖の地震を対象に検討を進めたが、陸域と海域の伝播経路でPL波に違いが見られるように、その伝播特性と卓越周期は、地殻の厚さなど深部構造の影響を受けるものと考えられる。南海トラフ沿いや日本海東縁部など他地域での観測波形解析と地震波伝播シミュレーションによる検討をさらに進め、PL波伝播の地域性を確認する必要がある。