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[SCG53-P03] 即時震源パラメータ解析システム(AQUA)における簡易的な震源時間関数の検討
キーワード:2011年東北地方太平洋沖地震、即時震源パラメータ解析システム、セントロイドモーメントテンソル
即時震源パラメータ解析システム(Accurate and QUick Analysis System for Source Parameters; AQUA)では、M4程度以上の地震を対象として、地震の位置、規模、およびモーメントテンソル(MT)等の震源パラメータを高精度に自動決定してきた。2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)では、ほぼ全国の防災科学技術研究所広帯域地震観測網(F-net)の広帯域地震計が飽和したため、従来の解析では適切な解が得られなかったが、F-net速度型強震計を導入し、あわせて処理フローを改善することで解析可能となった(Kimura et al., 2020)。しかし、地震の規模はMw8.6と過小評価された。現行の処理では、インパルス型の震源時間関数を想定し、破壊継続時間が無視できるほど長い周期帯を解析対象としている。東北地方太平洋沖地震では、この前提が成立しないことが、過小評価された要因の一つとして考えられる。このような背景のもと、浅野・木村(2012)では、震源時間関数を導入することで、正確かつ迅速に解析を行う手法を検討している。津波や初期被害推定等の予測精度を向上するためには、地震の規模を適切に評価することが重要である。そこで、現行の自動処理に簡易的な震源時間関数を推定する手法を導入した場合の効果を検討した。
解析は現行の処理フローを基本として、水平位置を固定したMT解(以下、´AQUA-MT´)が求まった後に、二等辺三角形型の震源時間関数を導入し、破壊継続時間をグリッドサーチにより探索した。この際に、セントロイド時刻・深さは固定することで、処理時間の短縮をはかった。震源時間関数を考慮することで、残差減少率(Variance Reduction; VR)が改善した場合に、震源時間関数を導入することとし、以後はVR最大となった破壊継続時間に固定した。ついで、狭い範囲でセントロイド時刻・深さを改めて探索し、AQUA-MTとした。破壊継続時間については、10秒から100秒まで10秒毎に、100秒から160秒まで20秒毎に検討した。これより後段の、水平位置の探索を含めた解析(以下、´AQUA-CMT´)については、前段で得られた破壊継続時間を導入する以外は、既存の処理と同じである。この処理フローにより2011年東北地方太平洋沖地震と顕著な余震、およびMw6.8以上の地震について模擬解析を行った。また、過去の顕著な地震として、2003年十勝沖地震(Mjma8.0)および2004年紀伊半島南東沖の地震(Mjma7.4)についても模擬解析を行った。これらの2地震については、震央距離400km以遠のF-net広帯域地震計によるデータを使用した。
模擬解析の結果、東北地方太平洋沖地震について、破壊継続時間を70秒とした時に、VRが67.0%から81.4%へ改善するとともに、Mw8.6から8.8と大きくなった。セントロイド時刻、深さ、および発震機構解に大きな変化はなく、傾斜角が29°から21°となり、走行とすべり角の変化は3°以下だった。処理時間については、リアルタイム処理においても1秒程度の増加と推定される。この他に50秒以上の破壊継続時間が推定された地震は、東北地方太平洋沖地震の余震(3/11 15:08, Mjma7.4)のみだった。この地震について、破壊継続時間は50秒と推定され、Mwは7.4から7.6と大きくなった。なお、東北地方太平洋沖地震の最大余震(3/11 15:15, Mjma7.6)については、破壊継続時間30秒と推定され、Mwは7.8から7.9となった。Mw7前後の地震は、破壊継続時間の導入による改善はないか、10-30秒の範囲に推定され、Mwの変化は最大で0.1だった。また破壊継続時間によるVRの変化はきわめて小さく、推定精度が低いと考えられる。2003年十勝沖地震および2004年紀伊半島南東沖の地震については、破壊継続時間はいずれも40秒と推定され、Mwはそれぞれ7.8から8.0、7.4から7.5となった。
東北地方太平洋沖地震について、震源時間関数を導入することで、規模は依然として過小評価であるが、その程度は改善された。70秒の破壊継続時間は、震源過程の解析結果(Suzuki et al., 2012ほか)と調和的であり、すべりの主要な部分は再現されていると考えられる。また、解析に用いた周期帯(50-200秒)と比較して、無視できるほどには短くなく、破壊継続時間の導入によって規模の過小評価も改善されたと考えられる。東北地方太平洋沖地震の最大余震、2003年十勝沖地震、および2004年紀伊半島南東沖の地震について、GlobalCMTではMw7.9、8.3、および7.4であり、おおむねGlobalCMTとの差が減少した。破壊継続時間は大きな地震ほど長い傾向がありそうであるが、地震毎の破壊過程の違いも反映されていると考えられる。東北地方太平洋沖地震および2003年十勝沖地震について、依然として規模が過小評価されているのは、単純な形状の震源時間関数を想定したことによる可能性がある。
セントロイド時刻・深さを固定して、破壊継続時間のみを探索することで、処理時間の大幅な増加を抑えることができた。また、AQUA-MTが得られた後に、結果が改善される場合のみ震源時間関数を導入するとしたことで、これまでの決定率は維持されると考えられる。このように、処理の迅速性・決定率は維持しつつ、これまでより正確な規模の推定が可能となると期待される。
解析は現行の処理フローを基本として、水平位置を固定したMT解(以下、´AQUA-MT´)が求まった後に、二等辺三角形型の震源時間関数を導入し、破壊継続時間をグリッドサーチにより探索した。この際に、セントロイド時刻・深さは固定することで、処理時間の短縮をはかった。震源時間関数を考慮することで、残差減少率(Variance Reduction; VR)が改善した場合に、震源時間関数を導入することとし、以後はVR最大となった破壊継続時間に固定した。ついで、狭い範囲でセントロイド時刻・深さを改めて探索し、AQUA-MTとした。破壊継続時間については、10秒から100秒まで10秒毎に、100秒から160秒まで20秒毎に検討した。これより後段の、水平位置の探索を含めた解析(以下、´AQUA-CMT´)については、前段で得られた破壊継続時間を導入する以外は、既存の処理と同じである。この処理フローにより2011年東北地方太平洋沖地震と顕著な余震、およびMw6.8以上の地震について模擬解析を行った。また、過去の顕著な地震として、2003年十勝沖地震(Mjma8.0)および2004年紀伊半島南東沖の地震(Mjma7.4)についても模擬解析を行った。これらの2地震については、震央距離400km以遠のF-net広帯域地震計によるデータを使用した。
模擬解析の結果、東北地方太平洋沖地震について、破壊継続時間を70秒とした時に、VRが67.0%から81.4%へ改善するとともに、Mw8.6から8.8と大きくなった。セントロイド時刻、深さ、および発震機構解に大きな変化はなく、傾斜角が29°から21°となり、走行とすべり角の変化は3°以下だった。処理時間については、リアルタイム処理においても1秒程度の増加と推定される。この他に50秒以上の破壊継続時間が推定された地震は、東北地方太平洋沖地震の余震(3/11 15:08, Mjma7.4)のみだった。この地震について、破壊継続時間は50秒と推定され、Mwは7.4から7.6と大きくなった。なお、東北地方太平洋沖地震の最大余震(3/11 15:15, Mjma7.6)については、破壊継続時間30秒と推定され、Mwは7.8から7.9となった。Mw7前後の地震は、破壊継続時間の導入による改善はないか、10-30秒の範囲に推定され、Mwの変化は最大で0.1だった。また破壊継続時間によるVRの変化はきわめて小さく、推定精度が低いと考えられる。2003年十勝沖地震および2004年紀伊半島南東沖の地震については、破壊継続時間はいずれも40秒と推定され、Mwはそれぞれ7.8から8.0、7.4から7.5となった。
東北地方太平洋沖地震について、震源時間関数を導入することで、規模は依然として過小評価であるが、その程度は改善された。70秒の破壊継続時間は、震源過程の解析結果(Suzuki et al., 2012ほか)と調和的であり、すべりの主要な部分は再現されていると考えられる。また、解析に用いた周期帯(50-200秒)と比較して、無視できるほどには短くなく、破壊継続時間の導入によって規模の過小評価も改善されたと考えられる。東北地方太平洋沖地震の最大余震、2003年十勝沖地震、および2004年紀伊半島南東沖の地震について、GlobalCMTではMw7.9、8.3、および7.4であり、おおむねGlobalCMTとの差が減少した。破壊継続時間は大きな地震ほど長い傾向がありそうであるが、地震毎の破壊過程の違いも反映されていると考えられる。東北地方太平洋沖地震および2003年十勝沖地震について、依然として規模が過小評価されているのは、単純な形状の震源時間関数を想定したことによる可能性がある。
セントロイド時刻・深さを固定して、破壊継続時間のみを探索することで、処理時間の大幅な増加を抑えることができた。また、AQUA-MTが得られた後に、結果が改善される場合のみ震源時間関数を導入するとしたことで、これまでの決定率は維持されると考えられる。このように、処理の迅速性・決定率は維持しつつ、これまでより正確な規模の推定が可能となると期待される。