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[SCG55-08] 日本海溝アウターライズに発達する正断層の特徴
キーワード:日本海溝、アウターライズ、多チャンネル反射法地震探査、正断層、プチスポット火山
日本海溝沈み込み帯及びアウターライズにおいて歴史上複数回の大地震が発生したことがあった.日本海溝アウターライズの浅層地殻構造を解明するために,多くの先行研究が行われたが,海底地形図を依存する研究が大半を占めし,MCSデータを利用し音響基盤を切断する断層を目標とする研究が少なかった.本研究は,音響基盤を切断する断層を対象とし,日本海溝アウターライズにおいての断層発達特徴を解明するために,東京大学大気海洋研究所の「可搬式反射法地震探査システム」を学術研究船「新青丸」に搭載し,2019年4月にKS19-05次航海と2020年9月にKS20-14次航海で反射法地震探査を実施し,5つの測線のMCSデータを取得した.本研究ではその中のKS19-05-1, KS19-05-5, KS20-14-5, 3つの測線を使用している.KS19-05次航海測線KS19-05-5とKS20-14次航海測線KS20-14-5では,海況や機器の状態不良により強いノイズが発生したが,Band-pass filterやFX deconvolution filterの応用と,手動でスパイクノイズがあるトレースを削除することにより,ノイズの除去に成功した.更に反射法地震探査データ処理を施し,Pre-stack depth migration(PSDM)断面図が得られた.3つの測線は,沈み込む太平洋プレートにおいて,明瞭なホルスト・グラーベン構造が確認できた.3つの測線上でプレートの折り曲げによる正断層を調べた結果,測線KS19-05-5と測線KS20-14-5に比べて,測線KS19-05-1の正断層は断層変位が大きく,測線に沿って水平方向の空間分布も疎らの傾向があった.また,測線KS19-05-1の海溝付近とKS19-05-5,KS20-14-5の東側付近ではHirano et al. (2006)で示された新たな火山活動であるプチスポートが存在する.PSDM断面図ではそれらの存在やマグマの貫入した痕跡を確認した.特に,測線KS19-05-1において,海溝軸から海側へ75 kmに渡る範囲でチャート層の反射面が不明瞭で,チャート層の存在を確認することができない.堆積層の厚さも,プチスポート火山エリアでは明らかに減少した.正断層の形成時期を断層の海底変位量と音響基盤変位量で判断する(Ranero et al. 2003)と,測線KS19-05-1では,新しい断層が殆どで,測線KS19-05-5と測線KS20-14-5では新しい断層と比較的古い断層が混在していることを確認した.以上の特徴によって,日本海溝アウターライズにおいての断層発達特徴を2つのモデルに整理した.モデル1は正断層がプチスポット火山に影響されず,古い断層と新しい断層が混在して発達していく.モデル2は正断層がプチスポット火山に影響され,新しい正断層が発達していく.モデル1は宮城沖に適用し,モデル2は三陸沖に適用する.2つのモデルを影響する最も重要な条件はプチスポット火山の存在である.