17:15 〜 18:30
[SCG55-P03] 高温環境下におけるマントルかんらん岩の蛇紋岩化反応と磁鉄鉱生成に関する研究
キーワード:蛇紋岩化反応、水素
海洋底では、マントルと海水の蛇紋岩化反応により水素と磁鉄鉱が生成されることが知られている。大西洋中央海嶺のアルカリ熱水噴出孔には、蛇紋岩化反応によって生成される水素をエネルギー源としていると考えられている生態系が存在している。近年、研究事例が少ない350℃以上の深部高温帯まで海水が流通し蛇紋岩化反応が進行すること、深部で生成された水素が微生物の生活圏まで送られることが示唆されているが、高温、流通系における蛇紋岩化反応、及び反応に伴う水素ポテンシャルは明らかになっていない。
本研究では、蛇紋岩化反応、水素の生成に対する、深さによる温度の影響を調査するためにバッチ式実験を、熱水が浸透することによる影響を調査するために流通式実験を行った。実験は、海洋プレート深部の岩石に直方輝石が含まれることを考慮して、Ol-H2O系(かんらん石-水系)、Ol-Opx-H2O系(かんらん石-直方輝石-水系)の2つの鉱物系で行った。バッチ式実験は、Ol-H2O系、Ol-Opx-H2O系に対して、飽和蒸気圧で温度200℃、250℃、280℃、300℃、350℃、400℃で576時間の実験を行った。流通式実験は、圧力35MPa、流速0.1ml/minで、Ol-H2O系は300℃、350℃、Ol-Opx-H2O系は300℃、380℃で207~284時間の実験を行った。実験後の岩石試料は、含水量、磁化率を測定し、生成物の組織観察、鉱物の組成分析を行った。反応後溶液は、pH、溶液組成を測定し、鉱物/溶液平衡計算を行った。
蛇紋岩化反応の反応速度は、SiO2の供給源である直方輝石を入れたOl-Opx-H2O系の方が反応進行度が大きくなったこと、流通式の方がバッチ式よりも反応進行度が大きくなったことから、溶液中のSiO2濃度が大きくなること、物質の移動が起こりやすくなることの2つの要素で大きくなることが分かった。
蛇紋岩化反応で生じる水素は、出発鉱物に含まれるFe2+が水を還元することによって生成され、このとき、Fe2+はFe3+に酸化され、蛇紋石、磁鉄鉱に入る。蛇紋石の組成分析によると、蛇紋石にはFe3+が入っていないことが分かり、磁鉄鉱のみが水素の発生に伴うFe3+が含まれる生成物であることが分かった。バッチ式、流通式ともにOl-H2O系でのみ磁化率が高くなっており、磁鉄鉱が確認されたことから、Ol-H2O系でのみ水素が生成され、Ol-Opx-H2O系での蛇紋岩化反応は水素生成に関与しないことが分かった。
バッチ式実験、300℃、Ol-H2O系での水素生成量を試算すると、1molのかんらん石から0.028molの水素が発生することが分かった。
本研究から、海洋プレートの深部(350℃以上の高温)において、海水が循環すると、直方輝石を含むマントルかんらん岩の蛇紋岩化反応は進行するが、水素は生成されず、水素生成は350℃以下のかんらん石部のみで行われることが分かった。
本研究では、蛇紋岩化反応、水素の生成に対する、深さによる温度の影響を調査するためにバッチ式実験を、熱水が浸透することによる影響を調査するために流通式実験を行った。実験は、海洋プレート深部の岩石に直方輝石が含まれることを考慮して、Ol-H2O系(かんらん石-水系)、Ol-Opx-H2O系(かんらん石-直方輝石-水系)の2つの鉱物系で行った。バッチ式実験は、Ol-H2O系、Ol-Opx-H2O系に対して、飽和蒸気圧で温度200℃、250℃、280℃、300℃、350℃、400℃で576時間の実験を行った。流通式実験は、圧力35MPa、流速0.1ml/minで、Ol-H2O系は300℃、350℃、Ol-Opx-H2O系は300℃、380℃で207~284時間の実験を行った。実験後の岩石試料は、含水量、磁化率を測定し、生成物の組織観察、鉱物の組成分析を行った。反応後溶液は、pH、溶液組成を測定し、鉱物/溶液平衡計算を行った。
蛇紋岩化反応の反応速度は、SiO2の供給源である直方輝石を入れたOl-Opx-H2O系の方が反応進行度が大きくなったこと、流通式の方がバッチ式よりも反応進行度が大きくなったことから、溶液中のSiO2濃度が大きくなること、物質の移動が起こりやすくなることの2つの要素で大きくなることが分かった。
蛇紋岩化反応で生じる水素は、出発鉱物に含まれるFe2+が水を還元することによって生成され、このとき、Fe2+はFe3+に酸化され、蛇紋石、磁鉄鉱に入る。蛇紋石の組成分析によると、蛇紋石にはFe3+が入っていないことが分かり、磁鉄鉱のみが水素の発生に伴うFe3+が含まれる生成物であることが分かった。バッチ式、流通式ともにOl-H2O系でのみ磁化率が高くなっており、磁鉄鉱が確認されたことから、Ol-H2O系でのみ水素が生成され、Ol-Opx-H2O系での蛇紋岩化反応は水素生成に関与しないことが分かった。
バッチ式実験、300℃、Ol-H2O系での水素生成量を試算すると、1molのかんらん石から0.028molの水素が発生することが分かった。
本研究から、海洋プレートの深部(350℃以上の高温)において、海水が循環すると、直方輝石を含むマントルかんらん岩の蛇紋岩化反応は進行するが、水素は生成されず、水素生成は350℃以下のかんらん石部のみで行われることが分かった。