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[SCG55-P05] 隠岐島後に産する下部地殻起源捕獲岩の岩石学的特徴と形成過程:マントルプルーム起源の可能性
キーワード:背弧拡大、日本海拡大、捕獲岩、マントルプルーム、下部地殻、西南日本
島根県北部日本海に位置する隠岐島後には, 鮮新世アルカリ玄武岩中に様々な岩相の超苦鉄質〜苦鉄質捕獲岩が産出する(例えば青木, 1977;高橋, 1976). Takahashi(1978)は, これらの捕獲岩から隠岐島後下の地殻~上部マントルの岩石学的構造を推定した. また, Abe et al.(2003)によるレルゾライト質マントルかんらん岩捕獲岩の研究によって, これらが鉄や希土類元素(REE)に富み, アルミに富むスピネルを含む特徴が示された. また, Abe et al.(2003)によると, 隠岐島後産かんらん岩捕獲岩は中新世の日本海拡大期に関与したマントルの可能性がある. 一方で, マントルかんらん岩と共に産する下部地殻由来の捕獲岩についてはこれまで岩石学的検討が行われていない. 本研究では, 隠岐島後地域の下部地殻構成岩の岩石学的特徴とその形成過程, 起源マントルや日本海周辺テクトニクスとの関係を明らかにするため, 隠岐島後に産する下部地殻起源捕獲岩の詳細な岩石記載と鉱物の主要元素・微量元素組成の分析を行った. 研究対象とした試料は, かんらん石はんれい岩, 直方輝石はんれい岩, グラニュライト, 単斜輝岩, ウェールライトである. これらの岩石組織や平衡温度は下部地殻を構成していた集積岩であったことを示している. かんらん石のMg#=[Mg/(Mg+Fe)]が中央海嶺玄武岩(MORB)の斑晶よりも同じNiO量で低い(0.7–0.8)ことや, スピネルのCr# [=Cr/(Cr+Al)]が著しく低い(<0.1)こと, 単斜輝⽯のREE 量が軽REEに富む右下がりのREEパターンを⽰す特徴があり, 下部地殻構成岩を形成した親マグマはマントルの低い部分融解程度で⽣成されたアルカリ⽞武岩質マグマであったと推測される. 推定される下部地殻構成岩の親マグマのREEパターンは, 軽REEに富む点で⽇本海拡⼤期の⽕成活動で形成された玄武岩のとは明瞭に異なる⼀⽅, ⽇本海拡⼤終了後の中新世後期〜鮮新世に⻄南⽇本の環⽇本海で活動したマントルプルーム起源のアルカリ⽞武岩に類似する. また, 下部地殻構成岩の特徴は, 隠岐島後産のマントル捕獲岩と⼀致することから, マントル捕獲岩は下部地殻構成岩を形成した親マグマの起源マントルである可能性が考えられる. このことは, 隠岐島後産のスピネルレルゾライトがマントルプルームによって上昇した深部由来の肥沃なマントル物質である可能性を⽰唆する.