日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM14] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2021年6月3日(木) 10:45 〜 12:15 Ch.23 (Zoom会場23)

コンビーナ:畑 真紀(東京大学地震研究所)、宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、座長:山崎 健一(京都大学防災研究所)、宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)

11:10 〜 11:25

[SEM14-08] 層構造媒質中の食い違い変位源から生じるピエゾ磁気効果起源の磁場の特徴、特に変位場との相違

*山崎 健一1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:ピエゾ磁気効果、層構造媒質、弾性、変位場、磁場

ピエゾ磁気効果(応力磁気効果)とは,応力の変化に伴う磁化の変化のことである。ピエゾ磁気効果に起因する地磁気変化は地球科学ではピエゾ磁場と呼ばれ,その理論値は観測される地磁気変化の原因を解釈する際に,あるいは観測される地磁気変化から地下の応力源についての情報を得るために用いられてきた。しかし,従来の多くの研究では,ピエゾ磁場の理論値は地殻が一様な剛性率を持つ半無限媒質であるという仮定のもとで計算されている[Sasai 1991; Utsugi et al. 2000]。現実の地殻の剛性率は一様ではないため,この近似はピエゾ磁場の理論値,そしてそれを用いた観測事実の解釈に影響を与える可能性がある。

本研究では,剛性率が層構造をもつ弾性媒質中の食い違い変位源から生じるピエゾ磁場を計算する準解析的な手順を導いた。この方法では,ピエゾ磁場を決定する方程式を波数空間で考えることにより,すべての方程式および構成法則を深さ方向のみの微分を含んだ形で書き替えて,変位場および磁場を連立常微分方程式の解として求める。この解をハンケル変換して実空間に写すことで,所要の変位場および磁場を求める。膨張源の場合については先行研究で同様の計算がすでになされているが[Okubo and Oshiman 2004],本研究ではこれをより一般的の食い違い変位源に適用する。導いた方法は点状変位源を対象としているが,数値的に積分することで有限断層に対する結果も得ることができる。

導出した手法を用いて,剛性率が浅部と深部で異なる複数のモデルについてピエゾ磁場を計算し,その性質を調べた。滑り量が断層面状で一定となるような変位源を与えた場合にはピエゾ磁場の大きさは下層の剛性率および剛性率の境界の深さによって大きく異なるが,滑り量ではなくて応力開放量が断層面状で一定となるように変位源を与えるとピエゾ磁場は剛性率の不均一性にはほとんど影響を受けない,という結果が得られた。この結果は,茂木モデル(球状の消磁領域を含む点状圧力源を仮定したモデル)に対して行われた先行研究とは部分的に異なっている。その違いは,磁化構造の水平不均質を含むか否かに起因するのではないかと推察される。また,磁場だけでなく地表変位場についても計算を行い,ピエゾ磁場と変位場に対する剛性率の影響の現れ方の違いを考察した。ピエゾ磁場の場合と違い,変位場は,変位源における滑り量および上層の剛性率を固定すれば,下層の剛性率による著しい違いは生じない。このことを,ピエゾ磁場に対する結果とあわせて考えると,下層の剛性率が大きいほど地表変位量に対して磁場変化は相対的に大きくなる,と言える。