日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM14] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2021年6月3日(木) 10:45 〜 12:15 Ch.23 (Zoom会場23)

コンビーナ:畑 真紀(東京大学地震研究所)、宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、座長:山崎 健一(京都大学防災研究所)、宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)

11:25 〜 11:40

[SEM14-09] 2段階MSSA(多変量特異スペクトル解析)による房総MTデータのノイズ除去法の開発と適用

*金子 柊1、服部 克巳2、茂木 透2、吉野 千恵2 (1.千葉大学大学院融合理工学府、2.千葉大学大学院理学研究院)


キーワード:MT法、MSSA(多変量特異スペクトル解析)、ノイズ除去、房総半島

房総半島沖には、太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレートが集まる3重会合点があり、地殻変動が活発な地域である。また、房総沖は延宝地震、南房総地域は1702年元禄関東地震(M 8.2)、1923年大正関東地震(M7.9)の震源域である。これら過去の大地震の震源域やプレート境界の比抵抗構造を調査するために、千葉大学では2014-2016年に房総半島において広域MT探査を実施した。観測は、U43を用いた1Hzサンプリングの長期観測点が12点、MTU-5, MTU-5Aを用いた2400、150、15Hzの短期観測点が41点で行われた。しかし房総半島では、半島を囲むように走っている直流電車や工場、高圧送電線などからの漏洩電流により、取得したMTデータに含まれる人工雑音の影響が非常に大きい。そのため、房総MTデータに対し、気象庁女満別観測所の地磁気1 Hzデータを用いたリモートリファレンス法 (Gamble et al., 1979)やBIRRP法(Chave and Thomson. 2004) を適用したが、雑音除去の効果は不十分であった。特に、周期20~400秒では、人工雑音の影響が大きく、位相が0度に近づいていた。そこで、これらの周期を対象として、本研究ではMT解析の前処理手法として、MSSA(多変量特異スペクトル解析:Multi-channel Singular Spectrum Analysis)を用いた時系列データの雑音除去法を開発し、適用した。手順は以下の通りである。

(1) Hx, Hy, Ex, Ey, Hxr, Hyr (H, Eはそれぞれ、磁場と電場, x, y, rはそれぞれ、南北方向、東西方向、参照点を表す)の6成分をそれぞれ規格化した上で、1回目のMSSAを適用し各成分の時系列を6×L個の主成分(PC)に分解する。ここでLはMSSAの窓長を表す。
(2) 周期400秒以下の信号に注目するため、周期400秒以上の信号を含む主成分を寄与率に基づいて除去し、残りの主成分を足し合わせ、デトレンド時系列を作成する。
(3) 再度、各成分の規格化を行い、2回目のMSSAを適用し、周期400秒以下の信号を6×L個の主成分(PC)に分解する。
(4) H-Hr, E-Hrの主成分の組み合わせで相関係数を計算し、高い相関係数を示す主成分を足し合わせ、手順(1), (3)で割った重みを戻し、再構成時系列を作成する。

このようにして得られた再構成時系列に対し、MT解析を行った。
その結果、複数の周期で誘導電流成分を抽出でき、電場-磁場間のコヒーレンスが向上した。また、MT応答関数は、位相が0度から離れ、見かけ比抵抗は滑らかになった。ただし、周期400秒以上や、周期20秒以下の周期帯に対し、本手法の検証を行う必要がある。