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[SEM14-P01] 中国・四国地方の基盤的比抵抗構造調査(2020年度)
キーワード:電気比抵抗、基盤的構造調査、中国・四国地方
【背景・目的】本研究では、地震・火山噴火による災害の軽減に貢献するために、中国・四国地方において 基盤的な比抵抗構造調査を行い、地殻・マントル上部の空間・構造的不均質性を明らかにすることを目的とする。山陰地域では、地震発生と比較的長い期間に噴火記録のない火山と地殻流体との関連を解明すること、内陸地震発生域と内陸地震空白域および深部低周波地震域の構造的不均質性、また、四国地方では、地殻地震およびスロー地震の発生様式と構造的地域性等について、沈み込む海洋プレートから供給が想定される流体と関連づけることが重要である。
これまでに筆者らを中心とする研究グループは、山陰地方や四国地方外帯において電気比抵抗構造と地震活動の間に密接な関連がみられることを示してきた。例えば、山陰地方東部では、鳥取地震(1943年、M=7.2)の地震断層である吉岡・鹿野断層をはじめとして、顕著な地 震の震源域およびそれらを含み日本海沿岸部に沿う帯状の地震活動域を横切る測線でMT調査を実施し、ほぼ東西方向に伸びる地震活動帯に沿って、高比抵抗領域である地震発生層の下、地殻深部に低比抵抗領域の存在を明らかにした。この知見と調和的な「ひずみ集中帯」に関する研究成果(例えば、西村(2015))が測地学研究から示された。内陸地震が地震活動帯直下の不均質構造に起因する局所的な応力集中により発生する(飯尾、2009)ならば、この不均質構造について、今後はさらなる面的な構造データの充実を図ることが必要である。
一方、四国地方においては、主に外帯での調査結果から上部地殻内に顕著な低比抵抗領域が存在し、それと中央部・西部では無地震域との明瞭な関連が示唆された。地震現象の統一的理解のためには、スロー地震の活動様式だけでなく発生環境や発生原理の解明が重要(小原(2017))であるため、比抵抗構造の地域特性を解明するための基盤的比抵抗構造調査研究が求められる。
【実施内容】中国地方中北部域において、電磁環境・道路、地形や土地利用状況などを考慮してMT観測地点調査を実施した。また、この地域における既存の2測線データ(例えば、三瓶山周辺域および島根県東部地震空白域で過去に取得された)も精査した。特に、三瓶山周辺域では過去の観測で得られたデータの再評価と従来の解析では取り入れていなかったCaldwell et al.(2004)のインピーダンス位相テンソル(PT)解析を導入し、構造の3次元性評価に使用されるβ値や主軸などを計算し、島根東部地震空白域に関する同様の知見と比較し、これらの地域の既存データの評価と空間的な電気的特徴を調べた。
その結果、三瓶山周辺域では周期帯によっては3次元性が示唆されるため、構造解明のためさらなる調査の必要性が指摘された。現時点では、この周期帯に注意を払いつつ、PT解析とインダクションベクトルの方向から構造の走向をN50Eと推定してGroom and Bailey(1989)分解を行い2次元構造の抽出を試みた。Ogawa and Uchida(1996)のコードを用いて得られた構造解析の結果から、地殻は全般的に高比抵抗領域として推定された。北部日本海側地点ならびに、三瓶火山直南地点の地殻浅部以外には低比抵抗領域はみられない。これらの比抵抗構造の特徴は塩崎(1993)の研究結果と調和的である。浅野他(1986)が指摘した二つの地震帯の交差するあたりで発生した2018年島根県西部地震(M6.1)と今回推定された北部の高/低比抵抗境界は関連するものかもしれない。また、三瓶山周辺から南東につながる地震活動は高比抵抗領域に対応する。
島根県東部地域は山陰地方の地震活動の帯の中にあって無地震域を形成している場所である。二つの地域の地震活動にみられる違いと比抵抗構造の違いがどのように関連するのか、水平方向の連続性を明らかにするための本観測を実施することは、同地域の地震活動や応力の集中・緩和を考える上で重要である。
四国地方では、既存データを活用・統合して3次元比抵抗構造の解明を目指した研究を進めている。広帯域MT観測データを3次元構造解析インヴァージョンコード(Siripinvaraporn and Egbert (2009))用の入力データ形式に整えた。その際、これまでの複数の観測機器やファームウェアに関連する測定周波数をはじめとして、観測座標系、解析処理ソフトウエア、測点ごとのS/N比の違いによる解析可能な周波数帯域の問題など、解決すべき課題に対処した。観測点分布に応じた初期モデルを作成したが、海陸分布情報には、NOAAが公開しているETOPO1 Ice Surfaceデータを用いた。
【謝辞】本観測研究では主に文部科学省による災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画および東京大学地震研究所共同利用(2019-A-03(B0102))の支援を受けた。
これまでに筆者らを中心とする研究グループは、山陰地方や四国地方外帯において電気比抵抗構造と地震活動の間に密接な関連がみられることを示してきた。例えば、山陰地方東部では、鳥取地震(1943年、M=7.2)の地震断層である吉岡・鹿野断層をはじめとして、顕著な地 震の震源域およびそれらを含み日本海沿岸部に沿う帯状の地震活動域を横切る測線でMT調査を実施し、ほぼ東西方向に伸びる地震活動帯に沿って、高比抵抗領域である地震発生層の下、地殻深部に低比抵抗領域の存在を明らかにした。この知見と調和的な「ひずみ集中帯」に関する研究成果(例えば、西村(2015))が測地学研究から示された。内陸地震が地震活動帯直下の不均質構造に起因する局所的な応力集中により発生する(飯尾、2009)ならば、この不均質構造について、今後はさらなる面的な構造データの充実を図ることが必要である。
一方、四国地方においては、主に外帯での調査結果から上部地殻内に顕著な低比抵抗領域が存在し、それと中央部・西部では無地震域との明瞭な関連が示唆された。地震現象の統一的理解のためには、スロー地震の活動様式だけでなく発生環境や発生原理の解明が重要(小原(2017))であるため、比抵抗構造の地域特性を解明するための基盤的比抵抗構造調査研究が求められる。
【実施内容】中国地方中北部域において、電磁環境・道路、地形や土地利用状況などを考慮してMT観測地点調査を実施した。また、この地域における既存の2測線データ(例えば、三瓶山周辺域および島根県東部地震空白域で過去に取得された)も精査した。特に、三瓶山周辺域では過去の観測で得られたデータの再評価と従来の解析では取り入れていなかったCaldwell et al.(2004)のインピーダンス位相テンソル(PT)解析を導入し、構造の3次元性評価に使用されるβ値や主軸などを計算し、島根東部地震空白域に関する同様の知見と比較し、これらの地域の既存データの評価と空間的な電気的特徴を調べた。
その結果、三瓶山周辺域では周期帯によっては3次元性が示唆されるため、構造解明のためさらなる調査の必要性が指摘された。現時点では、この周期帯に注意を払いつつ、PT解析とインダクションベクトルの方向から構造の走向をN50Eと推定してGroom and Bailey(1989)分解を行い2次元構造の抽出を試みた。Ogawa and Uchida(1996)のコードを用いて得られた構造解析の結果から、地殻は全般的に高比抵抗領域として推定された。北部日本海側地点ならびに、三瓶火山直南地点の地殻浅部以外には低比抵抗領域はみられない。これらの比抵抗構造の特徴は塩崎(1993)の研究結果と調和的である。浅野他(1986)が指摘した二つの地震帯の交差するあたりで発生した2018年島根県西部地震(M6.1)と今回推定された北部の高/低比抵抗境界は関連するものかもしれない。また、三瓶山周辺から南東につながる地震活動は高比抵抗領域に対応する。
島根県東部地域は山陰地方の地震活動の帯の中にあって無地震域を形成している場所である。二つの地域の地震活動にみられる違いと比抵抗構造の違いがどのように関連するのか、水平方向の連続性を明らかにするための本観測を実施することは、同地域の地震活動や応力の集中・緩和を考える上で重要である。
四国地方では、既存データを活用・統合して3次元比抵抗構造の解明を目指した研究を進めている。広帯域MT観測データを3次元構造解析インヴァージョンコード(Siripinvaraporn and Egbert (2009))用の入力データ形式に整えた。その際、これまでの複数の観測機器やファームウェアに関連する測定周波数をはじめとして、観測座標系、解析処理ソフトウエア、測点ごとのS/N比の違いによる解析可能な周波数帯域の問題など、解決すべき課題に対処した。観測点分布に応じた初期モデルを作成したが、海陸分布情報には、NOAAが公開しているETOPO1 Ice Surfaceデータを用いた。
【謝辞】本観測研究では主に文部科学省による災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画および東京大学地震研究所共同利用(2019-A-03(B0102))の支援を受けた。