日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM14] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.11

コンビーナ:畑 真紀(東京大学地震研究所)、宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)

17:15 〜 18:30

[SEM14-P02] ラウ海盆における潮汐起因磁場変動の一次元順計算:計算結果と海底磁場データの比較および比抵抗構造に対する感度について

*中家 徳真1、南 拓人1、島 伸和1 (1.国立大学法人神戸大学)

キーワード:海洋潮汐、比抵抗

導電性流体である海水は、地球主磁場中を移動することで励起電流を発生する。近年、その中でも周期的に流れが変化する海洋潮汐による励起電流を地下比抵抗構造推定に利用することを目指す研究 (Schnepf et al. 2014, 2015; Zhang et al. 2019) が注目を集めている。従来の推定方法であるMT法では、半日〜1日周期で、レスポンスの推定精度が低下することが知られている。海洋潮汐による励起電流の周期はこの周期を補えるものであり、また、この周期帯は探査深度として上部マントルに該当する。そのため、潮汐起因電流をソースとした地下構造推定をMT法と組み合わせることで、従来研究に比べ、上部マントル比抵抗値の推定精度の向上が期待される。これまで、衛星高度での潮汐起因の磁場観測データを用いたインバージョンはGrayver et al. (2016)により実施されているものの、海底電磁場データを用いた地下比抵抗構造の推定は未だ実現していない。衛星高度の観測では、潮汐起因磁場のうちポロイダル磁場のみ観測可能であり、トロイダル磁場は観測されない。一方、海底磁場データを利用すれば、ポロイダル・トロイダルの両成分を利用できること、また水平方向により短波長の磁場変化が観測できることから、衛星観測に比べ、より空間解像度の高い比抵抗構造の推定が可能になると考えられる。

本研究では、海底潮汐起因磁場変動を用いた比抵抗構造推定に向けて、一次元順計算コードを開発し、M2周期成分について、ラウ海盆の海底磁場データと計算結果の比較、並びに、地下比抵抗構造に対する潮汐起因磁場変動の感度計算を実施した。海底磁場データ中の潮汐周期成分の抽出には、正弦関数による最小二乗法を用いた。順計算にはChave and Luther (1990)に基づいた解析解を用いた。順計算に用いる海洋潮汐による流れにはTPXO model (Egbert and Erofeeva 2002)を、地球主磁場の空間分布にはIGRF-13 (Alken et al. in print)を用いた。ラウ海盆の一次元構造は、松倉(2014, 神戸大学修士論文)で推定された二次元構造から作成した。観測結果と順計算結果を比較したところ、磁場の鉛直成分では、表現できる観測点とそうでない観測点が存在した。表現できていない観測点の位置は海底地形の起伏の場所との相関が認められ、一次元計算によって地形効果を無視していることが影響しているものと考えられる。磁場の水平成分では、全ての観測点で観測結果の磁場振幅が順計算より大きい結果となった。これは、潮汐モデルがBarotropic流を仮定している一方で、実際には、ラウ海盆における複雑な海底地形が内部潮汐波に伴うBaroclinic流を発生させ、顕著なトロイダル磁場を発生させている可能性があり、今後検討の必要がある。また本研究では、用いた比抵抗構造を部分的に変化させることで、潮汐起因磁場変動の地下構造に対する感度を調べた。浅部から深部に渡り、50kmの厚さ領域の比抵抗値を順に3倍に変化させたところ、磁場鉛直成分の振幅は深度250kmから300kmの比抵抗値を3倍に変化させた時に振幅変化が約2.5%で最大となった。そのため、ラウ海盆地域のM2起因磁場変動はこの深さの比抵抗に対し感度が大きいことがわかった。本発表では、以上で述べた潮汐起因磁場の一次元順計算と観測結果の比較、並びに、感度計算の詳細について報告する。