日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GC 固体地球化学

[S-GC32] Volatiles in the Earth - from Surface to Deep Mantle

2021年6月5日(土) 10:45 〜 12:15 Ch.23 (Zoom会場23)

コンビーナ:羽生 毅(海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、E Gray Bebout(Lehigh University)、佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)、角野 浩史(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、座長:Gray E Bebout(Lehigh University)、角野 浩史(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)

11:15 〜 11:45

[SGC32-03] グローバル炭素循環へのマントル加水作用の影響

★招待講演

*片山 郁夫1 (1.広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

キーワード:炭素循環、マントル加水作用

長期的な地球表層環境の安定化には,ウォーカーフィードバックによるグローバルな炭素循環が必要不可欠とされる。地球内部への炭素輸送を担う海洋プレートでは,海底に堆積する炭酸塩や有機物に加え,地殻やマントルにおいても水岩石反応により海水中の炭酸が取り込まれる。地殻最上部の噴出岩には,割れ目や空隙を満たすように炭酸塩が析出しており,古い海洋プレートほど析出量が増加する傾向にある(e.g., Alt and Teagle 1999)。一方で,地殻深部やマントルでの炭素の取り込み量は不明ではあるが,断層沿いに海水が浸透しているのであれば,水岩石反応により炭酸塩が析出している可能性が高い。特にマントルが加水作用によって蛇紋岩化する際には,流体のpHが上昇し炭酸塩が沈殿しやすい環境となる。オマーンオフィオライトなどでは,蛇紋岩の炭酸塩化が顕著であり,オフィオライト下部ではメタモルフィックソール由来の流体により蛇紋岩がほぼ完全に炭酸塩に置き換えられたリスベナイトが広くみられる(Kelemen et al. 2013)。マントルの加水作用は近年,日本海溝付近など古い海洋プレートが折れ曲がる際に発達するアウターライズ断層沿いでは,海水がマントルまで浸入し蛇紋岩化が進行していることが示唆されている(e.g., Fujie et al. 2013)。その場合,マントルの蛇紋岩化に伴い炭酸塩化も起きていると考えられ,地球内部への炭素輸送量は著しく増加しているかもしれない。これまでは,負のフィードバックにより地球内部での炭素循環がバランスすることで表層環境の安定化に貢献してきたが,マントルの大規模な炭酸塩化が起こればフィードバック効果の制御が効かなくなる可能性もある。海洋プレートによる炭素輸送量は長期的な地球環境変動ともリンクすることから,地殻深部やマントルでの炭素の取り込みプロセスの理解や海底深部掘削によるコア試料の解析が待たれる。