日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GC 固体地球化学

[S-GC33] 固体地球化学・惑星化学

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.17

コンビーナ:下田 玄(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源センター)、山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科)、石川 晃(東京工業大学理学院地球惑星科学系)

17:15 〜 18:30

[SGC33-P01] 希ガス同位体比からみたカムチャッカ半島内陸火山の起源

*深川 雅央1、角野 浩史2、Volynets Anna3、Taran Yuri3 (1.東京大学教養学部後期課程統合自然科学科物質基礎科学コース、2.東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系、3.ロシア科学アカデミー)


キーワード:希ガス、カムチャッカ

研究の背景と目的:ユーラシア大陸北東部にあるカムチャッカ半島では、北西方向に太平洋プレートが沈み込んでおり、三本の火山列(海溝から近い順に火山フロント列、背弧火山列、超背弧火山列)が形成されている。これら三つの火山列のうち、超背弧火山列の起源についてはプルームの上昇や、海溝の南東方向への後退に伴う背弧拡大等の複数の説があり明らかになっていないことから、本研究ではプルーム起源であるホットスポット地域と沈み込み帯で同位体比が異なる希ガス同位体比を用いることで、その起源について制約を加えることを目的とした。

試料と分析手法:カムチャッカ半島の超背弧火山列(Sredinny Range)で採取された玄武岩・安山岩から分離したかんらん石および輝石について、真空中で破砕した後にガスを抽出し、質量分析計を用いてHe~Xeの希ガスの存在量及び同位体比をそれぞれ測定した。また、破砕後の粉を加熱溶融した後に同様に質量分析計を用いてHe~Arの希ガスの同位体比及びHe~Xeの希ガスの存在量を測定した。

結果と考察:ヘリウム同位体比(3He/4He)はほとんどのかんらん石の破砕で凡そ8 Ra(大気の3He/4He比を1 Raと表す)であった。これは火山フロント列に属するAvacha火山のマントル捕獲岩で報告されている7.724±0.019 Ra[1]と同様に、MORBの値の範囲(8±1 Ra)に入っている。一方で輝石は、かんらん石と比較して低い3He/4He比を示した。これは一般にマグマ中で輝石はかんらん石と比較して晶出が遅く、それまでにマグマが低い3He/4He比を持つ地殻と相互作用をしたことを反映していると考えられる。また、一部のかんらん石では破砕にてMORB的な値よりも低い3He/4He比が得られ、マントルウェッジに供給されたスラブ起源流体の痕跡と考えられる。一方で破砕によりMORB的な値よりも高い3He/4He比を示す試料もあったが、加熱溶融にて100 Ra以上の更に高い3He/4He比が得られたことから、宇宙線照射の影響を受けている可能性が高いと考えられる。

 以上よりカムチャッカ半島超背弧火山列の起源としては、全体として火山フロント列と同様に対流しているマントルと考えられ、プルームが関与している可能性は低いと考えられる。また、一部の火山についてはスラブ起源流体の痕跡が顕著に残っているものと考えられる。

参考文献

[1] Kobayashi et al., EPSL 2017.