日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 測地学・GGOS

2021年6月4日(金) 10:45 〜 12:15 Ch.22 (Zoom会場22)

コンビーナ:松尾 功二(国土地理院)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、大坪 俊通(一橋大学)、座長:中島 正寛(国土交通省国土地理院)、伊東 優治(東京大学地震研究所)

11:30 〜 11:45

[SGD01-10] 東日本大震災前のGEONETデータに見られる地殻変動の静穏化

*原田 靖1、村井 優花1 (1.東海大学 海洋学部 海洋地球科学科)

キーワード:GEONET、東日本大震災、地殻変動の静穏化

国土地理院はGEONET(日本列島全体に設置された約1300点のGNSS観測網)を20年以上維持管理しており, 日々の解析解(F3解)を公開している. このF3解を2000年から2020年の20年間のデータを使い, すべての観測点の位置データを数十日平均を取った後, 数か月間または1年間の変動ベクトル(差分ベクトル)を求め, 緯度, 経度, 高さのそれぞれの成分とそのベクトルの大きさをグリッドファイルを作成し, 地図上に描画して約20年分の日本全体の地殻変動変動アニメーションを作成した.
変動ベクトルの大きさはその期間の地殻変動の大きさを表しているので, 日本列島の地殻変動活動度パターンの時間変動を見るのにこのアニメーションは適している. これを見ると, まず大局的な日本列島のブロック構造が見て取れ, 更にほとんど変動していない地域が時間と共に移動していく現象が見られた. また列島全体の地殻変動活動度を定量的に調べるため, 全観測点の変動ベクトルの大きさの総和を計算しその時間変動をグラフに表した(図: 青の折れ線が震災前, 大きなピークは十勝沖地震, 赤の折れ線が震災後, 大きなピークは東北地方太平洋沖地震). これを見ると東日本大震災前でも時間と共に日本列島全体の地殻変動の大きさの総量が徐々に減少している事が明かになった. 東日本震災後の地殻変動の大きさの総量が減少するのは余震が減って行く過程を見ているため当然だが, 同じように減少傾向が計算された. 減少率は震災後の方が50%程度大きいという結果になった.
過去の研究で東北地方において東日本大震災前に地殻変動の速度変化が起こったことは指摘されていたが, より広い範囲の地殻変動においても"地殻変動の静穏化"が10年以上に渡って起こっていたことが示唆される. 発表時には各地域ごとの地殻変動活動度変化も示す予定である.

本研究は東海大学海洋学部海洋地球科学科における2020年度卒業論文の一部である.