日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 測地学・GGOS

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.13

コンビーナ:松尾 功二(国土地理院)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、大坪 俊通(一橋大学)

17:15 〜 18:30

[SGD01-P01] 水平重力計アレイ観測による瑞浪超深地層研究所用地に局在した地震地下水応答の検出

*田中 俊行1 (1.公益財団法人地震予知総合研究振興会東濃地震科学研究所)

キーワード:重力、地下水、瑞浪超深地層研究所

瑞浪超深地層研究所(MIU)の埋め戻しに伴う重力変化をモニターするために、gPhone(#153)重力計を埋め戻し工事以前から引き続き瑞浪地科学研究館(以下、MGA)で稼働させ、gPhone(#130)重力計を2020年3月から戸狩観測壕(以下、TGR)で、連続観測を行っている。MGAはMIUとの水平距離が約150 mであり、TGRはMIUとの水平距離が約300 mである。また、MGAとTGRの水平距離は約500 mである。また、FG5による絶対重力測定はMGAにて毎月1回実施していたが、2020年10月にHe-Neレーザーが消耗して終了した。

2つのgPhoneデータの差をとる事で、MIU埋め戻し工事に伴う局所的な重力変化を検出出来るはずである。潮汐や大気擾乱も差をとる事で相殺出来るかと思われたが、実際には振幅数microGalの振動が残ったため、個々のデータの段階でBaytap08を適用し、潮汐および気圧応答を除去し、センサードリフト及び振動(自然及び人為)擾乱を手動補正して、残差重力値を得た。ただし、#130が移設間もないためにセンサードリフトレート変化が大きく、各重力計近傍で別の工事作業があったために全体的にノイズが散在する事となった。これら擾乱の補正は試行錯誤的にいくつかの方法で実施したが、いずれの方法でも、2020年4〜9月の解析期間において、7月22日発生のアラスカ半島地震(Mw7.8)がトリガーした地震地下水応答に伴う重力増加(最大振幅約4microGal、期間約12日)は#153にのみ検出された。図にgPhone#153からgPhone#130の差の残差重力値を示す。Sはステップノイズ(恐らく、人為)を示し、Eが今回検出した地震地下水応答を示す。ステップノイズ直後は非線形ドリフトが数日以上継続する。絶対重力測定はこの解析期間中は、-0.5 microGal/month程度の重力減少が観測され、東北地方太平洋沖地震以後の地殻隆起を主に反映していると思われる。したがって、図の残差重力値はセンサードリフト成分が除去し切れていない事に注意する。なお、この間のMIU埋め戻し工事は深度500mから深度400mまでの土砂充填であり、その直接的な重力増加はまだ1microGal未満である(本多ほか、2019、物理探査)。

これまで、MGAでの重力観測で地震地下水応答(被圧地下水)は複数回検出されており、必ず水位上昇かつ重力低下であった。地震地下水応答が生じた時は、MIU近傍のみ顕著な地下水位(間隙水圧)の増加が生じ、その周囲では逆に水位低下する観測事実(Tanaka et al., 2006, Gcubed、竹内ほか、2015、原子力バックエンド研究)から、重力観測は後者の寄与が勝さるためと解釈していた。今回、TGR350mボアホール水位計欠測期間でかつ周囲のボアホール水位変化が不明瞭であったために重力との関係は確認出来ない。角距離5200kmのMw7.8の地震地下水応答は検出限界に近い(Asai, 2006, D. thesis)。MIU埋め戻し工事やリニア新幹線工事(主要地下水流の上流4km付近で実施)による水理環境変化が重力変化のセンス逆転に寄与したかもしれない。今後事例を増やして、局在する重力変化ソース位置およびセンス反転の原因を究明したい。