日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT16] Structure and Dynamics of Earth and Planetary Mantles

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.15

コンビーナ:中川 貴司(University of Leeds)、芳野 極(岡山大学惑星物質研究所)、趙 大鵬(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)

17:15 〜 18:30

[SIT16-P02] Li添加オリビンの高温変形特性

*夏井 文凜1、平賀 岳彦1 (1.東京大学地震研究所)


キーワード:マントルレオロジー、拡散クリープ、上部マントル、オリビン、水軟化

上部マントル流動を理解するために、上部マントルの主要構成鉱物であるオリビン多結晶体の高温変形特性を決定することは重要である。オリビンは上部マントルにおいて最大0.1 wt.%程度含水していると考えられる。これまで含水オリビンの変形特性が実験的に調べられ、水を含むことで粘性率が大きく低下するとされてきた(Mei and Kohlstedt, 2000)。しかし、Siの自己拡散実験から水軟化の存在の否定、もしくは従来の予想よりその効果は著しく小さいという研究もある(Fei et al., 2013)。Yabe and Hiraga(2020)では、水は粒界拡散を促進するオリビン粒界構造無秩序化の開始温度を下げる働きをし、その結果生じる水軟化はこれまでの実験結果を矛盾なく説明できるとした。

 本研究では、大気圧下でもオリビンに導入可能なLiを水(H)の模擬元素とし、Li添加オリビンと無添加オリビンの高温変形特性を比較することで、水軟化のメカニズムを明らかにするのを目的とする。真空焼結法を用いて、Li添加オリビン(Mg2SiO4)多結晶体を合成し、平均粒径は約1μm、空隙は<3.5 vol%であった。大気圧高温試験機を用いて、本多結晶体を843~996℃、応力5~200 MPaで変形させた。Li無添加のオリビンより、200℃近い低温条件で変形し、著しい粘性率の低下が見いだされた。Liのオリビンレオロジーへの効果を通して、水軟化について議論する。