日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT20] MAGMA, FLUID TRANSPORT, AND SEISMICITY IN THE EARTH'S INTERIOR

2021年6月4日(金) 09:00 〜 10:30 Ch.23 (Zoom会場23)

コンビーナ:大谷 栄治(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、北 佐枝子(建築研究所)、中村 美千彦(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、Mysen Bjorn(Geophysical Laboratory, Carnegie Inst. Washington)、座長:大谷 栄治(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、北 佐枝子(建築研究所)

10:00 〜 10:15

[SIT20-05] 2011年東北沖地震による2021年M7.3福島沖地震への影響

*橋間 昭徳1、岩崎 貴哉1、佐藤 比呂志1、篠原 雅尚1、石山 達也1、蔵下 英司1、Becker Thorsten3、Freed Andrew2 (1.東京大学地震研究所、2.パーデュー大学、3.テキサス大学オースティン校)

キーワード:応力変化、2021福島沖地震、2011東北沖地震、スラブ内地震、太平洋スラブ、有限要素法

2021年2月13日、福島沖(37.6°N, 141.5°E)、深さ55 kmでMj7.3の福島沖地震が発生し、最大震度は福島県と宮城県で震度6強であった。この地震は東西圧縮の逆断層タイプであり、沈み込む太平洋プレートのスラブ内地震であると考えられる。この地震に2011年M9東北沖地震がどのように影響したのかは、今回の地震の発生メカニズムを考える上で重要である。

2011年東北沖地震時および地震後の変動は、日本列島の稠密なGPS観測網(GEONET)によって捉えられている。Freed et al. (2017) は2011年3月11日以降3年間の地殻変動データをもとに、日本列島下の粘性構造と余効すべり分布を求めた。これにもとづき、Becker et al. (2018) は東北沖地震後の粘弾性緩和と余効すべりの影響を考慮した地下の応力場の時間変化を計算した。本研究では、Freed et al. (2017)、Becker et al. (2018)の応力変化モデルをもとに、福島沖の震源域付近の応力変化を計算する。

東北沖地震以前の応力場を0とし、東北沖地震による変位と応力の時間変化を2021年福島沖地震の震源域を含む地下断面においてプロットした。変位は地震前、地震後ともに東向きの変動が継続して起きている。平均応力成分(σ11+σ22+σ33) / 3のプロットからは、上盤側が体積伸張的、福島沖地震の震源を含む下盤側が体積圧縮的な応力を受ける。福島沖地震の震源に着目すると、ここでは剪断応力が~1 MPa程度増加し、応力のパターンは東西圧縮的である。この応力変化は、今回の福島沖地震の震源メカニズムと調和的であり、東北沖地震が今回の地震をトリガーした可能性を示す。

今後、より正確な応力変化の見積もりのために、10年間の地殻変動データにもとづく粘弾性緩和と余効すべりの影響を含んだ応力変化モデルを求める必要がある。