日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP25] 変形岩・変成岩とテクトニクス

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.12

コンビーナ:針金 由美子(産業技術総合研究所)、中村 佳博(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)

17:15 〜 18:30

[SMP25-P03] マイロナイトから推定する北アルモラ衝上断層の運動像

*樹神 洸寿1、安東 淳一1、Das Kaushik1、Sarkar Dyuti Prakash1 (1.広島大学)

キーワード:c軸ファブリック、層状珪酸塩鉱物、マイロナイト

本研究では、インドヒマラヤ地域に露出する主中央衝上断層系に属する南に傾斜を示す北アルモラ衝上断層(NAT)の地殻内における断層運動過程を、岩石変形微細組織をもとに明らかにすることを目的とした。ヒマラヤ地域のような大陸衝突帯においては、地殻深部で生じる変形現象が、軽いプレート同士の衝突や、アンダープレーティングに起因する浮力によって、上昇過程における上書き変形をほぼ受けることなく地表にあらわれることに着目した。実際、本研究で取り扱った岩石試料には、初生的なマイロナイト組織に重複するような変形組織は見てとれなかった。

【調査地域】インド北部Uttarakhand州Almoraの北部に露出するNATを対象に研究を行った。地質調査の結果、NATから南方に約7kmの領域に存在する花崗岩および砂岩は、塑性変形によってマイロナイト化しており、傾向としてNATに近づくにつれ「プロトマイロナイト」から「マイロナイト」へと変化し、NAT隣接地域では「ウルトラマイロナイト」が露出する。これらマイロナイトの面構造とNATの走向はほぼ平行である。

【微細組織観察】系統的に採取した岩石試料に対して、偏光顕微鏡、SEM、SEM-EBSDの観察および、ImageJを用いた動的再結晶した石英のアスペクト比及び粒径の測定を行った。また、アスペクト比及び粒径の測定は、SEM-EBSDを用いた方位マッピングを用いても行った。観察の目的は1)マイロナイト化した温度条件、2)剪断センス、3)三次元的な歪場及び流動応力値、および4)断層運動に与える層状珪酸塩鉱物の影響の解明である。

【結果】現時点で以下のことが明らかとなっている。1)花崗岩マイロナイトは、含有する長石は脆性変形している一方で、石英は塑性変形している。このことから、マイロナイトは脆性-塑性遷移領域条件で形成されたと考えられる。2)動的再結晶した石英の「c軸ファブリックの開口角変形温度測定法」と「再結晶粒子形態に基づく変形温度測定法」から得られた変形温度はほぼ一致しており、調査地域全体で450-550 ℃を示した。3)動的再結晶した石英粒径から求めた応力値は、NAT近傍で50-60 MPa、約7 km離れた場所では35 MPaと減少する傾向を示した。4)薄片の観察結果から、本地域は主にtop-to-southの剪断センスである。5)動的再結晶した石英のアスペクト比からは、Z方向に短縮、X方向とY方向に伸長する(X方向の伸長はY方向の伸長に比べてより大きい)歪場であったことが示された。6) NAT近傍において花崗岩質マイロナイト中の層状珪酸塩鉱物の占有率は約50%であり、NATから離れるにしたがって占有率が低下する。また層状珪酸塩鉱物の占有率が増加するに従い、再結晶石英のc軸の集中度は低下する傾向が確認できた。

 引き続きデータの取得を行い、NATの運動過程を報告する。