17:15 〜 18:30
[SMP25-P16] 高遠-大鹿村地域における領家変成岩の変成温度圧力条件
キーワード:領家変成岩、MTL、Low-P/T type metamorphism
高温低圧型変成作用は島弧火成活動に密接に関連しており,変成岩と周囲の花崗岩類の詳細なP-T-t-D条件を推定することは活動的収束帯の構造発達史の理解につながる.最近,柳井・三河地域の領家花崗岩類や変成岩より多数のU–Pbジルコン年代が報告されている (e.g., Skrzypek et al. 2016; Takatsuka et al. 2018). これらの年代データは古典的な領家帯の古期・新期花崗岩類の貫入関係とそれに密接に関連する広域変成作用の再検討が必要であることを示唆している.そこで本研究では高遠―大鹿地域の中央構造線(MTL)周辺に分布するマイロナイト化した領家変成岩の詳細な温度圧力条件の見積もりを試みた.この地域は領家変成帯の最東端に位置するため,これまでに報告されている他地域との比較に最適である.
本研究地域には,非持トーナルと呼ばれる片麻状角閃石黒雲母トーナル岩が広く分布している一方で,領家変成岩の報告はこれまでなかった.しかし詳細な地質調査を実施することで,多数の小規模な変成岩ブロックの採取に成功した.採取したマイロナイト化した変成岩は,ザクロ石ポーフィロクラストと雲母によるC'面がよく発達しており,左横ずれセンスを示す.代表的な鉱物組み合わせは,ザクロ石,黒雲母,白雲母, 菫青石, 斜長石,石英と少量のアパタイト, ジルコン, トルマリン, 珪線石, 板状グラファイトである.領家変成帯ザクロ石―菫青石帯中の最も変成度が高い岩石は,MTLから約1800m離れた場所に露出している.地質温度圧力計とP-T pseudosection modellingを用いた変成温度圧力見積もりから760–790℃, 4.6–5.3 kbarの温度圧力条件を見積もった.同様にAl in hornblende圧力計及びHbl–Pl温度計より周囲の片麻状花崗岩類は,680–710℃, 4.6–5.8 kbarで定置したことがわかった.
一方でマイロナイト化した変成岩の温度圧力条件は560–710℃, 2.0–5.1 kbarとなり,MTLに近づくにつれて温度圧力条件が低下することが示唆される.そのような岩石は領家変成帯のカリ長石-珪線石帯や黒雲母帯に対比され,最高変成度の領家変成岩の構造的上位の岩石である.しかし現在の領家変成岩及び花崗岩類はいずれも西へ50-70度傾斜した同斜構造を示し,カリ長石-珪線石帯や黒雲母帯のマイロナイト化した変成岩がザクロ石―菫青石帯の岩石の構造的下位に分布する.つまり高温低圧型変成作用による初生的な変成構造がMTL付近で非対称かつタイトな背斜構造を示すことを示唆している.更に最高変成度の岩石とマイロナイト化した変成岩のわずか1500mの幅で10km以上の圧力差が推定されることを明らかにした.これらのデータは,中部地殻で大規模な地質体の短縮ないし伸張が起き,構造的上位の黒雲母帯や珪線石帯の岩石がMTLの活動に関連した延性変形によって深部に引きずり込まれたことを示唆している.
[Reference]: Skrzypek et al. (2016), Lithos, 260, 9-27; Takatsuka et al. (2018), Lithos, 308-309, 428-445.
本研究地域には,非持トーナルと呼ばれる片麻状角閃石黒雲母トーナル岩が広く分布している一方で,領家変成岩の報告はこれまでなかった.しかし詳細な地質調査を実施することで,多数の小規模な変成岩ブロックの採取に成功した.採取したマイロナイト化した変成岩は,ザクロ石ポーフィロクラストと雲母によるC'面がよく発達しており,左横ずれセンスを示す.代表的な鉱物組み合わせは,ザクロ石,黒雲母,白雲母, 菫青石, 斜長石,石英と少量のアパタイト, ジルコン, トルマリン, 珪線石, 板状グラファイトである.領家変成帯ザクロ石―菫青石帯中の最も変成度が高い岩石は,MTLから約1800m離れた場所に露出している.地質温度圧力計とP-T pseudosection modellingを用いた変成温度圧力見積もりから760–790℃, 4.6–5.3 kbarの温度圧力条件を見積もった.同様にAl in hornblende圧力計及びHbl–Pl温度計より周囲の片麻状花崗岩類は,680–710℃, 4.6–5.8 kbarで定置したことがわかった.
一方でマイロナイト化した変成岩の温度圧力条件は560–710℃, 2.0–5.1 kbarとなり,MTLに近づくにつれて温度圧力条件が低下することが示唆される.そのような岩石は領家変成帯のカリ長石-珪線石帯や黒雲母帯に対比され,最高変成度の領家変成岩の構造的上位の岩石である.しかし現在の領家変成岩及び花崗岩類はいずれも西へ50-70度傾斜した同斜構造を示し,カリ長石-珪線石帯や黒雲母帯のマイロナイト化した変成岩がザクロ石―菫青石帯の岩石の構造的下位に分布する.つまり高温低圧型変成作用による初生的な変成構造がMTL付近で非対称かつタイトな背斜構造を示すことを示唆している.更に最高変成度の岩石とマイロナイト化した変成岩のわずか1500mの幅で10km以上の圧力差が推定されることを明らかにした.これらのデータは,中部地殻で大規模な地質体の短縮ないし伸張が起き,構造的上位の黒雲母帯や珪線石帯の岩石がMTLの活動に関連した延性変形によって深部に引きずり込まれたことを示唆している.
[Reference]: Skrzypek et al. (2016), Lithos, 260, 9-27; Takatsuka et al. (2018), Lithos, 308-309, 428-445.