15:45 〜 16:00
[SSS02-08] Kalmanフィルタと経験的モード分解を用いた地震発生時での変位・速度・津波波高の同時推定:海底水圧計・加速度計記録の活用
キーワード:津波、即時把握
日本列島太平洋沖に整備されたDONETやS-netといった海底観測網では、地震計・水圧計が広域に展開されることで沖合の断層近傍における地震・津波の観測を可能としている。しかしながら、地震発生時に地震動や津波波高を正確に観測するためには、いくつかの課題が残されている。例えば津波観測では、地震発生時に海底加速度変動などによる非津波成分が卓越することが知られている(e.g., Saito and Tsushima, 2016)。また地震観測では、観測点の回転・傾斜などが原因で加速度記録を単純に積分するだけでは速度や変位波形は発散してしまう(e.g., Iwan et al.,1985)。
本研究では、Kalmanフィルタと経験的モード分解を用いることで、同一観測点に設置されている強振加速度記録と水圧計記録を組み合わせることから、地震時変位・速度・津波波高を逐次的に推定する手法を提案する。
(1)津波波高推定
初めにMizutani et al. (2020)の抽出手法を用いることで、地震時水圧記録から海底変位・津波成分のみを含んだ水圧記録を抽出する。抽出した記録に対して経験的モード分解を適用することで津波波高の推定をおこなう。経験的モード分解を用いた津波波高推定はWang et al. (2020)で既に提案されているが、Wang et al. (2020)では1分サンプリングの記録に対して適用されているのに対し、今回は断層近くでの即時推定を目的としているので1秒サンプリングの記録に対して適用する。
(2)変位・速度推定
Kalmanフィルタによって、加速度記録と水圧記録を組み合わせる。Kalmanフィルタを用いた地震時変位・速度波形の推定は、陸上観測点ではGNSS観測と加速度計のペアに適用された例があり(e.g., Bock et al., 2011)、フィルタの設計はこれらの先行研究を参考におこなった。陸上観測と海底観測の相違点として、水圧計には津波による変動も記録されることがあげられる。そのため本研究では、加速度記録と(1)で推定した津波波形をもとに補正した水圧記録に対してKalmanフィルタを適用した。
本手法を2016年三重県南東沖地震(Mw6.0)のDONET1記録と2016年福島県沖地震(Mw7.4)のS-net記録に適用し、変位・速度・津波波形の逐次推定をおこなった(図1)。本手法による推定には30秒のタイムラグがあるため、地震後2分間の記録から図1のような90秒間の波形を推定した。
推定結果の妥当性を調べるために、変位波形から計算した永久変位と水圧計記録のオフセット(図2a)、津波波形と100-500sバンドパスフィルタを適用した水圧記録の最大値(図2b)、Katsumata(2007)で定義された速度マグニチュード(図2c)のそれぞれを比較した。いずれの比較も良い一致を示しており、本手法は沖合で発生する津波・地震の即時把握に有用であるといえる。
本研究では、Kalmanフィルタと経験的モード分解を用いることで、同一観測点に設置されている強振加速度記録と水圧計記録を組み合わせることから、地震時変位・速度・津波波高を逐次的に推定する手法を提案する。
(1)津波波高推定
初めにMizutani et al. (2020)の抽出手法を用いることで、地震時水圧記録から海底変位・津波成分のみを含んだ水圧記録を抽出する。抽出した記録に対して経験的モード分解を適用することで津波波高の推定をおこなう。経験的モード分解を用いた津波波高推定はWang et al. (2020)で既に提案されているが、Wang et al. (2020)では1分サンプリングの記録に対して適用されているのに対し、今回は断層近くでの即時推定を目的としているので1秒サンプリングの記録に対して適用する。
(2)変位・速度推定
Kalmanフィルタによって、加速度記録と水圧記録を組み合わせる。Kalmanフィルタを用いた地震時変位・速度波形の推定は、陸上観測点ではGNSS観測と加速度計のペアに適用された例があり(e.g., Bock et al., 2011)、フィルタの設計はこれらの先行研究を参考におこなった。陸上観測と海底観測の相違点として、水圧計には津波による変動も記録されることがあげられる。そのため本研究では、加速度記録と(1)で推定した津波波形をもとに補正した水圧記録に対してKalmanフィルタを適用した。
本手法を2016年三重県南東沖地震(Mw6.0)のDONET1記録と2016年福島県沖地震(Mw7.4)のS-net記録に適用し、変位・速度・津波波形の逐次推定をおこなった(図1)。本手法による推定には30秒のタイムラグがあるため、地震後2分間の記録から図1のような90秒間の波形を推定した。
推定結果の妥当性を調べるために、変位波形から計算した永久変位と水圧計記録のオフセット(図2a)、津波波形と100-500sバンドパスフィルタを適用した水圧記録の最大値(図2b)、Katsumata(2007)で定義された速度マグニチュード(図2c)のそれぞれを比較した。いずれの比較も良い一致を示しており、本手法は沖合で発生する津波・地震の即時把握に有用であるといえる。