17:15 〜 18:30
[SSS04-P01] 2011年東北地方太平洋沖地震の本震発生と地球潮汐
キーワード:地震、地球潮汐、2011年東北地方太平洋沖地震
1.はじめに
2011年東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)では,本震の破壊開始域近傍において本震発生直前の約10年間に地球潮汐と地震発生の間に明瞭な相関が現れていた(Tanaka, 2012)。そこで本発表では、本震の発生に直接関わったと思われる地球潮汐の影響を報告する。
2.前震-本震型地震での影響
この地震は前震-本震型とされている。前震(M7.3)は3月9日11時45分、本震は3月11日14時46分であり、間隔は51時間1分である。地球潮汐に最も影響を与えるのは月で、周回周期は24時間50分、凡そ25時間である。従って本震は、月が2周した直後に発生している。概略値による式は以下となる。
本震発生時刻 = 前震発生時刻 +2周回 x 25時間 + 凡そ1時間 (1)
さて、2016年熊本地震(4月16日1時25分、M7.0)も前震-本震型(前震:4月14日21時26分)であり間隔は27時間59分、即ち1周回x25時間+凡そ3時間である。2つの地震から式は以下となる。
本震発生時刻 = 前震発生時刻 + 月の周回回数 x 25時間 ± 数時間 (2)
これは、本震時、月が前震時と概ね同じ位置にあって地形に同様の変形を齎し地震をトリガーした為と推測される。
更に、2011年3月11日の月の正中時刻(金華山)は16時12分で、本震は月正中の凡そ1時間30分前である。2016年熊本地震では、正中時刻(熊本)は0時33分であり、月正中の凡そ1時間後の発生である。両方とも月は直上付近にあり地殻を大きく変形させていたと考えられる。尚、全ての前震-本震型地震の挙動が、ここに示したもので無いことを認識している。
3. 発生日に対する影響
3-1.東北地方太平洋沖地震(図 1)
三陸沖中部(海域)で発生の主要な地震の月の位相を調べると以下となった(末, 2008)。月の位相である月と太陽の黄経差は、新月:0度、上弦:90度、満月:180度、下弦:270度である。この領域では、顕著な依存性が見られ黄経差20~80度に集団があり、主要な被害地震がこの期間に発生している。月の位相は、誤差は生まれるが太陰暦の日にちとしても示される。太陰暦は、陰暦、和暦、旧暦等と称され、どれも同じ内容であるが本論では陰暦あるいは旧暦とする。陰暦では1772年陸前・陸中の地震(M7.4)は陰3日、1896年明治三陸地震(M8.5)は陰5日、1933年昭和三陸地震(M8.1)は陰8日であり、陰暦3-8日頃となる。
一方、2011年3月11日発生の主題地震は、月と太陽の黄経差70度、陰暦7日で発生しており、これまでと同様の月の位相であることになる(末, 2011)。
尚、2008年の調査は、三陸沖中部の海溝軸を挟む矩形域(南端:北緯39度)を対象としているが、2011年東北地方太平洋沖地震は北緯38度6分で発生した為、調査領域を南に1度弱はずれており厳密性に欠ける。しかし海溝軸は直線的に南下しており、力学的な方位は概ね保持されていると推測する。
また、南隣の宮城県陸部及び沖合(三陸沖南部海溝寄り海域を含む)の調査も行っており、ここでは月と太陽の黄経差70ー95度に発生の集団があり、1793年陸前・陸中地震(M8、陰暦7日)の発生がある(末, 2007)。
三陸沖と宮城県陸部及び沖合領域の調査事例は、過去に発生した地震の領域毎の調査が、後日発生する巨大地震の発生日の推定に有効であることを示唆している。
3-2. 869年貞観地震(M8.3)
2011年東北地方太平洋沖地震に関連して言及される869年貞観地震(M8.3)は、平安時代の貞観十一年五月二六日、即ち陰暦26日に発生しており三陸沖中部での巨大地震の発生日とは異なる。宮城県陸部及び沖合(三陸沖南部海溝寄り)にはこの位相で大地震の発生があるので、更なる調査が必要である(末, 2007)。
4. その他の影響
発生月(Month)の偏りや月の軌道による18.6年の周期性等、地球潮汐による影響は多くある(末, 2012)。
参考文献
末芳樹, 2007, 869年貞観地震(M8.3)の陰暦26日での発生について, 日本地震学会予稿集, P2-056.
末芳樹, 2008, 三陸沖中部で発生した地震に於ける月の位相, JpGU, 予稿, S145-P004.
末芳樹, 2011, 三陸沖で発生した甚大被害地震の太陰暦発生日の近接 −地球潮汐の影響−, JpGU, 予稿, MIS036-P87.
末芳樹, 2012, 研究テーマに見落しは無いか? −潮汐トリガー研究の重要性−, 日本地震学会モノグラフ, pp55-57.
Tanaka, S., 2012, Tidal triggering of earthquakes prior to the 2011 Tohoku-Oki earthquake (Mw 9.1), Geophys. Res. Lett., 39(7).
2011年東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)では,本震の破壊開始域近傍において本震発生直前の約10年間に地球潮汐と地震発生の間に明瞭な相関が現れていた(Tanaka, 2012)。そこで本発表では、本震の発生に直接関わったと思われる地球潮汐の影響を報告する。
2.前震-本震型地震での影響
この地震は前震-本震型とされている。前震(M7.3)は3月9日11時45分、本震は3月11日14時46分であり、間隔は51時間1分である。地球潮汐に最も影響を与えるのは月で、周回周期は24時間50分、凡そ25時間である。従って本震は、月が2周した直後に発生している。概略値による式は以下となる。
本震発生時刻 = 前震発生時刻 +2周回 x 25時間 + 凡そ1時間 (1)
さて、2016年熊本地震(4月16日1時25分、M7.0)も前震-本震型(前震:4月14日21時26分)であり間隔は27時間59分、即ち1周回x25時間+凡そ3時間である。2つの地震から式は以下となる。
本震発生時刻 = 前震発生時刻 + 月の周回回数 x 25時間 ± 数時間 (2)
これは、本震時、月が前震時と概ね同じ位置にあって地形に同様の変形を齎し地震をトリガーした為と推測される。
更に、2011年3月11日の月の正中時刻(金華山)は16時12分で、本震は月正中の凡そ1時間30分前である。2016年熊本地震では、正中時刻(熊本)は0時33分であり、月正中の凡そ1時間後の発生である。両方とも月は直上付近にあり地殻を大きく変形させていたと考えられる。尚、全ての前震-本震型地震の挙動が、ここに示したもので無いことを認識している。
3. 発生日に対する影響
3-1.東北地方太平洋沖地震(図 1)
三陸沖中部(海域)で発生の主要な地震の月の位相を調べると以下となった(末, 2008)。月の位相である月と太陽の黄経差は、新月:0度、上弦:90度、満月:180度、下弦:270度である。この領域では、顕著な依存性が見られ黄経差20~80度に集団があり、主要な被害地震がこの期間に発生している。月の位相は、誤差は生まれるが太陰暦の日にちとしても示される。太陰暦は、陰暦、和暦、旧暦等と称され、どれも同じ内容であるが本論では陰暦あるいは旧暦とする。陰暦では1772年陸前・陸中の地震(M7.4)は陰3日、1896年明治三陸地震(M8.5)は陰5日、1933年昭和三陸地震(M8.1)は陰8日であり、陰暦3-8日頃となる。
一方、2011年3月11日発生の主題地震は、月と太陽の黄経差70度、陰暦7日で発生しており、これまでと同様の月の位相であることになる(末, 2011)。
尚、2008年の調査は、三陸沖中部の海溝軸を挟む矩形域(南端:北緯39度)を対象としているが、2011年東北地方太平洋沖地震は北緯38度6分で発生した為、調査領域を南に1度弱はずれており厳密性に欠ける。しかし海溝軸は直線的に南下しており、力学的な方位は概ね保持されていると推測する。
また、南隣の宮城県陸部及び沖合(三陸沖南部海溝寄り海域を含む)の調査も行っており、ここでは月と太陽の黄経差70ー95度に発生の集団があり、1793年陸前・陸中地震(M8、陰暦7日)の発生がある(末, 2007)。
三陸沖と宮城県陸部及び沖合領域の調査事例は、過去に発生した地震の領域毎の調査が、後日発生する巨大地震の発生日の推定に有効であることを示唆している。
3-2. 869年貞観地震(M8.3)
2011年東北地方太平洋沖地震に関連して言及される869年貞観地震(M8.3)は、平安時代の貞観十一年五月二六日、即ち陰暦26日に発生しており三陸沖中部での巨大地震の発生日とは異なる。宮城県陸部及び沖合(三陸沖南部海溝寄り)にはこの位相で大地震の発生があるので、更なる調査が必要である(末, 2007)。
4. その他の影響
発生月(Month)の偏りや月の軌道による18.6年の周期性等、地球潮汐による影響は多くある(末, 2012)。
参考文献
末芳樹, 2007, 869年貞観地震(M8.3)の陰暦26日での発生について, 日本地震学会予稿集, P2-056.
末芳樹, 2008, 三陸沖中部で発生した地震に於ける月の位相, JpGU, 予稿, S145-P004.
末芳樹, 2011, 三陸沖で発生した甚大被害地震の太陰暦発生日の近接 −地球潮汐の影響−, JpGU, 予稿, MIS036-P87.
末芳樹, 2012, 研究テーマに見落しは無いか? −潮汐トリガー研究の重要性−, 日本地震学会モノグラフ, pp55-57.
Tanaka, S., 2012, Tidal triggering of earthquakes prior to the 2011 Tohoku-Oki earthquake (Mw 9.1), Geophys. Res. Lett., 39(7).