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[SSS04-P03] 発生年が不確定な繰り返し地震の更新過程モデルに関する考察
キーワード:超巨大地震、日本海溝、地震確率、更新過程、古地震
東北地方太平洋沖を震源とする超巨大地震(東北地方太平洋沖型)に関して、政府地震調査委員報告書(以後日本海溝報告書:平成31年2月)によると、仙台平野で採取された5層の津波堆積物から5回の地震発生が確認されている。最初2回の発生時期には、紀元前4~3世紀、4世紀~5世紀と200年程度の不確定性がある。第3番の地震は869年の貞観地震、第5番は2011年の東北地方太平洋沖地震であるが、第4番については2つの歴史地震(1454年享徳地震、1611年慶長三陸地震)が候補とされている。この様な発生年不確定な地震時系列への更新過程モデル適用について、モデルパラメータ推定のための尤度関数(多重積分の式)が提案(Ogata,1999 JGR)され、地震調査委員会報告書「長期的な地震発生確率の評価手法について」(平成13年6月)に掲載されている(方法①)。この方法を用いて相模トラフ沿いM8クラス地震の長期評価(平成26年4月)がこれまでになされている。日本海溝報告書では別の方法(方法②)が採用されているので、比較のため方法①に従ってBrownian Passage Time 分布(BPT分布)を用いて東北地方太平洋沖型地震を調査した。その結果、BPT分布バラツキパラメータ(バラツキ)の最尤推定値が極めて小さい値となった。ここでは、モデルパラメータの最尤推定の計算過程を辿りながら、地震発生年の不確定性に照らして方法①の妥当性について検証する。なお、方法②の課題については昨年秋の地震学会で報告している。
モデルパラメータの範囲として平均間隔300年~900年バラツキ0.01~1.00において、5年0.01の間隔で尤度を算出した。最初に、前半の3個の地震(前半2間隔)について二重積分により尤度分布を得た。最尤推定値は、平均間隔550年バラツキ0.01である。貞観地震以後(後半2間隔)については二つの時系列が候補となるが、方法①に従うとそれぞれの尤度の算術平均が両時系列を同時に考えた尤度となる。この期間の最尤推定値として、平均間隔570年バラツキ0.03を得た。これは、第4番として享徳地震を採用した場合の解析解にほぼ等しい。慶長三陸地震を含む時系列に対する尤度は享徳地震の尤度より桁違いに小さいため、少なくとも最尤推定値付近での算術平均にはほとんど寄与していない。このように、貞観地震を境に時系列を分けて最尤推定値を見ることで、方法①による最尤推定値の傾向が明確になった。方法①ではBPTモデルの尤度が各時系列の重みとなるので、バラツキのより小さい時系列の寄与が大きくなる。
前半の古地震2個と貞観地震の時系列では、バラツキを小さくするに従って尤度最大値は上限1/40000に収束する。古地震発生年を積分変数とする確率密度関数の二重積分が1.に収束し、積分期間で平均する(地震発生年の確率密度が一様である)とこの値になる。後半の事例からも、複数の時系列が候補になった場合には、相対的にバラツキの小さい時系列が尤度分布を支配することがわかる。このように、方法①による最尤推定値は偏っており、候補となる全時系列の平均的なモデルパラメータとしては扱えない。
モデルパラメータの範囲として平均間隔300年~900年バラツキ0.01~1.00において、5年0.01の間隔で尤度を算出した。最初に、前半の3個の地震(前半2間隔)について二重積分により尤度分布を得た。最尤推定値は、平均間隔550年バラツキ0.01である。貞観地震以後(後半2間隔)については二つの時系列が候補となるが、方法①に従うとそれぞれの尤度の算術平均が両時系列を同時に考えた尤度となる。この期間の最尤推定値として、平均間隔570年バラツキ0.03を得た。これは、第4番として享徳地震を採用した場合の解析解にほぼ等しい。慶長三陸地震を含む時系列に対する尤度は享徳地震の尤度より桁違いに小さいため、少なくとも最尤推定値付近での算術平均にはほとんど寄与していない。このように、貞観地震を境に時系列を分けて最尤推定値を見ることで、方法①による最尤推定値の傾向が明確になった。方法①ではBPTモデルの尤度が各時系列の重みとなるので、バラツキのより小さい時系列の寄与が大きくなる。
前半の古地震2個と貞観地震の時系列では、バラツキを小さくするに従って尤度最大値は上限1/40000に収束する。古地震発生年を積分変数とする確率密度関数の二重積分が1.に収束し、積分期間で平均する(地震発生年の確率密度が一様である)とこの値になる。後半の事例からも、複数の時系列が候補になった場合には、相対的にバラツキの小さい時系列が尤度分布を支配することがわかる。このように、方法①による最尤推定値は偏っており、候補となる全時系列の平均的なモデルパラメータとしては扱えない。