日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS05] 地殻変動

2021年6月3日(木) 15:30 〜 17:00 Ch.22 (Zoom会場22)

コンビーナ:加納 将行(東北大学理学研究科)、落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、富田 史章(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、座長:太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)

15:45 〜 16:00

[SSS05-08] GNSS-A観測に基づく千島海溝根室沖における海底地殻変動の予備的結果

*太田 雄策1、木戸 元之2、本荘 千枝1、木村 友季保1、佐藤 真樹子1、鈴木 秀市1、東 龍介1、大園 真子3,5、青田 裕樹3、高橋 浩晃3、富田 史章4、飯沼 卓史4、篠原 雅尚5、日野 亮太1 (1.東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター、2.東北大学災害科学国際研究所、3.北海道大学大学院理学研究院地震火山研究観測センター、4.海洋研究開発機構、5.東京大学地震研究所)

キーワード:海底地殻変動、GNSS-音響結合方式、根室沖

2011年東北地方太平洋沖地震 (M9.0,以下東北沖地震)ではGNSS−音響結合方式 (以下,GNSS-A) や,海底水圧計による海底地殻変動観測によって,プレート境界の10km以浅で50mを超える大きな断層すべりが生じていたこと,さらにその断層すべりが海溝軸まで到達していたことが高い確度で明らかになった.こうしたプレート境界浅部での大すべりを規定する要因をさまざまな側面から理解することは,超巨大地震の発生様式の理解を深める上で重要であり,特に他の地域における超巨大地震との比較研究を行うことは地震の多様性理解のために必須である.
千島海溝は,日本海溝と同じ太平洋プレートが沈み込む場であり,M8クラスの巨大地震が十勝沖や根室沖といった各セグメントで繰り返し発生している.一方,津波堆積物の分布等から,17世紀に十勝・根室沖の両セグメントを破壊し,さらにプレート境界浅部で大きなすべりが生じていた可能性が指摘され,そのすべり様式の2011年東北沖地震との類似性が指摘されている (Ioki and Tanioka, 2016).
こうした観点から,東北大学と北海道大学では,千島海溝根室沖における現在のプレート間固着の実測を目指した海底測地観測網の整備を共同で実施し,根室沖の海溝軸に直交するGNSS-A観測点を3点設置した.このうち,陸側斜面にG21, G22の2点を設置し,沈み込む太平洋プレート上にG23を設置した.そして2019年7月に初回の観測を,2回目の観測を2020年10月に実施した.2回の観測であるため,精度の観点からまだ暫定的な結果ではあるものの,G21やG22観測点においてオホーツクプレートに対して北西方向に9cm/年を超える変位速度が得られた.これは,プレート境界浅部を含めた固着を予期させる結果である.発表ではこれら結果のモデル化等についても詳細な議論を行う.