16:00 〜 16:15
[SSS05-09] GNSS-A海底地殻変動による南海トラフ地震想定震源域の固着状態のモニタリング
キーワード:GNSS-A、海底地殻変動観測、南海トラフ地震
1 はじめに
気象庁の「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」では、毎月の定例会において、南海トラフ周辺における地震・地殻活動の評価をおこなっている。地殻変動観測は想定震源域におけるプレート境界の状態をモニタリングするための重要なツールである。特に、南海トラフ地震想定震源域の大部分は海底下にあるため、海底における地殻変動観測が重要となる。海上保安庁では、GNSS-A方式による海底地殻変動観測を定常的に実施し、南海トラフ想定震源域の現状把握のためのデータを収集している。
巨大地震につながる異常な現象を評価するためには、通常の状態とそこからの変化を把握する必要がある。南海トラフ地震想定震源域ではスロースリップ(SSE)などのスロー地震現象が度々発生しており、時間変化を含めた状態の把握が必須である。しかしながら、GNSS-A観測は観測頻度が年に数回と少ないため、時間分解能が低く短期の現象を捉えにくいという弱点がある。ここでは、次の2つの観点でプレート境界の固着状態の把握を試みる。
2 時系列の長期平均からみるすべり欠損速度の空間分布
プレート境界の摩擦特性の違いから生じるSSE発生域と強固着域を明確にするには、地殻変動時系列の長期間の平均速度からすべり欠損速度を推定することが有効である。平均期間にSSE発生期間を含むことによってSSE発生域では相対的に速度が遅くなるため、SSEが発生しない強固着域とのコントラストが明確になることが期待される。しかしながら、現在の海底測地データは高々10年程度の蓄積しかなく、SSEが発生すると想定される領域においても0~1回程度のイベントしか含まれていないと考えられるため、より正確な領域の分布の推定には、今後も観測を長期間継続しデータを蓄積する必要がある。Yokota et al. (2016) が推定したすべり欠損速度の分布はこうした観点によるものであると言えるが、本発表では、その後取得した最新のデータを含め、最新の解析手法 (Watanabe et al. 2020) で解析した結果について報告する。
3 時系列の時間変化からみる非地震性すべりの検知・監視
巨大地震発生や発生後の時間差連動につながる可能性のあるSSEや余効すべりの推移を把握するためには、地殻変動時系列における平均的な変動からのゆらぎとして顕れる非地震性のすべりを即時的に検知し、監視していく必要がある。しかしながら、現在船舶で実施しているGNSS-A観測は、観測の都度現場に赴き、持ち帰ったデータを事後に解析する必要があり、即時に結果を求めることはできない。また、観測頻度の少なさから、時系列の変化を検出するためには相応のデータの蓄積が必要となり、検出が可能になるのは往々にしてイベントの終了後となることが多い。Yokota and Ishikawa (2020)は、過去のデータを統計的に処理することで、SSE由来と考えられる時間変化を検出した。本発表では、地殻変動速度の移動平均など現状のGNNS-Aデータでどこまで時間変化を把握できるか検討した結果について報告する。
気象庁の「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」では、毎月の定例会において、南海トラフ周辺における地震・地殻活動の評価をおこなっている。地殻変動観測は想定震源域におけるプレート境界の状態をモニタリングするための重要なツールである。特に、南海トラフ地震想定震源域の大部分は海底下にあるため、海底における地殻変動観測が重要となる。海上保安庁では、GNSS-A方式による海底地殻変動観測を定常的に実施し、南海トラフ想定震源域の現状把握のためのデータを収集している。
巨大地震につながる異常な現象を評価するためには、通常の状態とそこからの変化を把握する必要がある。南海トラフ地震想定震源域ではスロースリップ(SSE)などのスロー地震現象が度々発生しており、時間変化を含めた状態の把握が必須である。しかしながら、GNSS-A観測は観測頻度が年に数回と少ないため、時間分解能が低く短期の現象を捉えにくいという弱点がある。ここでは、次の2つの観点でプレート境界の固着状態の把握を試みる。
2 時系列の長期平均からみるすべり欠損速度の空間分布
プレート境界の摩擦特性の違いから生じるSSE発生域と強固着域を明確にするには、地殻変動時系列の長期間の平均速度からすべり欠損速度を推定することが有効である。平均期間にSSE発生期間を含むことによってSSE発生域では相対的に速度が遅くなるため、SSEが発生しない強固着域とのコントラストが明確になることが期待される。しかしながら、現在の海底測地データは高々10年程度の蓄積しかなく、SSEが発生すると想定される領域においても0~1回程度のイベントしか含まれていないと考えられるため、より正確な領域の分布の推定には、今後も観測を長期間継続しデータを蓄積する必要がある。Yokota et al. (2016) が推定したすべり欠損速度の分布はこうした観点によるものであると言えるが、本発表では、その後取得した最新のデータを含め、最新の解析手法 (Watanabe et al. 2020) で解析した結果について報告する。
3 時系列の時間変化からみる非地震性すべりの検知・監視
巨大地震発生や発生後の時間差連動につながる可能性のあるSSEや余効すべりの推移を把握するためには、地殻変動時系列における平均的な変動からのゆらぎとして顕れる非地震性のすべりを即時的に検知し、監視していく必要がある。しかしながら、現在船舶で実施しているGNSS-A観測は、観測の都度現場に赴き、持ち帰ったデータを事後に解析する必要があり、即時に結果を求めることはできない。また、観測頻度の少なさから、時系列の変化を検出するためには相応のデータの蓄積が必要となり、検出が可能になるのは往々にしてイベントの終了後となることが多い。Yokota and Ishikawa (2020)は、過去のデータを統計的に処理することで、SSE由来と考えられる時間変化を検出した。本発表では、地殻変動速度の移動平均など現状のGNNS-Aデータでどこまで時間変化を把握できるか検討した結果について報告する。