16:30 〜 16:45
[SSS05-11] GNSSデータを用いた八重山諸島における平均変位速度ベクトルの推定
キーワード:平均変位速度、プレート間固着、琉球海溝、GNSS、back-slip、八重山地震
八重山諸島を含む南琉球地方は、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界である琉球海溝の南西部に位置する。この地方は津波地震が発生する場所の一つとして知られている。特に1771年に発生した八重山地震は甚大な津波被害をもたらしたことが記録されており、その要因はプレート境界浅部の固着域でのすべりであると考えられている (Nakamura, 2009)。一方プレート境界深部30~60㎞では、約半年周期でモーメントマグニチュード6.6程度のSSEが発生していることが分かっている(Heki and Kataoka, 2008; Nishimura, 2014; Tu and Heki, 2017)。このような背景の下、八重山諸島で生じる地殻変動の理解に向け、国土地理院によるGNSS連続観測に加え、2010年から京都大学によりGNSS観測が続けられている。これまでの研究では主としてこれらのGNSSデータを用いてSSEの詳細な活動が調べられてきたが(e.g. Kano et al., 2018)、プレート境界の固着に関する議論はあまりなされていない。そこで、本研究では、これらのGNSS観測点のデータから八重山諸島の平均変位速度を求め、琉球海溝の固着域の推定を試みた。
解析には、国土地理院のGEONET10点と京都大学のGNSS観測点8点の合計18点における2010年~2018年のIGS14座標系における日座標データを用いた。各観測点の時系列について、SSEによる変位や、通常地震およびアンテナ交換によるステップを除去して平均変位速度を求めた。観測期間中にSSEは16イベント発生している。各SSEの時定数は 、Tu and Heki (2017) の手法に従い、最も海溝軸に近い観測点である0751(波照間島)を用いてプレートの沈み込み方向に相当するN20W成分を取り出し、グリッドサーチで求めた。各SSEの開始時刻は、2016年末までは Tu and Heki (2017) 及び Kano et al. (2018) の値を採用し、2017年以降は0751の時系列データをもとに目視で読み取った。通常地震は、観測期間中に発生した南琉球を震源とするM6.0以上の地震を考慮した。そして、平均変位速度、通常地震とSSEに伴うステップ量、アンテナ交換に伴うステップ量などを最小二乗法で決定した。
解析の結果、八重山諸島は全体としてIGS14座標系に対して5~8cm/yrの速度で南東方向に移動していることが分かった。この定常的な運動は、ブロック剛体運動に伴う並進運動と回転運動、プレート沈み込みに伴う変動の和で構成されていると考えられる。ブロック剛体運動の並進成分は参照点0498(宮古島)の速度ベクトルを各観測点の速度ベクトルから引き除去した。八重山諸島の位置する南琉球ブロックの回転成分はNishimura et al. (2004) によるアムールプレートに対するオイラー極と角速度の値を採用した。
このようにして得られた変位速度に対して、back-slipモデルに基づくフォワードモデリングを行い、固着域を推定した。地殻変動の計算では、半無限均質弾性体を仮定し、断層は矩形断層モデル(Okada , 1992)で表現した。 断層の大まかな位置として1771年八重山地震断層近辺の浅部と、SSE発生領域である深部の2か所に固着域を設定した。固着域の断層長、幅などのパラメータは、浅部は Nakamura (2009)、深部は Heki and Kataoka(2008)のSSE震源モデルの値を基準とした。そして、観測値との差が小さくなるように試行錯誤で断層の幅やすべり角、back-slipの大きさなどの調整を行った。
その結果、与那国島の1211、YNGJや石垣島のSRH1、INDAでは数十度以上ベクトルの方向がずれるなど観測値と差が大きかったものの、その他の点はよく観測値が説明された。浅部、深部のback-slipの値はそれぞれ9cm/yr、12cm/yrとなり、プレート沈み込み速度の~9cm/yrとの比較から固着が強いことが示唆される。以上から、琉球海溝のプレート境界の浅部とSSE発生領域である深部にプレート収束速度と同程度の大きさのすべり遅れが存在する可能性があることが分かった。
解析には、国土地理院のGEONET10点と京都大学のGNSS観測点8点の合計18点における2010年~2018年のIGS14座標系における日座標データを用いた。各観測点の時系列について、SSEによる変位や、通常地震およびアンテナ交換によるステップを除去して平均変位速度を求めた。観測期間中にSSEは16イベント発生している。各SSEの時定数は 、Tu and Heki (2017) の手法に従い、最も海溝軸に近い観測点である0751(波照間島)を用いてプレートの沈み込み方向に相当するN20W成分を取り出し、グリッドサーチで求めた。各SSEの開始時刻は、2016年末までは Tu and Heki (2017) 及び Kano et al. (2018) の値を採用し、2017年以降は0751の時系列データをもとに目視で読み取った。通常地震は、観測期間中に発生した南琉球を震源とするM6.0以上の地震を考慮した。そして、平均変位速度、通常地震とSSEに伴うステップ量、アンテナ交換に伴うステップ量などを最小二乗法で決定した。
解析の結果、八重山諸島は全体としてIGS14座標系に対して5~8cm/yrの速度で南東方向に移動していることが分かった。この定常的な運動は、ブロック剛体運動に伴う並進運動と回転運動、プレート沈み込みに伴う変動の和で構成されていると考えられる。ブロック剛体運動の並進成分は参照点0498(宮古島)の速度ベクトルを各観測点の速度ベクトルから引き除去した。八重山諸島の位置する南琉球ブロックの回転成分はNishimura et al. (2004) によるアムールプレートに対するオイラー極と角速度の値を採用した。
このようにして得られた変位速度に対して、back-slipモデルに基づくフォワードモデリングを行い、固着域を推定した。地殻変動の計算では、半無限均質弾性体を仮定し、断層は矩形断層モデル(Okada , 1992)で表現した。 断層の大まかな位置として1771年八重山地震断層近辺の浅部と、SSE発生領域である深部の2か所に固着域を設定した。固着域の断層長、幅などのパラメータは、浅部は Nakamura (2009)、深部は Heki and Kataoka(2008)のSSE震源モデルの値を基準とした。そして、観測値との差が小さくなるように試行錯誤で断層の幅やすべり角、back-slipの大きさなどの調整を行った。
その結果、与那国島の1211、YNGJや石垣島のSRH1、INDAでは数十度以上ベクトルの方向がずれるなど観測値と差が大きかったものの、その他の点はよく観測値が説明された。浅部、深部のback-slipの値はそれぞれ9cm/yr、12cm/yrとなり、プレート沈み込み速度の~9cm/yrとの比較から固着が強いことが示唆される。以上から、琉球海溝のプレート境界の浅部とSSE発生領域である深部にプレート収束速度と同程度の大きさのすべり遅れが存在する可能性があることが分かった。