日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS05] 地殻変動

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.10

コンビーナ:加納 将行(東北大学理学研究科)、落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、富田 史章(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

17:15 〜 18:30

[SSS05-P03] GEONETで検出された南海トラフ沿いの長期的SSE

*小沢 慎三郎1、川畑 亮二1、宗包 浩志1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:長期的SSE、南海トラフ、GNSS

要旨

GNSS観測により、2018年以降、九州・四国・紀伊水道・志摩半島域で遷移的な地殻変動が観測された。観測された地殻変動から南海トラフ域のプレート間滑りを推定した。その結果、2018年6月頃から2019年8月頃にかけて、日向灘北部・豊後水道域でSSEが発生し、2019年初めころから2020年末にかけて四国中部でSSEが発生していること、2019年4月頃から2020年末にかけて紀伊水道でSSEが発生し、2019年初めころから2020年4月頃にかけて志摩半島でSSEの発生が推定された。その後2020年7月頃から日向灘北部及び南部でSSEが発生している。



はじめに

豊後水道では5~6年ほどの周期で繰り返し長期的SSEが発生してきた。四国中部では1977-1980年、1998年、2004年、2010年、2012年、2015年に発生している。紀伊水道の長期的SSEは、1996, 2000, 2016年に発生している。志摩半島SSEは、2017-2018年に発生していた。2018年6月頃から、九州北部で遷移的な地殻変動が発生し、その後2018年10月頃から豊後水道周辺で遷移的な地殻変動が発生している。また四国中部で2019年初めころから遷移変動が発生している。紀伊水道周辺では2019年4月頃から遷移的な地殻変動が観測され、志摩半島域では、2019年初めころから遷移的な地殻変動が捉えられている。本研究では、GNSSで観測された地殻変動のデータから、四国・九州・紀伊水道・志摩半島域のプレート間滑りの時空間変化を推定した。



解析手法

GNSSによる、観測点の座標時系列から、2013-2019年間の年周、半年周成分を推定し、元の座標時系列から取り除いた。周期成分を取り除いた時系列から九州・四国域、紀伊水道域の解析では2017-2018年間の一次トレンドを、志摩半島の解析では2016年3月から2017年3月の一次トレンドを差し引いている。このようにして得られた東西、南北、上下の座標時系列データを用いて時間依存のインバージョン解析を九州・四国域、紀伊水道域、志摩半島域で行った。観測点は南海トラフ域の観測点約250点を使用した。弘瀬他(2008)によりコンパイルされたフィリピン海プレートの形状を三角形要素で表して解析に使用している。グリッド間隔は、凡そ20-40km程としている。プレート境界面上のすべりの方向はプレート収束方向になるように拘束をかけた。



結果と考察

2018年6月頃から2019年8月頃にかけて日向灘北部・豊後水道でSSEが発生した。2019年1月頃から四国中部でSSEが発生し、2020年末まで継続している。紀伊水道SSEは、2019年4月頃から始まり2020年末まで継続している。志摩半島SSEは2019年初めころから発生し、2020年4月ころに終息している。日向灘北部及び南部では、2020年夏頃からSSEが発生し継続している。豊後水道SSEはMw6.9、四国中部SSEはMw6.1、紀伊水道SSEはMw6.1、志摩半島SSEはMw6.2程度と推定された。豊後水道SSEはおおよそ5-6年周期と調和的で、四国中部は、その繰り返し間隔はあまり周期的でないように見える。紀伊水道SSEも発生間隔は周期的に見えない。志摩半島SSEは繰り返し間隔はわかっておらず、2017-18年に発生していたものが2018年に収まって2019年に発生しており、一連のSSEなのか、別々のSSEなのかはっきりしない。日向灘北部のSSEは2018年から始まって2019年中頃に終息していたが、2020年にまた滑っており、過去のSSEと異なった滑り過程のように見える。