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[SSS06-04] 東北地方東方沖の大粒地震がプレート間かプレート内かを見分ける簡単な方法
キーワード:震度分布から震源タイプを決定する方法、プレート間地震とプレート内地震の震度分布での差異、日本の計測震度の便利な予測式、2021年2月13日福島県沖の地震、距離減衰式
Matsu’ura et al. (2020)の計測震度の距離減衰式は,地震がプレート間・プレート内・極浅い地殻内地震,と物理的に何れのタイプであるかによって用いる式が異なる.予め震度予測したい地点の直下にある沈み込むプレートの上面深度と,地点のVs30の値を用意して,地震の規模と震源位置が得られれば,簡単に各震源タイプの地震の場合の予測震度を算出できる.予測地点の地盤の増幅効果は,地震のタイプには依らず,地震規模と地点のVs30の値で決まり,スラブによる異常震域は,地点下のプレート上面深度で予測できる.
従ってこの式を用いれば,例えば2021年2月13日のように,MJMA7.3の地震が福島県沖で発生した様な場合,地震のMと震源位置とが求まれば,ただちに日本列島での予測震度分布図を作成できる.プレート間地震の場合と,プレート内地震の場合とでそれぞれの予測震度分布を作成して,実際の震度分布と比較すれば,地震のタイプが即座に決定できる.F-netによるメカニズム解や,余震分布図を数十分待つことなく,震度分布が得られる地震発生数分後には,地震タイプの判定が可能である.
Matsu’ura et al. (2020)に述べたように,プレート内地震の場合は、高い応力降下量によって比較的短周期の波による破損被害や,土砂災害を誘発し易い震度5以上の領域が広く出現し易い.極近傍が大きな震度となる極浅い地殻内地震や,津波や継続時間が長い震動による被害を想定すべきプレート間地震と,メカニズムや余震分布を得る前にスラブ内地震を区別できることは,M7を越えるような地震が海域で発生した場合に有用である.
折角全国に稠密に展開されリアルタイムでの情報が収集されている震度をさらに活用するべきである.また,距離減衰式を単なる回帰問題としてではなく,物理的なゆれ方を考慮した定式化によって求めれば、震源の物理に関した情報を引き出せる学術的余得があることも指摘したい.現在距離減衰式を求める際には国際的に地震固有誤差と,観測誤差とに誤差を二分して,地震規模Mや震源深さが複数の項に影響する複雑な定式化が流行しているようであるが,Mには0.3とも言われる決定誤差が避けがたく,Mを介して回帰問題が良性ではない非線形問題化しているのに線形手法で解く危険が危惧される.少なくともMによる誤差の拡大に留意が必要だろう.一方Matsu’ura et al. (2020)の計測震度の距離減衰式は,Mの多数項への介入を徹底的に避けたために,絶対誤差が比較的小さく実用的に震度が予測できている.簡単なので利用拡大を願っている.
謝辞 実測震度には防災科学技術研究所のK-NET, KiK-netのデータを利用させて頂きました.本研究は文部科学省からの委託事業である「地震調査研究推進本部の評価等支援事業」の一部として実施されました.
Reference: Matsu’ura, R. S., H. Tanaka, M. Furumura, T. Takahama, andA. Noda (2020). A New Ground-Motion Prediction Equation of Japanese Instrumental Seismic Intensities Reflecting Source Type Characteristics in Japan, Bull. Seismol. Soc. Am. 110, 2661–2692, doi: 10.1785/0120180337
従ってこの式を用いれば,例えば2021年2月13日のように,MJMA7.3の地震が福島県沖で発生した様な場合,地震のMと震源位置とが求まれば,ただちに日本列島での予測震度分布図を作成できる.プレート間地震の場合と,プレート内地震の場合とでそれぞれの予測震度分布を作成して,実際の震度分布と比較すれば,地震のタイプが即座に決定できる.F-netによるメカニズム解や,余震分布図を数十分待つことなく,震度分布が得られる地震発生数分後には,地震タイプの判定が可能である.
Matsu’ura et al. (2020)に述べたように,プレート内地震の場合は、高い応力降下量によって比較的短周期の波による破損被害や,土砂災害を誘発し易い震度5以上の領域が広く出現し易い.極近傍が大きな震度となる極浅い地殻内地震や,津波や継続時間が長い震動による被害を想定すべきプレート間地震と,メカニズムや余震分布を得る前にスラブ内地震を区別できることは,M7を越えるような地震が海域で発生した場合に有用である.
折角全国に稠密に展開されリアルタイムでの情報が収集されている震度をさらに活用するべきである.また,距離減衰式を単なる回帰問題としてではなく,物理的なゆれ方を考慮した定式化によって求めれば、震源の物理に関した情報を引き出せる学術的余得があることも指摘したい.現在距離減衰式を求める際には国際的に地震固有誤差と,観測誤差とに誤差を二分して,地震規模Mや震源深さが複数の項に影響する複雑な定式化が流行しているようであるが,Mには0.3とも言われる決定誤差が避けがたく,Mを介して回帰問題が良性ではない非線形問題化しているのに線形手法で解く危険が危惧される.少なくともMによる誤差の拡大に留意が必要だろう.一方Matsu’ura et al. (2020)の計測震度の距離減衰式は,Mの多数項への介入を徹底的に避けたために,絶対誤差が比較的小さく実用的に震度が予測できている.簡単なので利用拡大を願っている.
謝辞 実測震度には防災科学技術研究所のK-NET, KiK-netのデータを利用させて頂きました.本研究は文部科学省からの委託事業である「地震調査研究推進本部の評価等支援事業」の一部として実施されました.
Reference: Matsu’ura, R. S., H. Tanaka, M. Furumura, T. Takahama, andA. Noda (2020). A New Ground-Motion Prediction Equation of Japanese Instrumental Seismic Intensities Reflecting Source Type Characteristics in Japan, Bull. Seismol. Soc. Am. 110, 2661–2692, doi: 10.1785/0120180337