17:15 〜 18:30
[SSS06-P03] 2015年11月に沖縄トラフ北部で発生した地震の余震活動と背弧リフティング
キーワード:海底地震観測、沖縄トラフ北部、背弧リフティング、余震活動
2015年11月に薩摩半島西方沖でマグニチュード(M)7.1の地震(以下、本震)が発生した。この地震が位置する沖縄トラフ北部は背弧海盆拡大の初期段階にあると考えられており(例えば、Iwasaki et al., 1990, Nakahigashi et al., 2004)、本震-余震活動は背弧リフティングに伴い発生したと示唆される。活動域は東シナ海陸棚とトラフの遷移域に分布するとみられるが(Nishizawa et al., 2019)、既存の陸上観測点のみでは海底下の地震に対し観測点配置に偏りがあり、特に深さ方向の不確定性が高い問題を有する。一連の地震活動の原因となるテクトニクスを理解するためには、深さ精度のよい震源が不可欠である。そこで本研究では、長期観測型海底地震計(LOBS)のデータを用いて余震活動の震源再決定を行うとともに、得られた震源分布および発震機構から余震活動の特徴および沖縄トラフ北部における背弧リフティングについて考察した。
本研究では、鹿児島大学・九州大学の陸上観測点7点およびLOBS5台のデータを用いた。観測期間は2016年4月12日~2017年4月16日である。期間中に発生したM2.0以上(一部M2.5以上)の地震を気象庁一元化震源リストから抽出し、P波・S波の到達時を手動検測後、一次元速度構造を仮定して震源決定プログラムHYPOMH(Hirata and Matsu’ura, 1987)で初期震源453個を決定した。LOBSの観測点補正には、薩摩半島周辺の深さ80–180 kmで起きた稍深発地震のP波・PS変換波の到達時を用いた。初期震源に対し、陸上観測点も含め観測点補正値を適用して震源再決定を行い、最終的な解とした。発震機構解については、震源決定で用いた12観測点のP波初動の押し引き分布から、2枚の節面の走向・傾斜角を推定し決定した。
既存の気象庁震源では東西2つのクラスターが見られ、深さはいずれも約0–20 kmに広く分布し、震央は西側クラスターでは約30 km×約70 km、東側では約20 km四方の範囲に分布していた。本研究の最終的な震央は、気象庁に比べ幅の狭い明瞭な線状分布を示すとともに全体的に東寄りに決定された。特に西側では、南北に約70 km、東西に約30 km伸びる特徴的な2本の線状分布を呈する。深さ分布は、西側では10 km付近に集中し、東側では約0–15 kmに決まった。走時残差の中央値は観測点平均でP波が-0.043 s→-0.001 s、S波が0.421 s→-0.158 sと改善し、観測点補正により震源精度が向上した。震央分布の特徴から、西側の南北に並ぶ地震列(領域A)、東西に並ぶ地震列(領域B)、東側の地震列(領域C)に区分した。領域Aでは、時空間分布から活動は南から北に進んだと見られる。発震機構解は、北西-南東方向に張力軸を持つ正断層型の地震が卓越する。領域Bでは、全期間を通して継続的な活動が確認され、多くは北西-南東方向に張力軸を持つ左横ずれ断層型と見られる。領域Cでは、本震から約半年後に活発な活動が開始し、約2か月後に収束傾向を示した。発震機構解からは、領域Aと同様の正断層型の地震が多数発生していることが明らかになった。
領域AおよびCにおいて正断層型地震が卓越することは、反射法探査で確認された正断層構造(Nishizawa et al., 2019)と整合的である。したがって、領域AおよびCでの活動は、トラフ西側の主に上部地殻以浅で、リフティングによる地殻伸張のため発生したと考えられる。領域Bについては、発震機構が異なることから、東西に伸びる別の断層で発生した地震列であると考えられる。この地震列が長宗・中村(1986)の示す左横ずれ断層型地震を伴う構造線に一致するかは明らかでないが、背弧の拡大軸が余震域より西方にあり、かつ南側(領域A)に比べ北側(領域B)の拡大速度が小さいと仮定した場合、角田・後藤(2002)の提案するトラフ軸を横断する構造運動モデルによって、領域Bで左横ずれ断層型が卓越する理由を説明できると考える。
本研究では、鹿児島大学・九州大学の陸上観測点7点およびLOBS5台のデータを用いた。観測期間は2016年4月12日~2017年4月16日である。期間中に発生したM2.0以上(一部M2.5以上)の地震を気象庁一元化震源リストから抽出し、P波・S波の到達時を手動検測後、一次元速度構造を仮定して震源決定プログラムHYPOMH(Hirata and Matsu’ura, 1987)で初期震源453個を決定した。LOBSの観測点補正には、薩摩半島周辺の深さ80–180 kmで起きた稍深発地震のP波・PS変換波の到達時を用いた。初期震源に対し、陸上観測点も含め観測点補正値を適用して震源再決定を行い、最終的な解とした。発震機構解については、震源決定で用いた12観測点のP波初動の押し引き分布から、2枚の節面の走向・傾斜角を推定し決定した。
既存の気象庁震源では東西2つのクラスターが見られ、深さはいずれも約0–20 kmに広く分布し、震央は西側クラスターでは約30 km×約70 km、東側では約20 km四方の範囲に分布していた。本研究の最終的な震央は、気象庁に比べ幅の狭い明瞭な線状分布を示すとともに全体的に東寄りに決定された。特に西側では、南北に約70 km、東西に約30 km伸びる特徴的な2本の線状分布を呈する。深さ分布は、西側では10 km付近に集中し、東側では約0–15 kmに決まった。走時残差の中央値は観測点平均でP波が-0.043 s→-0.001 s、S波が0.421 s→-0.158 sと改善し、観測点補正により震源精度が向上した。震央分布の特徴から、西側の南北に並ぶ地震列(領域A)、東西に並ぶ地震列(領域B)、東側の地震列(領域C)に区分した。領域Aでは、時空間分布から活動は南から北に進んだと見られる。発震機構解は、北西-南東方向に張力軸を持つ正断層型の地震が卓越する。領域Bでは、全期間を通して継続的な活動が確認され、多くは北西-南東方向に張力軸を持つ左横ずれ断層型と見られる。領域Cでは、本震から約半年後に活発な活動が開始し、約2か月後に収束傾向を示した。発震機構解からは、領域Aと同様の正断層型の地震が多数発生していることが明らかになった。
領域AおよびCにおいて正断層型地震が卓越することは、反射法探査で確認された正断層構造(Nishizawa et al., 2019)と整合的である。したがって、領域AおよびCでの活動は、トラフ西側の主に上部地殻以浅で、リフティングによる地殻伸張のため発生したと考えられる。領域Bについては、発震機構が異なることから、東西に伸びる別の断層で発生した地震列であると考えられる。この地震列が長宗・中村(1986)の示す左横ずれ断層型地震を伴う構造線に一致するかは明らかでないが、背弧の拡大軸が余震域より西方にあり、かつ南側(領域A)に比べ北側(領域B)の拡大速度が小さいと仮定した場合、角田・後藤(2002)の提案するトラフ軸を横断する構造運動モデルによって、領域Bで左横ずれ断層型が卓越する理由を説明できると考える。