11:15 〜 11:30
[SSS07-03] エアガン-OBS探査による新潟・山形沖の深部地殻構造プロファイル:リバースタイム法による反射波イメージング
キーワード:エアガン-OBS探査、深部地殻構造、反射波プロファイル、リバースタイムマイグレーション、日本海
海域の地殻構造調査で行われるエアガン-海底地震計(OBS)探査では、屈折波や広角反射波の走時または波形を利用して、地殻内の速度構造を推定するのが一般的である。一方、受振点の設置間隔が広く重合効果を大きく期待できないため、反射波を直接的に用いた地殻構造のイメージングは一般的には行われていない。しかし、長大オフセットによるデータ取得の特性を活かし、地殻深部の構造や地殻マントル境界(モホ面)、さらにマントル内の反射波を捉えられる場合があり、それらを利用した反射波プロファイルの構築は、深部地殻構造理解において重要である。また、海域の調査では、海況や気象条件、調査機器や船舶の都合等により、同一測線で海上反射法地震探査を実施できないことがある。そのような場合に、エアガン-OBS探査から地下構造の反射波プロファイルを得られることは有益である。
本研究では、リバースタイムマイグレーション(Reverse time migration, RTM)による反射波解析を、海洋研究開発機構が日本海で取得したエアガン-OBS探査データに適用し、深部地殻構造の反射波プロファイルを試みた。RTM法では、波動方程式に基づき、発震点から震源波形を順方向に伝播した波動場と、受振点から観測波形を逆方向に伝播した波動場をモデリングして、同一時刻の波動場の相関を時間積分することにより反射面を結像させる。波線理論に基づく方法に比べて計算時間を要するものの、複雑な構造に対して高品質なプロファイルを得られる。エアガン-OBS探査では、相反原理により、海底地震計とエアガン発震点を、それぞれ計算上の発震点と受振点に置き換えることで効率的に計算を行う。
本研究で適用対象とするのは、新潟県・山形県沖の日本海でデータ取得されたEMJS1003(約297km, 2010年取得)とSJ1901(約366km, 2019年取得)の2つの測線で、海岸から約220kmで互いに交差している。エアガンによる発震はいずれも200m間隔で行われ、OBSはEMJS1003測線では5km間隔、SJ1901測線では沿岸から沖合へ2km・8km・16kmの間隔で変則的に設置された。多くのOBS記録上にモホ面からの明瞭な反射を確認することができた。EMJS1003測線では、ストリーマーケーブルを用いた反射法地震探査が実施されている一方、SJ1901測線では気象条件により反射法地震探査を実施できなかった。それぞれの測線では、OBSデータの走時トモグラフィによる速度構造が得られており(Sato et al., 2014, JGR; 野ほか, 2020, 地震学会)、RTM法の波動場モデリングに用いた。
解析の結果、いずれの測線においても、モホ面の明瞭にイメージングされた反射波プロファイルを得られた。モホ面深度について、大和海盆では海面からの深度約20km、佐渡海嶺と最上トラフを経て沿岸域にかけて深度約30kmまで深くなる様子を追跡でき、これらはOBSデータの走時解析による地殻の厚さ(Sato et al., 2014)と調和的な結果であった。また、EMJS1003測線では、海上反射法探査で明瞭に捉えるのが難しかったモホ面を、エアガン-OBS探査の反射波により直接イメージングできる好例であった。一方、MCSデータがなくOBS間隔の広いSJ1901測線でも同様に、連続的なモホ面の反射波プロファイルを得られた。これらの結果から、受振点間隔の異なるエアガン-OBS探査のデータに対しても、本解析手法を適用できる可能性を示すことができた。今後は、波形インバージョンによる速度モデルの改善のほか、ミラーイメージングや地震波干渉法に基づく多重反射波を用いた解析により、堆積層から地殻内部構造の詳細な反射波プロファイルの構築をめざす。反射波プロファイルおよび速度構造が、海上反射法探査とエアガン-OBS探査により相補的に改善されることで、地下深部の構造についてよりよい理解につながることが期待できる。
本研究では、リバースタイムマイグレーション(Reverse time migration, RTM)による反射波解析を、海洋研究開発機構が日本海で取得したエアガン-OBS探査データに適用し、深部地殻構造の反射波プロファイルを試みた。RTM法では、波動方程式に基づき、発震点から震源波形を順方向に伝播した波動場と、受振点から観測波形を逆方向に伝播した波動場をモデリングして、同一時刻の波動場の相関を時間積分することにより反射面を結像させる。波線理論に基づく方法に比べて計算時間を要するものの、複雑な構造に対して高品質なプロファイルを得られる。エアガン-OBS探査では、相反原理により、海底地震計とエアガン発震点を、それぞれ計算上の発震点と受振点に置き換えることで効率的に計算を行う。
本研究で適用対象とするのは、新潟県・山形県沖の日本海でデータ取得されたEMJS1003(約297km, 2010年取得)とSJ1901(約366km, 2019年取得)の2つの測線で、海岸から約220kmで互いに交差している。エアガンによる発震はいずれも200m間隔で行われ、OBSはEMJS1003測線では5km間隔、SJ1901測線では沿岸から沖合へ2km・8km・16kmの間隔で変則的に設置された。多くのOBS記録上にモホ面からの明瞭な反射を確認することができた。EMJS1003測線では、ストリーマーケーブルを用いた反射法地震探査が実施されている一方、SJ1901測線では気象条件により反射法地震探査を実施できなかった。それぞれの測線では、OBSデータの走時トモグラフィによる速度構造が得られており(Sato et al., 2014, JGR; 野ほか, 2020, 地震学会)、RTM法の波動場モデリングに用いた。
解析の結果、いずれの測線においても、モホ面の明瞭にイメージングされた反射波プロファイルを得られた。モホ面深度について、大和海盆では海面からの深度約20km、佐渡海嶺と最上トラフを経て沿岸域にかけて深度約30kmまで深くなる様子を追跡でき、これらはOBSデータの走時解析による地殻の厚さ(Sato et al., 2014)と調和的な結果であった。また、EMJS1003測線では、海上反射法探査で明瞭に捉えるのが難しかったモホ面を、エアガン-OBS探査の反射波により直接イメージングできる好例であった。一方、MCSデータがなくOBS間隔の広いSJ1901測線でも同様に、連続的なモホ面の反射波プロファイルを得られた。これらの結果から、受振点間隔の異なるエアガン-OBS探査のデータに対しても、本解析手法を適用できる可能性を示すことができた。今後は、波形インバージョンによる速度モデルの改善のほか、ミラーイメージングや地震波干渉法に基づく多重反射波を用いた解析により、堆積層から地殻内部構造の詳細な反射波プロファイルの構築をめざす。反射波プロファイルおよび速度構造が、海上反射法探査とエアガン-OBS探査により相補的に改善されることで、地下深部の構造についてよりよい理解につながることが期待できる。