17:15 〜 18:30
[SSS07-P01] 北海道火山フロント周辺における地震波の散乱・減衰構造の局所的変動
キーワード:微細不均質性、散乱、減衰、火山フロント
沈み込み帯では深部に斜めに沈み込む冷たく硬いプレートとその上に部分融解のマントルウェッジの対比で、極めて強い水平方向の不均質性構造がある。この不均質性構造は、地震波とりわけ高周波S波の観測において、火山フロントで不連続的な変化を生む。関東・東北地方のこれまでの研究から、前弧側ではどの周波数帯域でも大きな後続波がないのに対して、背弧側ではマントルウェッジの減衰効果により高周波直達波は非常に弱いが、周辺での微細不均質性による散乱効果で直達波から遅れた長い継続時間を持つ波群が観測される。このような特徴から微細不均質性の空間分布や減衰の周波数依存性などが推定されている(e.g., Shiina et al., 2021)。これに対して、北海道の沈み込み帯では火山フロントを境界にした違いはあるが、波形の特徴は複雑で、かつ地域によって大きく変動する。本研究では北海道における1~24HzのS波波形記録の特徴をまとめ、この地域での散乱・減衰構造の空間変動を調べた。北海道直下の太平洋プレート内の深さ150-200kmのやや深発地震における、Hi-net観測点の波形記録を用いる。主に4つの周波数帯のバンドパスフィルター波形のエンベロープを取り、直達波・コーダ波・後続波を含む複雑なS波部分の特徴を解析した。
解析の結果、関東・東北地方のような火山フロントを境界とする波形の特徴の大きな違いはあるが、火山フロントに沿っての地域毎にもかなり異なる特徴を有することが明らかになった。道東地域では、背弧側で8Hz以上の高周波帯域で直達波部分が欠落し、20秒以上の遅延を持った波群が見られる。4Hz以下の低周波数帯域では直達波部分が観測されるので、見かけでは周波数成分の違う2つの波群でS波が構成されており、関東地域で見られるような紡錘形状とは大きく異なる。高周波帯域だけ減衰する、背弧側のマントルウェッジが火山フロント付近で突然消滅していることを示唆する。中央部の日高山脈・大雪山山系の領域では、高周波領域でも継続時間が比較的短く、また弱いながらも直達波が見られる。背弧側の高減衰領域は弱く、沈み込むプレートや前弧側の地殻には大きな散乱を起こす微細不均質性が弱いと考えられる。これらの山系の西側の石狩平野東縁部を含む領域では、高周波領域でも継続時間は50秒以上と長いが直達波からコーダ状を示す。ただし、100秒以上に明瞭な別の波群が見られ、何らかの構造境界からの反射/散乱波と考えられる。その遅延時間から火山フロント付近に存在することが推定される。
このように北海道の火山フロントに沿っての領域では、背弧 vs 前弧という単純な区分けでは不十分で、非常にシャープな境界を持つ減衰領域を含めて、火山フロントに沿った変動も考慮した3次元的な微細不均質性構造を前提として、今後解析する必要性が明らかになった。
解析の結果、関東・東北地方のような火山フロントを境界とする波形の特徴の大きな違いはあるが、火山フロントに沿っての地域毎にもかなり異なる特徴を有することが明らかになった。道東地域では、背弧側で8Hz以上の高周波帯域で直達波部分が欠落し、20秒以上の遅延を持った波群が見られる。4Hz以下の低周波数帯域では直達波部分が観測されるので、見かけでは周波数成分の違う2つの波群でS波が構成されており、関東地域で見られるような紡錘形状とは大きく異なる。高周波帯域だけ減衰する、背弧側のマントルウェッジが火山フロント付近で突然消滅していることを示唆する。中央部の日高山脈・大雪山山系の領域では、高周波領域でも継続時間が比較的短く、また弱いながらも直達波が見られる。背弧側の高減衰領域は弱く、沈み込むプレートや前弧側の地殻には大きな散乱を起こす微細不均質性が弱いと考えられる。これらの山系の西側の石狩平野東縁部を含む領域では、高周波領域でも継続時間は50秒以上と長いが直達波からコーダ状を示す。ただし、100秒以上に明瞭な別の波群が見られ、何らかの構造境界からの反射/散乱波と考えられる。その遅延時間から火山フロント付近に存在することが推定される。
このように北海道の火山フロントに沿っての領域では、背弧 vs 前弧という単純な区分けでは不十分で、非常にシャープな境界を持つ減衰領域を含めて、火山フロントに沿った変動も考慮した3次元的な微細不均質性構造を前提として、今後解析する必要性が明らかになった。