日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS07] 地殻構造

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.11

コンビーナ:山下 幹也(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

17:15 〜 18:30

[SSS07-P04] S波スプリッティング解析による東北地方の地震波速度異方性測定(3)

*水田 達也1、岡田 知己1、Savage Martha2、高木 涼太1、吉田 圭佑1、酒井 慎一3、大園 真子3,9、小菅 正裕4、山中 佳子5、片尾 浩6、松島 健7、八木原 寛8、中山 貴史1、平原 聡1、河野 俊夫1、松澤 暢1、2011年東北地方太平洋沖地震 緊急観測グループ (1.東北大学大学院理学研究科地震噴火予知研究観測センター、2.Victoria University of Wellington、3.東大地震研、4.弘前大・理工、5.名古屋大・環境、6.京大防災研、7.九州大・理、8.鹿児島大学、9.北大・理)

キーワード:地震波速度異方性

本研究では,地殻中の異方性媒質を地震波が通る時にS波が速いS波と遅いS波に分裂する現象であるS波スプリッティングを用いて,東北地方のS波偏向異方性の測定を行った.手法として Savage et al.(2010)で提案されているMFAST(Multiple Filter Automatic Splitting Technique)を用いた.この手法では各観測点で観測される地震波形の3成分を入力することにより,事前に用意された14個のバンドパスフィルターから最適なものを選択して適用した後,SC91(Silver and Chan, 1991)の手法により異方性の方向と大きさを測定する.多数の時間窓で得られた測定値にクラスター分析(Teanby et al., 2004)を用いることにより品質評価も行われる.MFASTではこの一連の流れが自動化されているため,従来の方法と比べて容易に多数のデータを処理して客観的でかつ信頼性の高い測定値を得ることができる.

解析は東北地方全域で行い,特に秋田県内陸部の地震の多発域でさらに詳細な解析を行った.データとしては,2011年東北地方太平洋沖地震緊急合同観測などの臨時地震観測データを利用した.東北地方全域の各観測点で測定された異方性の方向には南北方向と東西方向のどちらも見られるが,岩手から宮城にかけての太平洋沿岸では南北方向の割合が大きく,中央の内陸部では東西方向の割合が大きい傾向となった.また,沈み込むプレート内の深い地震と地殻内の浅い地震で測定値の傾向が異なる観測点も存在した.異方性の大きさを示す遅延時間は地震が群発している領域で大きくなる傾向が見られた.
秋田県内陸部では、2011年東北沖地震の前後で解析を行った.全体的に北東−南西方向から南北方向の異方性が卓越しており,東北沖地震前後で方向の顕著な変化はみられなかった.ただし,地震が特に群発している領域周辺では観測点により卓越する方向が異なり,異方性が小さなスケールで変化していることが示唆される.秋田県内陸部で得られた遅延時間は,東北沖地震前後ともに,東北地方全域と比べて全体的に大きい値を示していた.東北沖地震前後で比較すると東北沖地震後に大きくなった観測点と小さくなった観測点がともに見られた.