日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS07] 地殻構造

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.11

コンビーナ:山下 幹也(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

17:15 〜 18:30

[SSS07-P09] JAMSTEC地殻構造探査データベースサイトの活用分析

*海宝 由佳1、三浦 誠一1、仲西 理子1、野 徹雄1、瀧澤 薫1、中村 恭之1、藤江 剛1、尾鼻 浩一郎1、小平 秀一1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター)

キーワード:MCS、OBS、データベース

JAMSTECでは地殻構造調査などで取得されたデータとその論文化に伴う成果データについて、Webサイトを通じて公開とデータの提供を行っている。その機能や利用者の動向について紹介する。
このサイトの役割としては、地殻構造探査データの公開に加えて、研究成果の普及、利活用がある。まずデータ公開であるが、探査データは、モラトリアム終了後に公開する必要がある。探査データを一括管理し、データ提供依頼にこのWebサイトを通じて対応することで、個別調査航海の乗船研究者や研究担当者が個別に対応することなく、提供履歴についても管理が可能となっている。なお、地殻構造調査ではデータ解析に時間を要する事から、論文化に必要なモラトリアム期間に原則2年を設定しているが、論文化の済んだデータなど先行して公開の必要がある場合は、Webサイトにも、問い合わせ可能にある事を記載する。また、海域で取得したデータのみならず、船上および論文化の過程で派生した処理データについても、依頼に応じて提供する。更に、MCS断面画像やOBS速度構造のグリッドデータなど、解析結果も可能な範囲で公開している。解析ソフトや関連するデータベースのリンク、プレス記事のリンクのページもあり、また、関連の文献リストには、海域と関連航海の名称を併記している。サイトのURLとDOIを以下に示す。
http://www.jamstec.go.jp/obsmcs_db/j/
JAMSTEC (2004) JAMSTEC Seismic Survey Database. JAMSTEC. doi:10.17596/0002069
Webサイトで公開されるのは海域での地殻構造調査で取得されるデータで、主にマルチチャンネル反射法地震探査(MCS)データ、海底地震計(OBS)を用いた地震探査データと自然地震観測データである。MCSデータのフォーマットはSEG-D形式と SEG-Y形式、OBSを用いた地震探査データはSEG-Y形式、OBSを用いた自然地震観測データはSACまたはWIN形式で提供される。これらの提供データは、時折数TBに達するなど容量が巨大になりがちなため、Web経由で提供するのは観測の概要に関するファイルや断面図の簡易なイメージであり、実際のデータ提供は、簡易審査を経て、ファイル転送や記録媒体などのオフラインで行っている。提供依頼の手順は、Webサイトにて航海情報や測線名、データ種別、断面イメージなどを確認した上で、サイトのデータ利用申請フォームから行う。受付後は、内部審査を経て、データの提供が行われる。オフライン提供は対応に数日を要し、手間もかかるものであるが、内部審査が可能、巨大な容量に対応でき、航海や測線で事情が違う場合も個別対応が可能で、提供先の把握も容易である。
利用者動向について述べる。Webサイトの開設は2004年であり、17年ほどデータ提供を行っていて、2020年現在提供数は150余り、年毎に増減はあるが、年9件程度の提供をしている。国内の一般の方(教員、国研、企業)の比率が多く、学生の方は外国からは17%程度、内外合わせて比率は15%程度である。依頼数に、季節による大きな変動は見られない。外国からの依頼については、年ごとに増減はあるが、2010年代より徐々に増えている。データ提供のうち、構造解析や震源決定などRawデータや処理済みデータ再解析などの利用のみならず、連続記録データを、陸上のデータセットの補完として微動解析や遠地地震などに利用するケースや、手法開発などのテストデータとして構造データを利用するケースも多い。
研究成果物や、派生データ(処理済みのMCS画像ファイルやOBS速度構造グリッド)の利用も多く、派生データの利用者には、構造探査を専門としないユーザーも多く含まれる。MCS断面の画像を掘削プロポーザルに利用したり、航海計画策定のために既存の断面を参照、防災関連など国の委託調査でMCS断面を広く収集するなどの用途も目立つ。OBSの速度構造に関しては、強振動モデルなど利用者手持ちの広域速度モデルをブラッシュアップするために参照されるケースが見られる。
このようなニーズの動向や提供元の研究プロジェクトの変化を分析し、Webサイトの様式やデータ提供システムなどの見直しに役立てて行きたい。