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[SSS08-17] 摩擦実験と数値計算による断層複合面構造の発達過程の物理的描像の解明
キーワード:摩擦実験、数値実験、複合面構造
地震時の断層滑り挙動の理解に向けて,これまでに秒速ナノメートルからメートルオーダーの範囲における数多くの摩擦実験が実施されている.また,摩擦実験後の剪断帯に発達する微小構造の観察も行われてきた.しかし,同一岩種に対して広い速度範囲での実験報告は極めて少ない.そこで本研究では,房総半島江見層群から採取した火山砕屑性堆積物の粉末試料を用いて,回転式摩擦実験を実施した.実験条件は,乾燥および水飽和状態,滑り速度 0.0002–1 m/s,封圧 1.5–3.0 MPa,滑り量 10 m とした.また,実験後試料の薄片を作成し, 微小構造観察を実施した.加えて,摩擦実験中の粒子の挙動や粒子にかかる力の状態を粒子単位および時間ステップ単位で詳細に解析することを目的として,個別要素法 (DEM) を用いて摩擦実験を再現した数値計算を行った.実験の結果,乾燥条件では 0.1 m/s 以上,水飽和条件では 0.01 m/s 以上において滑り弱化を示した.薄片観察の結果,乾燥および水飽和両条件において,滑り弱化を示した速度域では剪断方向と平行な Y 面,滑り弱化を示さなかった速度域では剪断方向と斜交する R1 面の発達が確認された.数値計算の結果,滑り速度 0.1 m/s 以上では隣接粒子間の相対変位が大きい部分が剪断方向に平行に存在し,0.01 m/s 以下では粒子にかかる力が大きい領域が局所的に分布していた.以上の摩擦実験と微小構造観察,および数値計算の結果から,剪断帯に発達する微小構造には滑り速度依存性があることが示唆された.しかし,江見層群の火山砕屑性堆積物の試料には火山性ガラスが含まれており,これが複合面構造の発達に影響を与えているか不明である.そこで,複合面構造の発達と滑り速度との関係性をより精査するために,試料として3種類の石英砂(シグマアルドリッチ製・和光製・サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を用いた摩擦実験を行った.実験は全て乾燥条件下で,封圧 2 MPa,滑り速度 1 m/s および 0.01 m/s,滑り量 10 m 以上で実施した.また,0.01 m/s での実験後試料の薄片を作成して微小構造観察を行った.3種の試料すべてにおいて,滑り速度 1 m/s では滑り弱化を起こし,0.01 m/s では滑り強化の後,定常状態に達した.薄片観察の結果,シグマアルドリッチ製と和光製の石英砂では P 面と調和的な粒子配列が見られ,和光製ではガウジと母岩の境界付近に剪断方向と並行な構造 (boundary shear) の発達も確認された.一方,サーモフィッシャーサイエンティフィック製では明瞭な変形構造は認められなかった.また,和光製の石英砂では変形が回転側の母岩ガウジ境界に集中しており,今後の実験にはシグマアルドリッチ社の石英砂を使用することに決定した.発表では,シグマアルドリッチ社の石英砂を遊星型ボールミルで 20 μm程度の粒径に精製した試料を用いて,広い速度レンジでの摩擦係数の変化と実験後試料の微小変形構造の発達との対応について議論する予定である.