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[SSS09-01] デジタル岩石物理とエネルギー論的アプローチによる岩石亀裂の弾性波速度推定
キーワード:デジタル岩石物理、弾性波速度、浸透率、S波スプリッティング、格子ボルツマン法
近年,地震波速度モニタリング手法の向上により,地震のように応力変化の大きいイベントだけでなく,地熱貯留層などの緩やかな応力変化においても速度変化が検知されるようになった。このような速度変化は一般に空隙率やクラック密度の変化によって解釈されるが,地震源や貯留層を形成するような断層帯における速度変化には亀裂の開口状態も影響していると考えられる。亀裂開口幅が変化すれば,それに伴い流体流動挙動も変化するため,断層帯における速度変化は岩盤の水理特性(亀裂浸透率など)との関連が期待される。しかし亀裂浸透率と開口幅の関係はよく知られている一方で,これらと弾性波速度の関係を調べた研究は未だない。開口幅と弾性波速度の定量的な関係が明らかになれば,地震波速度モニタリングによって地下亀裂の開口幅や浸透率の変化が予測できる可能性がある。本研究では,亀裂岩石の弾性波速度推定手法を開発し,浸透率変化と関連付ける岩石物理モデルの確立を目指す。実験では開口幅の変化を計測することが困難であるため,実岩石試料のデジタルデータを利用したアプローチ(デジタル岩石物理)を試みた。
デジタル試料を作成するために,まず地熱地域で得られた天然一枚亀裂(35 mm x 70 mm)の表面粗さ特性を解析した。得られた粗さ特性をベースにした非整数ブラウン運動から3種類の寸法の異なる数値亀裂(24 mm, 48 mm, 96 mm四方)を用意した。これらの数値亀裂の平均開口幅をそれぞれ0.05–0.2 mmと変化させてデジタル岩石(解像度0.1 mm,厚さ10 mm)を作成し,有限要素法解析によって弾性定数を推定した。有限要素法解析では,定ひずみ条件における弾性エネルギーを計算し,得られたエネルギーのひずみに関する2階微分によって弾性定数を計算した。また同一のデジタル亀裂モデルに対して格子ボルツマン法を用いた流体流動シミュレーションを実施し,得られた浸透率と弾性波速度との関連を調べた。
一枚亀裂の数値シミュレーションの結果,開口幅の増加により最大で0.2km/sのP波速度減少および0.15km/sのS波速度減少が確認された。またこれらの速度変化が亀裂サイズに依存しないことも明らかとなり,亀裂サイズに依らない浸透率–速度関係式を得ることができた。一方で,一枚亀裂を積層した複数亀裂モデルでは,亀裂密度によって速度変化が生じることも明らかとなり,フィールド観測と結びつけるためには亀裂密度を推定する必要がある点も明らかとなった。亀裂面に直行する弾性波速度成分のほかS波スプリッティングについても浸透率との間に類似の相関が確認された。
デジタル試料を作成するために,まず地熱地域で得られた天然一枚亀裂(35 mm x 70 mm)の表面粗さ特性を解析した。得られた粗さ特性をベースにした非整数ブラウン運動から3種類の寸法の異なる数値亀裂(24 mm, 48 mm, 96 mm四方)を用意した。これらの数値亀裂の平均開口幅をそれぞれ0.05–0.2 mmと変化させてデジタル岩石(解像度0.1 mm,厚さ10 mm)を作成し,有限要素法解析によって弾性定数を推定した。有限要素法解析では,定ひずみ条件における弾性エネルギーを計算し,得られたエネルギーのひずみに関する2階微分によって弾性定数を計算した。また同一のデジタル亀裂モデルに対して格子ボルツマン法を用いた流体流動シミュレーションを実施し,得られた浸透率と弾性波速度との関連を調べた。
一枚亀裂の数値シミュレーションの結果,開口幅の増加により最大で0.2km/sのP波速度減少および0.15km/sのS波速度減少が確認された。またこれらの速度変化が亀裂サイズに依存しないことも明らかとなり,亀裂サイズに依らない浸透率–速度関係式を得ることができた。一方で,一枚亀裂を積層した複数亀裂モデルでは,亀裂密度によって速度変化が生じることも明らかとなり,フィールド観測と結びつけるためには亀裂密度を推定する必要がある点も明らかとなった。亀裂面に直行する弾性波速度成分のほかS波スプリッティングについても浸透率との間に類似の相関が確認された。