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[SSS10-P02] 医療用X線CTによるCT値を用いた断層の最新活動領域の認定
キーワード:医療用X線CT、CT値、密度、有効原子番号、堅岩に対する岩石密度比、断層岩の分類
第四紀の被覆層のない基盤岩中に発達する断層破砕帯の中でも最新活動領域を抽出することは,断層の活動性の評価やスリップデータから求められる最新応力場の復元および地震防災の観点からも重要である.断層帯のexhumationを考慮すると,断層の最新活動領域は,断層の最小深度における活動痕跡に対応すると考えられることから,断層岩において最も脆弱な領域,換言すれば母岩に対する密度低下が最大の領域であることが想定される.しかし,断層岩の密度を測定することは容易ではないことから,筆者らは,物質の3次元内部構造に関するデータを非破壊で簡便に取得できる医療用のX線CTを活用し,密度と有効原子番号の関数であるCT値から断層帯の最新活動領域を認定することを試みた.
X線CTは,物質の3次元内部構造を非破壊で観察・解析することが可能な技術であり,医療用の画像診断技術として1972年にHounsfieldによって実用化されて以降,地球科学分野においても研究成果が多数報告されている (例えばGeet et al., 2000; Ueta et al., 2000).CT画像のコントラストを決めるCT値 (単位はHounsfield) は,次式で示される.
NCT = 1000 × (μ − μw)/μw
ただし,μ = ρ (a + bZ3.8/E3.2) (Wellington and Vinegar, 1987).
(μ:試料の線減弱係数,μw:水の線減弱係数, r:試料の密度 ,Z:試料の有効原子番号,E:撮影時のX線エネルギー (keV) ,a:クライン-仁科係数,b:9.8 × 10-24)
CT画像は,各ピクセルが有するCT値を画像化したものであるが,X線撮影や画像の再構成による諸問題による偽像が含まれるため,正確なCT値の把握やCT値による定量的評価を行う際には,偽像,特に線質硬化に対する考察が必要となる.
岩森ほか (2020) は,密度と有効原子番号が既知である6種類の鉱物試料を対象とし,医療用CTにより撮影したCT画像を用いて検討した結果,線質硬化の影響軽減に有効なCT値を定義した上で,1種類の管電圧で撮影したCT画像のCT値から密度と有効原子番号を直接推定する手法を提案した.
そこで筆者らは,活断層および非活断層の断層露頭の基盤岩中で採取した断層岩およびそれぞれの母岩 (堅岩) を対象とし,まず,断層岩の密度,空隙率および有効原子番号の特徴について整理した.次に,医療用CTを用いて取得したCT画像から線質硬化の影響を軽減したCT値を算出し,岩森ほか (2020) の手法を用いてCT値,密度および有効原子番号の関係について整理した結果,以下の結論を得た.
(1) 断層岩の密度は最新活動面に近づくにつれて減少し,空隙率は岩種や断層の違いによらず密度が1 g/cm3減少するにつれて空隙率が約24%増大する.
(2) 堅岩および断層岩の密度と有効原子番号には,断層ごとおよび岩種ごとに固有の正の相関関係が認められる.
(3) 1種類の管電圧 (140 kV) のCT画像より算出したCT値の最頻値NCTMは,割れ目の影響や有効原子番号の大きい鉱物の影響を回避した岩石試料の代表値として有効である.また,密度との関係を整理することにより,NCTM から密度と有効原子番号を算出することができる.
(4) 断層の最新活動領域は,CT値および堅岩に対する密度比が最も小さい領域として認定できる.
引用文献
Geet, M.V., Swennen, R., Wevers, M., 2000, Sediment. Geol., 132, 25-36
岩森暁如・高木秀雄・朝日信孝・杉森辰次・中田英二・野原慎太郎・上田圭一, 2020, 岩鉱, 49, 101-117.
Ueta, K., Tani, K., Kato, T., 2000, J. Eng. Geol., 56, 197-210.
Wellington, S. L., and Vinegar, H. J., 1987, J. Pet. Technol., 39, 885-898
X線CTは,物質の3次元内部構造を非破壊で観察・解析することが可能な技術であり,医療用の画像診断技術として1972年にHounsfieldによって実用化されて以降,地球科学分野においても研究成果が多数報告されている (例えばGeet et al., 2000; Ueta et al., 2000).CT画像のコントラストを決めるCT値 (単位はHounsfield) は,次式で示される.
NCT = 1000 × (μ − μw)/μw
ただし,μ = ρ (a + bZ3.8/E3.2) (Wellington and Vinegar, 1987).
(μ:試料の線減弱係数,μw:水の線減弱係数, r:試料の密度 ,Z:試料の有効原子番号,E:撮影時のX線エネルギー (keV) ,a:クライン-仁科係数,b:9.8 × 10-24)
CT画像は,各ピクセルが有するCT値を画像化したものであるが,X線撮影や画像の再構成による諸問題による偽像が含まれるため,正確なCT値の把握やCT値による定量的評価を行う際には,偽像,特に線質硬化に対する考察が必要となる.
岩森ほか (2020) は,密度と有効原子番号が既知である6種類の鉱物試料を対象とし,医療用CTにより撮影したCT画像を用いて検討した結果,線質硬化の影響軽減に有効なCT値を定義した上で,1種類の管電圧で撮影したCT画像のCT値から密度と有効原子番号を直接推定する手法を提案した.
そこで筆者らは,活断層および非活断層の断層露頭の基盤岩中で採取した断層岩およびそれぞれの母岩 (堅岩) を対象とし,まず,断層岩の密度,空隙率および有効原子番号の特徴について整理した.次に,医療用CTを用いて取得したCT画像から線質硬化の影響を軽減したCT値を算出し,岩森ほか (2020) の手法を用いてCT値,密度および有効原子番号の関係について整理した結果,以下の結論を得た.
(1) 断層岩の密度は最新活動面に近づくにつれて減少し,空隙率は岩種や断層の違いによらず密度が1 g/cm3減少するにつれて空隙率が約24%増大する.
(2) 堅岩および断層岩の密度と有効原子番号には,断層ごとおよび岩種ごとに固有の正の相関関係が認められる.
(3) 1種類の管電圧 (140 kV) のCT画像より算出したCT値の最頻値NCTMは,割れ目の影響や有効原子番号の大きい鉱物の影響を回避した岩石試料の代表値として有効である.また,密度との関係を整理することにより,NCTM から密度と有効原子番号を算出することができる.
(4) 断層の最新活動領域は,CT値および堅岩に対する密度比が最も小さい領域として認定できる.
引用文献
Geet, M.V., Swennen, R., Wevers, M., 2000, Sediment. Geol., 132, 25-36
岩森暁如・高木秀雄・朝日信孝・杉森辰次・中田英二・野原慎太郎・上田圭一, 2020, 岩鉱, 49, 101-117.
Ueta, K., Tani, K., Kato, T., 2000, J. Eng. Geol., 56, 197-210.
Wellington, S. L., and Vinegar, H. J., 1987, J. Pet. Technol., 39, 885-898