17:15 〜 18:30
[SSS10-P05] 重力異常解析による眉丈山第2断層の断層構造の推定
キーワード:密度構造、重力勾配テンソル、2次元タルワニ法、逆断層
はじめに
能登半島中央部に位置する眉丈山断層帯は、邑知平野の北西縁に沿って北東―南西方向に延びる北西側隆起の逆断層であり、眉丈山第2断層と徳田北方の断層から成る(地震調査推進研究本部地震調査委員会, 2006)。眉丈山第2断層では反射法地震探査(下川ほか, 2002)やトレンチ調査(吾妻ほか, 2005)がなされており、断層に沿うような重力異常の急変帯の存在が報告されている(須藤ほか,2004)。重力異常解析は断層構造推定の有効な手法であり、近年では重力勾配テンソルを用いた解析により、断層構造の情報が得られている(e.g., Kusumoto, 2016, 2017; Matsumoto et al., 2016; Hiramatsu et al., 2019)。本講演では、眉丈山第2断層周辺での稠密な重力測定により得られた重力異常および重力勾配テンソルを用いた解析から推定される眉丈山第2断層の断層構造について考察する。
データ
本研究では、金沢大学によって測定された既往データ、Yamamoto et al., (2011)、産総研地質調査総合センター(2013)の重力データを使用する。さらに眉丈山第2断層周辺において、これまで測定点が少なかった地域を中心に2020年3月〜12月にかけて現地にて重力測定を行うことによって、より稠密な重力測定データを整備した。これらのデータについて、補正密度2300 kg/m3を用いてブーゲー補正および地形補正、トレンド処理および遮断波長3 kmのローパスフィルター処理を行い、眉丈山第2断層周辺の重力異常分布を得た。この重力異常データに対してフーリエ変換を用いて重力勾配テンソルを求めた(Mickus and Hinojosa, 2001)。この重力勾配テンソルから水平一次微分(HD)、鉛直一次微分(VD)、鉛直一次微分で正規化した水平一次微分(TDX)、次元指数、傾斜角の空間分布を推定した。
結果と考察
邑知平野と比較すると、眉丈山第2断層の上盤側にあたる眉丈山地では、重力異常は約4〜9 mGal高い値を示す。この高重力異常は眉丈山第2断層に沿った約1.5 kmの幅の領域に限られている。重力勾配テンソルを用いた解析結果から、HDとTDXの極大域およびVD=0の等値線は眉丈山第2断層の地表トレース(今泉ほか編, 2018)と平行に延びることが分かる。HD, VD, TDX, 次元指数の眉丈山第2断層の走向方向の分布と地表トレースとの比較から、地下の断層構造の北東端は地表トレース(今泉ほか編, 2018)の北東端と概ね一致し、それより北東には延びない。HDとTDXの極大域およびVD=0の等値線は地表トレースよりやや南東側に位置する。これは地下の断層構造が地表トレースより南東側に位置することを示唆し、下川ほか(2002)による反射法地震探査で推定された断層や吾妻ほか(2005)で報告された花崗岩と堆積層との境界をなす断層の位置が眉丈山第2断層の地表トレースより南東側に位置することと調和的である。2次元タルワニ法による密度構造解析結果からも地表トレースよりも南東側に地下の断層構造が存在することが確認できた。
謝辞
本研究では、Yamamoto et al. (2011)、産業総合技術研究所地質調査総合センター(2013)による重力データを使用しました。記して感謝いたします。
能登半島中央部に位置する眉丈山断層帯は、邑知平野の北西縁に沿って北東―南西方向に延びる北西側隆起の逆断層であり、眉丈山第2断層と徳田北方の断層から成る(地震調査推進研究本部地震調査委員会, 2006)。眉丈山第2断層では反射法地震探査(下川ほか, 2002)やトレンチ調査(吾妻ほか, 2005)がなされており、断層に沿うような重力異常の急変帯の存在が報告されている(須藤ほか,2004)。重力異常解析は断層構造推定の有効な手法であり、近年では重力勾配テンソルを用いた解析により、断層構造の情報が得られている(e.g., Kusumoto, 2016, 2017; Matsumoto et al., 2016; Hiramatsu et al., 2019)。本講演では、眉丈山第2断層周辺での稠密な重力測定により得られた重力異常および重力勾配テンソルを用いた解析から推定される眉丈山第2断層の断層構造について考察する。
データ
本研究では、金沢大学によって測定された既往データ、Yamamoto et al., (2011)、産総研地質調査総合センター(2013)の重力データを使用する。さらに眉丈山第2断層周辺において、これまで測定点が少なかった地域を中心に2020年3月〜12月にかけて現地にて重力測定を行うことによって、より稠密な重力測定データを整備した。これらのデータについて、補正密度2300 kg/m3を用いてブーゲー補正および地形補正、トレンド処理および遮断波長3 kmのローパスフィルター処理を行い、眉丈山第2断層周辺の重力異常分布を得た。この重力異常データに対してフーリエ変換を用いて重力勾配テンソルを求めた(Mickus and Hinojosa, 2001)。この重力勾配テンソルから水平一次微分(HD)、鉛直一次微分(VD)、鉛直一次微分で正規化した水平一次微分(TDX)、次元指数、傾斜角の空間分布を推定した。
結果と考察
邑知平野と比較すると、眉丈山第2断層の上盤側にあたる眉丈山地では、重力異常は約4〜9 mGal高い値を示す。この高重力異常は眉丈山第2断層に沿った約1.5 kmの幅の領域に限られている。重力勾配テンソルを用いた解析結果から、HDとTDXの極大域およびVD=0の等値線は眉丈山第2断層の地表トレース(今泉ほか編, 2018)と平行に延びることが分かる。HD, VD, TDX, 次元指数の眉丈山第2断層の走向方向の分布と地表トレースとの比較から、地下の断層構造の北東端は地表トレース(今泉ほか編, 2018)の北東端と概ね一致し、それより北東には延びない。HDとTDXの極大域およびVD=0の等値線は地表トレースよりやや南東側に位置する。これは地下の断層構造が地表トレースより南東側に位置することを示唆し、下川ほか(2002)による反射法地震探査で推定された断層や吾妻ほか(2005)で報告された花崗岩と堆積層との境界をなす断層の位置が眉丈山第2断層の地表トレースより南東側に位置することと調和的である。2次元タルワニ法による密度構造解析結果からも地表トレースよりも南東側に地下の断層構造が存在することが確認できた。
謝辞
本研究では、Yamamoto et al. (2011)、産業総合技術研究所地質調査総合センター(2013)による重力データを使用しました。記して感謝いたします。