16:15 〜 16:30
[SSS11-04] 強震記録のスペクトルインバージョン解析に基づく熊本県の地盤増幅特性とS波速度構造の評価
キーワード:スペクトルインバージョン、2016年熊本地震、地盤増幅特性、S波速度
2016年4月に発生した熊本地震について、これまで被災地域や熊本平野などを中心に臨時強震観測点が設置され(Yamanaka et al., 2016等)、現在までに多くの余震による強震記録が得られている。また、被災地域周辺では、地震動の生成メカニズムの解明や強震動予測を目的として、震源・伝播経路・地盤増幅特性の推定(内山・山本、2016や染井・他、2019等)が行われている。しかし、既往研究では、上記の臨時観測点の記録は使われていない。そこで、本研究では、熊本地震の後に実施された余震による強震観測の記録と常設の強震観測点での強震記録を合わせて解析することで、被災地域や熊本平野、八代平野を含めて熊本県内の地盤増幅特性を評価することを試みた。さらに、各観測点の地盤増幅特性から、S波速度構造と地盤減衰を推定して、増幅特性と表層地盤構造の関連を考察した。
使用した地震記録は熊本県および近隣他県に位置するK-NET/KiK-net(防災科研、強震観測網)観測点56地点、熊本県の自治体震度観測点73地点、臨時強震観測点69地点の計198観測点における、2016年4月14日から2020年10月7日までに発生したMj3.4-6.0、震源深さ3-18kmの256地震の記録である。地盤の非線形挙動の影響を避けるため、最大加速度100gal以下の記録を選定した。各記録のS波部分10秒間の観測スペクトルからスペクトルインバージョン(岩田・入倉、1986))によって地盤増幅特性を分離した。拘束条件には、KiK-net宇目西(OITH08)の地震基盤から地表までのS波の一次元理論増幅特性を用いた。さらに、得られた地盤増幅特性を逆解析することで各観測点のS波速度構造と地盤減衰を推定した。
分離した震源特性の多くは、オメガ2乗モデルに従った。伝播経路特性のQ値は72f0.83でモデル化でき、既往研究(染井・他(2019)等)と整合的な結果が得られた。地盤増幅特性の特徴としては、平野部では増幅倍率が0.5-2Hzの低周波数で卓越し、5Hzを越えると山地では増幅が大きくなる傾向が認められた。熊本平野の空間的な変動を見ると、内陸から熊本市の海岸線に向けて0.5-1Hzの増幅倍率が連続的に大きくなっていることがわかった。熊本市南部では0.5Hz-1Hzの地盤増幅倍率が非常に大きく、同地点のS波速度1km/s以下の層の厚さも約600mと特に厚くなっていることから、低周波数の増幅が深部地盤によるものであると考えられる。益城町ではS波速度0.5km/s以下の表層の厚さが多様であることによって、増幅特性の2Hz付近の空間的な変動が大きくなるとわかった。地盤減衰のQ値は、表層地盤は観測点ごとにばらつきがあり、深部地盤では山地より平野部が大きくなるという系統的な違いを明らかにした。
謝辞
本研究は文部科学省科学技術試験研究委託事業「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査」(代表機関:九州大学大学院理学研究院)の一部として実施された強震観測のデータを使用しました。
使用した地震記録は熊本県および近隣他県に位置するK-NET/KiK-net(防災科研、強震観測網)観測点56地点、熊本県の自治体震度観測点73地点、臨時強震観測点69地点の計198観測点における、2016年4月14日から2020年10月7日までに発生したMj3.4-6.0、震源深さ3-18kmの256地震の記録である。地盤の非線形挙動の影響を避けるため、最大加速度100gal以下の記録を選定した。各記録のS波部分10秒間の観測スペクトルからスペクトルインバージョン(岩田・入倉、1986))によって地盤増幅特性を分離した。拘束条件には、KiK-net宇目西(OITH08)の地震基盤から地表までのS波の一次元理論増幅特性を用いた。さらに、得られた地盤増幅特性を逆解析することで各観測点のS波速度構造と地盤減衰を推定した。
分離した震源特性の多くは、オメガ2乗モデルに従った。伝播経路特性のQ値は72f0.83でモデル化でき、既往研究(染井・他(2019)等)と整合的な結果が得られた。地盤増幅特性の特徴としては、平野部では増幅倍率が0.5-2Hzの低周波数で卓越し、5Hzを越えると山地では増幅が大きくなる傾向が認められた。熊本平野の空間的な変動を見ると、内陸から熊本市の海岸線に向けて0.5-1Hzの増幅倍率が連続的に大きくなっていることがわかった。熊本市南部では0.5Hz-1Hzの地盤増幅倍率が非常に大きく、同地点のS波速度1km/s以下の層の厚さも約600mと特に厚くなっていることから、低周波数の増幅が深部地盤によるものであると考えられる。益城町ではS波速度0.5km/s以下の表層の厚さが多様であることによって、増幅特性の2Hz付近の空間的な変動が大きくなるとわかった。地盤減衰のQ値は、表層地盤は観測点ごとにばらつきがあり、深部地盤では山地より平野部が大きくなるという系統的な違いを明らかにした。
謝辞
本研究は文部科学省科学技術試験研究委託事業「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査」(代表機関:九州大学大学院理学研究院)の一部として実施された強震観測のデータを使用しました。