日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT34] 空中からの地球計測とモニタリング

2021年6月3日(木) 15:30 〜 17:00 Ch.23 (Zoom会場23)

コンビーナ:楠本 成寿(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、小山 崇夫(東京大学地震研究所)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、座長:楠本 成寿(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、小山 崇夫(東京大学地震研究所)、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)

16:30 〜 16:45

[STT34-05] ドローン空中電磁探査を用いた豪雨時の斜面内の地下水の挙動の解明について

*木下 篤彦1,2、柴田 俊2、山越 隆雄1、中谷 洋明1、城森 敦善3、十山 哲也3、城森 明3、金山 健太郎4、奥村 稔4、河戸 克志4、三田村 宗樹5、松井 保6 (1.国土交通省国土技術政策総合研究所、2.国土交通省近畿地方整備局大規模土砂災害対策技術センター、3.有限会社ネオサイエンス、4.大日本コンサルタント株式会社、5.大阪市立大学、6.大阪大学)

キーワード:ドローン空中電磁探査、地下水、深層崩壊

ドローン空中電磁探査では,地上に100~1000 m程度のケーブルを敷設し、ケーブルに通電を行う。そこで生じる磁場(1 次磁場)の急激な時間変化を生じさせることで、地下の比抵抗に比例した誘導電流を大地に生じさせる。これにより生じた新たな磁場(2 次磁場)の時間変化(過渡応答)を測定して解析することにより、地下の比抵抗値を求める。この技術の登場により、今後、土砂災害発生後の崩壊メカニズムの検証や対策工の設計方法は大きく変わる可能性がある。この理由として、これまでよく用いられてきた電気探査やヘリコプターによる空中電磁探査に比べて、安価であることと、豪雨後すぐに計測が可能である点が挙げられる。本研究では、2011年の台風12号で深層崩壊が発生した和歌山県田辺市の熊野地区で調査を行った。豪雨時の斜面内の地下水の挙動を明らかにする目的で、ドローン空中電磁探査を行った。

 2020年に、熊野地区の崩壊斜面下部から見て崩壊斜面右上方に約700mの測線を引き、出水期と乾燥期の2時期にドローン空中電磁探査を行った。なお、現地踏査の結果から、測線を引いた周辺に複数の断層破砕帯が分布していた。出水期については、2020年台風14号の総雨量217mmの降雨終了3日後(2020年10月13日)であった。乾燥期については、11日間無降雨であった2020年12月2日に行った。これらの比抵抗値の差分を取ることで、2020年台風14号時の地下水の挙動を推定した。

 ドローン空中電磁探査により、従来ボーリング孔を用いないと分からなかった豪雨時の斜面内の地下水の挙動を推定することができた。この結果、熊野地区に分布している4本の断層破砕帯が地下水を誘導し、かつ斜面内に地下水を堰き止めていることが分かった。2011年の災害では、これらの断層破砕帯の影響により、深層崩壊が発生したと考えられる。このように、ドローン空中電磁探査を用いれば、豪雨時の断層破砕帯の役割が評価できることが分かった。