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[STT35-04] 光ファイバーをセンサーとして用いるDASテクノロジーを使った地震波観測システムの飛躍的進歩
キーワード:DAS、hDVS、光ファイバー、地震観測、地震、津波
近年のインターネットやモバイルテクノロジーの発展によって様々な民生用のコンピューター、とりわけデータサーバーの処理能力、およびデータを保持する容量の向上は目覚ましいものがある。現在、オンライン会議やオンライン授業が日常的な業務になっており、データサーバーの更なる進歩が加速している。そのようなテクノロジーの急速な発展は新しい手法での地震観測にも恩恵を与えている。
長距離光ファイバーを分布型振動センサーとして地震波観測を行うDAS (Distributed Acoustic Sensing)テクノロジーが、2011年頃から新しい物理探査技術として石油・ガス産業で使われ始め、線形性を向上させた後方散乱光の位相差データを用いる“heterodyne Distributed Vibration Sensing”(以下、hDVS)が2014年頃から使われ始めた1)。2017年のJpGU-AGU Meetingの際、2016年後半に完成したhDVSの第三世代のシステムについて発表を行った2)。第二世代のシステムに比べてデータのS/N比の向上、およびデータ処理能力の向上が見られたが、その功績は光回路部のOptical Interrogatorとデータ処理部のProcessing Serverを明確に分けて、それぞれの合理化を図ったことが起因している。そのことによるパフォーマンスの向上は2倍程度だった。2016年当時、一般的に購入できるSATA、またはSAS方式の3.5インチHDD 1台の最大容量は4TBで、8台をRAID 1構成にした時の最大容量は16TBだった。このデータ保存量は当時、VSPを数日間連続記録するには十分な容量であった。しかし、近年、10㎞を超える長距離の光ファイバーを使った1ヶ月に及ぶ連続記録には16TBの容量は十分とは言えなくなってきていた。
第三世代システムの特徴と言える光回路部とデータ処理部の明確な分離はその後のパフォーマンス向上を目的とする開発を比較的容易にした。光回路部はいわゆるアナログ回路に相当し、レーザーの単色性や安定性の向上、光モジュレーションの高速化、光ファイバー技術の向上があって初めて性能を高めることが出来るが、その開発スピードは特殊性があるためとてもゆっくりしたスピードで進んでいる。一方、デジタル回路に相当するデータ処理部、すなわちサーバーは汎用のインターネット関連のサーバーと大きく変わらず、データ処理の高速化が影響し、急速なパフォーマンスの向上が期待される。
hDVS Tier-3+は第三世代システムのサーバー部のみを改良した装置で、データ処理能力が約4倍向上し、大容量のHDDの登場によりデータ保持の最大容量を4倍に増やすことが出来た。つまり4年間で4倍の性能の向上が達成できたことになる。このパフォーマンスの向上により、DAS装置の理論限界である光パルスレートを1kHz(1msサンプリング)に設定した場合、100kmの長さのファイバーを使って記録できるパフォーマンスが達成できた。実際の光ファイバーは光の損失があり、一般的な通信用のファイバーの場合その損失の典型的な値が0.2dB/km前後である。現在のDAS装置が扱うことが出来る光の総損失が10dB程度なので、実際の限界は50km程度である。
hDVS Tier-3+の主な改良点を以下に示す。
a)DAS観測における現状の光ファイバーの光学的な限界の最大長である約50kmを達成
b)光ファイバーの損失をさらに下げることが出来れば100kmに達する観測が可能
c)通常のモード(最小ゲージ長5m)に加えハイレゾリューションモードが加わった(最小ゲージ長1.5m)
d)ゲージ長をパラメータとして1.5mから300mまで多くの選択肢で設定可能
e)4種類のハイパスフィルターが選択可能で0.01Hzを含む低周波数域のデータの取得が可能
f)データ処理能力の向上によってより高い光パルスレートを設定できデータのS/N比が向上した
g)SEGYに加えてHDF5のフォーマットでの出力も可能
h)最大20kHzの光パルスレートで観測が可能(最小0.05msでサンプリング可能)
i)hDVS Server部の信頼性の向上とノイズの低減
hDVS Tier-3+の登場によってDASの利点を生かした更に広がりのある観測が可能となった。
引用文献:
1) Hartog, A. et al, The Optics of Distributed Vibration Sensing, 2nd EAGE Workshop on Permanent Reservoir Monitoring, July 2-5, 2013
2) Kimura, T., Progress of Seismic Monitoring System using Optical Fiber and DAS Technology, JpGU-AGU 2017 STT59-04
長距離光ファイバーを分布型振動センサーとして地震波観測を行うDAS (Distributed Acoustic Sensing)テクノロジーが、2011年頃から新しい物理探査技術として石油・ガス産業で使われ始め、線形性を向上させた後方散乱光の位相差データを用いる“heterodyne Distributed Vibration Sensing”(以下、hDVS)が2014年頃から使われ始めた1)。2017年のJpGU-AGU Meetingの際、2016年後半に完成したhDVSの第三世代のシステムについて発表を行った2)。第二世代のシステムに比べてデータのS/N比の向上、およびデータ処理能力の向上が見られたが、その功績は光回路部のOptical Interrogatorとデータ処理部のProcessing Serverを明確に分けて、それぞれの合理化を図ったことが起因している。そのことによるパフォーマンスの向上は2倍程度だった。2016年当時、一般的に購入できるSATA、またはSAS方式の3.5インチHDD 1台の最大容量は4TBで、8台をRAID 1構成にした時の最大容量は16TBだった。このデータ保存量は当時、VSPを数日間連続記録するには十分な容量であった。しかし、近年、10㎞を超える長距離の光ファイバーを使った1ヶ月に及ぶ連続記録には16TBの容量は十分とは言えなくなってきていた。
第三世代システムの特徴と言える光回路部とデータ処理部の明確な分離はその後のパフォーマンス向上を目的とする開発を比較的容易にした。光回路部はいわゆるアナログ回路に相当し、レーザーの単色性や安定性の向上、光モジュレーションの高速化、光ファイバー技術の向上があって初めて性能を高めることが出来るが、その開発スピードは特殊性があるためとてもゆっくりしたスピードで進んでいる。一方、デジタル回路に相当するデータ処理部、すなわちサーバーは汎用のインターネット関連のサーバーと大きく変わらず、データ処理の高速化が影響し、急速なパフォーマンスの向上が期待される。
hDVS Tier-3+は第三世代システムのサーバー部のみを改良した装置で、データ処理能力が約4倍向上し、大容量のHDDの登場によりデータ保持の最大容量を4倍に増やすことが出来た。つまり4年間で4倍の性能の向上が達成できたことになる。このパフォーマンスの向上により、DAS装置の理論限界である光パルスレートを1kHz(1msサンプリング)に設定した場合、100kmの長さのファイバーを使って記録できるパフォーマンスが達成できた。実際の光ファイバーは光の損失があり、一般的な通信用のファイバーの場合その損失の典型的な値が0.2dB/km前後である。現在のDAS装置が扱うことが出来る光の総損失が10dB程度なので、実際の限界は50km程度である。
hDVS Tier-3+の主な改良点を以下に示す。
a)DAS観測における現状の光ファイバーの光学的な限界の最大長である約50kmを達成
b)光ファイバーの損失をさらに下げることが出来れば100kmに達する観測が可能
c)通常のモード(最小ゲージ長5m)に加えハイレゾリューションモードが加わった(最小ゲージ長1.5m)
d)ゲージ長をパラメータとして1.5mから300mまで多くの選択肢で設定可能
e)4種類のハイパスフィルターが選択可能で0.01Hzを含む低周波数域のデータの取得が可能
f)データ処理能力の向上によってより高い光パルスレートを設定できデータのS/N比が向上した
g)SEGYに加えてHDF5のフォーマットでの出力も可能
h)最大20kHzの光パルスレートで観測が可能(最小0.05msでサンプリング可能)
i)hDVS Server部の信頼性の向上とノイズの低減
hDVS Tier-3+の登場によってDASの利点を生かした更に広がりのある観測が可能となった。
引用文献:
1) Hartog, A. et al, The Optics of Distributed Vibration Sensing, 2nd EAGE Workshop on Permanent Reservoir Monitoring, July 2-5, 2013
2) Kimura, T., Progress of Seismic Monitoring System using Optical Fiber and DAS Technology, JpGU-AGU 2017 STT59-04