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[STT36-03] 差分干渉SARにより検出されたネパール,マルシャンディ川沿岸の地すべり性地表変動とその変動特性
キーワード:差分干渉SAR、ALOS-2、地すべり
ネパールはプレート衝突にともなう急峻な地形と複雑な地質構造の影響により,世界有数の地すべり地帯を抱えている。しかし,高起伏な地形の影響を受けその変動のモニタリングは難しく,観測事例が限られている現状にある。そこで,先行研究において地すべりの危険度がランク付けされ,地すべりの減災に関心の高いMarsyangdi川沿岸を対象に,D-InSARを用いた地すべりの変動モニタリングとその変動特性の解明を試みた。
データとして,2014年11月20日から2020年8月6日に計測された計17枚のALOS-2データを使用した。D-InSAR解析には,Ozawa et al.(2016)が開発したソフトウェアRINC0.41を使用した。作成したD-InSAR画像はArcGISproで地図に投影し,地形判読および変動量解析を行った(Fig. 1)。
判読の結果,Marsyangdi川の右岸に2箇所の地すべりを検出した(28°21’56”N,84°23’25”E; 28°21’4”N,84°23’17”E:以後,この地点について述べる)。この場所(Fig. 2)は衝上断層(Main Central Thrust)の北側約1.5kmに位置しており,大規模な地すべり地形が確認でき,片麻岩が分布する。多時期のD-InSAR解析の結果,短くても2015年9月15日-2016年1月28日のペアから,2019年10月17日-2019年12月26日のペアにかけて変動が継続していた。また,最大変位量を位相から算出し,降水量と比較した結果,雨季に変動速度が速くなることはなく,むしろ雨季の直後に加速することがわかった(Fig. 3)。さらに,変動域の変化を確認した結果,上部が動いたあとに下部が動くことが確認でき,その変動は遷急線を頂部として発生していた(Fig. 1)。
この変動には衝上断層で破砕された地質が関与していることが推測される。降水量との関係から,地すべりの挙動と降水量には時間的なギャップが存在することが示唆された。また,変動域頂部が遷急線にあることから,最終氷期以降の下刻作用に伴う地形変化が地すべりの変動に寄与している可能性があり,今後,この点について詳しくみていきたい。
謝辞
本研究の一部に科学研究費19H01368を利用するとともに,利用したALOS-2データについては東大震研共同研究2021-B-03の枠組でJAXAから提供したものを用いました。陰影起伏図の作成にはAW3Dデータ(https://www.aw3d.jp/)を利用した。
参考文献
Ozawa, T., Fujita, E., and Ueda, H. (2016): Crustal deformation associated with the 2016 Kumamoto Earthquake and its effect on the magma system of Aso volcano. Earth, Planets and Spase, 68: 16.
Yagi H, Sato G, Sato HP, Higaki D, Dangol V, Amatya SC, Slope deformation caused Jure landslide 2014 along Sun Koshi in lesser Himalaya and effect of Gorkha earthquake 2015, In Vilímek V, Wang F, Strom A, Sassa K, Bobrowsky PT, Takara K (eds.), Understanding and Reducing Landslide Disaster Risk, 5, 65-72, Springer, 2020.
データとして,2014年11月20日から2020年8月6日に計測された計17枚のALOS-2データを使用した。D-InSAR解析には,Ozawa et al.(2016)が開発したソフトウェアRINC0.41を使用した。作成したD-InSAR画像はArcGISproで地図に投影し,地形判読および変動量解析を行った(Fig. 1)。
判読の結果,Marsyangdi川の右岸に2箇所の地すべりを検出した(28°21’56”N,84°23’25”E; 28°21’4”N,84°23’17”E:以後,この地点について述べる)。この場所(Fig. 2)は衝上断層(Main Central Thrust)の北側約1.5kmに位置しており,大規模な地すべり地形が確認でき,片麻岩が分布する。多時期のD-InSAR解析の結果,短くても2015年9月15日-2016年1月28日のペアから,2019年10月17日-2019年12月26日のペアにかけて変動が継続していた。また,最大変位量を位相から算出し,降水量と比較した結果,雨季に変動速度が速くなることはなく,むしろ雨季の直後に加速することがわかった(Fig. 3)。さらに,変動域の変化を確認した結果,上部が動いたあとに下部が動くことが確認でき,その変動は遷急線を頂部として発生していた(Fig. 1)。
この変動には衝上断層で破砕された地質が関与していることが推測される。降水量との関係から,地すべりの挙動と降水量には時間的なギャップが存在することが示唆された。また,変動域頂部が遷急線にあることから,最終氷期以降の下刻作用に伴う地形変化が地すべりの変動に寄与している可能性があり,今後,この点について詳しくみていきたい。
謝辞
本研究の一部に科学研究費19H01368を利用するとともに,利用したALOS-2データについては東大震研共同研究2021-B-03の枠組でJAXAから提供したものを用いました。陰影起伏図の作成にはAW3Dデータ(https://www.aw3d.jp/)を利用した。
参考文献
Ozawa, T., Fujita, E., and Ueda, H. (2016): Crustal deformation associated with the 2016 Kumamoto Earthquake and its effect on the magma system of Aso volcano. Earth, Planets and Spase, 68: 16.
Yagi H, Sato G, Sato HP, Higaki D, Dangol V, Amatya SC, Slope deformation caused Jure landslide 2014 along Sun Koshi in lesser Himalaya and effect of Gorkha earthquake 2015, In Vilímek V, Wang F, Strom A, Sassa K, Bobrowsky PT, Takara K (eds.), Understanding and Reducing Landslide Disaster Risk, 5, 65-72, Springer, 2020.