日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT36] 合成開口レーダーとその応用

2021年6月5日(土) 09:00 〜 10:30 Ch.22 (Zoom会場22)

コンビーナ:木下 陽平(筑波大学)、阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、小林 祥子(玉川大学)、姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、木下 陽平(筑波大学)

10:15 〜 10:30

[STT36-06] SAR干渉画像のためのカラーマップの検討

*森下 遊1 (1.国土地理院)

キーワード:干渉SAR、カラーマップ、科学的視覚化

数値データを正確に視覚化することは科学コミュニケーションにおいて非常に重要である。Crameri et al. (2020) は、不均質な色勾配を持つ「非科学的カラーマップ」はデータを視覚的に歪ませ、誤解釈につながることや、正しくデータを視覚化するには、科学的に導出されたカラーマップを使用すべきであることを示した。非科学的カラーマップの一例として、頻繁に使用されてきた「jet」を含むrainbow系のカラーマップが挙げられる。カラーマップの均質性は、L(明度)、a(赤緑相関度)、b(黄青相関度)、ΔE(明度差分)等の指標により数値的に評価することができる(図)。これらの指標に基づいて開発されたScientific Colour Maps(Crameri, 2018)は均質であり、データを視覚的に歪ませることのない科学的カラーマップである。

干渉SARは2回以上の観測データ(SAR画像)の位相差を計算することによって、地表の変動を面的に計測することができる技術である。位相は-π~πの値しか持たないため、得られる位相差のデータも-π~πに「ラップ」された、サイクリックなデータとなる。ラップされた位相差で構成されるSAR干渉画像を視覚化するには、サイクリックなカラーマップが適している。サイクリックではないカラーマップでは、-πとπの間に偽の不連続が描画されてしまうためである。これまでは、GAMMA REMOTE SENSING社のSAR解析ソフトウェアGAMMAで標準的に使用している虹色のカラーマップが世界で最も使われてきた(図、以下「GAMMA色」という)。GAMMA以外にも、国土地理院のGSISARやNASAのISCE等のソフトウェアで標準的に使用されてきた。地震調査研究推進本部(2011)でも、GAMMA色を標準的な表現方法として定めている。GAMMA色は20年以上前からSAR干渉画像に使用されるカラーマップのデファクトスタンダードになっているといえる。

しかし、上記指標に基づくと、GAMMA色も科学的カラーマップであるとは言えない。本発表では、科学的カラーマップの理論的背景を紹介し、GAMMA色の問題点や代替と成り得るカラーマップについて議論する。



参考文献

Crameri, F. (2018). Scientific colour maps. Zenodo. http://doi.org/10.5281/zenodo.1243862

Crameri, F., Shephard, G.E. & Heron, P.J. (2020). The misuse of colour in science communication. Nat Commun 11, 5444. https://doi.org/10.1038/s41467-020-19160-7

地震調査研究推進本部 地震調査委員会(2011).合成開口レーダーによる地震活動に関連する地殻変動観測手法について(付録)、https://www.jishin.go.jp/main/eisei/eisei_furoku.pdf