日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT36] 合成開口レーダーとその応用

2021年6月5日(土) 10:45 〜 12:15 Ch.22 (Zoom会場22)

コンビーナ:木下 陽平(筑波大学)、阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、小林 祥子(玉川大学)、姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:大槻 真嗣(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

10:45 〜 11:00

[STT36-07] 時系列SARを用いた西之島の噴火に伴う地形変化量の抽出手法に関する検討

*稲野 大輝1、島田 政信2 (1.東京電機大学 理工学研究科 建築・都市環境学専攻、2.東京電機大学 理工学部 理工学科 建築・都市環境学系)

キーワード:時系列SAR、西之島

SAR画像は合成開口技術とパルス圧縮技術の2つの処理を行うことによって、地表に格子状のメッシュが構成され、その一つ一つの画素ごとに反射波の強度などが測定される。その反射波も対象物によって大きく違いがある。そこで、SARで観測する画像から陸域と海域を分類するために、陸域と海域の定義を考える。陸域とは、標高が0m以上の箇所であり、一般には陸域の後方散乱信号は海域のそれに比べて大きい。一方、海域は標高が0m地帯であり、反射信号は、一般に小さい。陸域の信号は海域のそれよりも大きいために、振幅画像では明るく映る。

 本研究では、日本の小笠原諸島にある無人の火山島である西之島を対象に、時系列SARデータを用いた、噴火に伴う地形の時間変化や面積変化を中心とした手法を検討する。また、それらの手法で得られた結果の精度評価を行った。地形変化の中でも、面積に対しては三つの手法を実施した。使用するデータは、JAXAのALOS-2/PALSAR-2が2014年9月29日から6年間にわたり観測した23シーンの時系列データである。

 一つ目は 閾値法である。全体で一つの最適な閾値を決定し、閾値以上のピクセル数を陸のピクセル数としてカウントすることで、面積を算出する手法である。一方、島が拡大してくると場所により降灰の影響などを受けて明るさが変化する。そのため、画像を4分割し、それぞれの領域で閾値を設定し、陸の面積を算出する。それら全てを足し合わせて、全体の陸の面積を算出する。

 二つ目は、自動化法である。この手法では、ImageJという画像解析ソフトウェアを使用し、閾値を自動的に決定する。後方散乱係数が閾値より小さい時、後方散乱係数を最小値に閾値より大きい時は最大値にする。それにより、陸が白く、海が黒くなった画像を作成し、面積を算出する。

 三つ目は、エッジ検出法である。元画像に対して、垂直・水平方向に畳み込み行列を掛け合わせ、得られた画素値を足し合わせることで、境界が強調された微分強調画像を作る。これは陸の後方散乱係数が増加した画像ということである。そのため、火山灰などが降り積もり、陸の一部の後方散乱係数が低下している画像でも、全体として、陸の後方散乱係数より海の後方散乱係数が大きくなり、沿岸域のわずかな境界線の変化を抽出することが出来る。

 結果として、海上保安庁と気象庁の現地データに対して、各手法の相対誤差は、閾値法が-2.79%、陸域を4分割した場合の閾値法が-12.63%、自動化法が-10.94%、エッジ検出法が-5.56%という結果になった。現時点では、閾値法が島面積の抽出には最も有効であると考えられ、エッジ検出法も海域ノイズの処理次第では有効な手段になりうると考えられる。