日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT36] 合成開口レーダーとその応用

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.18

コンビーナ:木下 陽平(筑波大学)、阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、小林 祥子(玉川大学)、姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

17:15 〜 18:30

[STT36-P03] 2018年霧島山新燃岳噴火のInSARによる地表面の変動の観測と圧力源の推定

*田代 貴久1、鈴木 浩一2 (1.北海道大学大学院工学院共同資源工学専攻、2.北海道大学大学院工学研究院環境循環システム部門地圏循環工学分野)

キーワード:霧島山新燃岳、InSAR、茂木モデル

九州南部に位置する霧島山新燃岳は,2018年3月に噴火活動が起こった。本研究の目的は2つある。1つ目は,2018年噴火活動に伴う地表面の変動をInSAR(差分干渉合成開口レーダ)で観測することである。期間は,噴火前(2017年10月19日から2018年2月8日),噴火前後(2018年2月8日から2018年3月8日),噴火後(2018年3月8日から2019年2月7日)とした。2つ目は,InSARによる観測結果から,半空間における均質球状等方圧力源を仮定した「茂木モデル」(Mogi, 1958)を使って,噴火に関わったと考えられるマグマの位置と体積変化量を推定することである。最適なパラメータの決定には,圧力源の緯度及び経度,深さと体積変化量について任意の範囲の総での組合せを加味し,ピアソンX2検定で絶対値が最も小さくなるものを採用した。

InSARで得られた結果は,衛星の視線方向を正とすると,噴火前は+2.41 [cm],噴火前後は-3.75 [cm],噴火後は+3.93 [cm]となった。これは気象庁(2019)や国土地理院(2019)がGNSSで観測した基線長の伸縮と調和的だった。

マグマの体積変化量は,噴火前が0.37 [m3],噴火前後に-0.69 [m3],噴火後で約1年で0.79 [m3]であった。全ての観測期間において,地表面の変動を起こしたマグマだまりは新燃岳の北西約6 kmの深さ約7.5 kmの位置にあると考えられる。本研究から分かった噴火前後におけるおおよその体積変化量は,他の2つの手法で報告されたものと良く整合した。気象庁(2019)は,2018年3月1日から10日にかけてGNSSで観測をし,その結果から茂木モデルを採用し,-0.66×107 [m3]と体積変化量を報告した。防災科学技術研究所(2018)は,2018年3月6日から8日にかけて合成開口レーダを使って火口内の溶岩の成長を観測し,そこから推定されたマグマ累積量は,1.32×107 [m3]であった。

以上のことより,2018年噴火は2011年噴火(小林ほか,2011;宮城・小澤・河野,2013など)と同一のマグマだまりが噴火に関与した可能性が高いと考えられる。


謝辞

本研究で用いたPALSARデータはPIXELにおいて共有しているものであり,JAXAと東大地震研との共同研究契約によりJAXAから提供されたものである。PALSARデータの所有権は経済産業省およびJAXAにある。本研究(の一部)は,東大地震研特定共同研究(B)「衛星リモートセンシングによる地震・火山活動の解析」で行われた。

参考文献

気象庁,第142回火山噴火予知連絡会会報,89-101, 2019.
国土地理院,火山噴火予知連絡会会報,132, 338-351, 2019.
小林知勝 ほか,国土地理院時報,121, 195-201, 2011.
宮城洋介・小澤拓・河野祐希,火山,58(2), 341-351, 2013.
Mogi, K., Bull. Earthq. Res. Inst. Univ. Tokyo, 36, 99-134, 1958.
防災科学技術研究所,https://www.bosai.go.jp/info/saigai/2017/pdf/20180309_01.pdf, 2018.