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[STT38-01] 地震発生から地震動・地盤増幅評価までの統合的予測システムの構築とその社会実装を目指した大規模数値シミュレーション手法の研究
キーワード:高性能計算、有限要素法、スーパーコンピュータ「富岳」、地震動解析、非線形地盤増幅、地殻変動
スーパーコンピュータ「富岳」の運用が2020年度に開始され、2021年には共用開始となる。「富岳」を用いた成果を早期に創出することを目的とした「富岳」成果創出加速プログラム(2020~2022年度)が、文部科学省により設置されており、著者らが中心となって申請した「大規模数値シミュレーションによる地震発生から地震動・地盤増幅評価までの統合的予測システムの構築とその社会実装」がその課題の一つとして採択されている。この課題において、富岳の計算性能を最大限活用できるような、地震発生から地震動・地盤増幅評価までを対象とした有限要素計算アプリケーションの開発に取り組んできた。前身課題であるポスト「京」重点課題から継続して開発してきている「E-wave FEM」・「STRIKE」はそれぞれ、非構造四面体二次要素を用いた陰解法と高性能前処理による反復解法を組み合わせた地震動・非線形地盤増幅解析プログラムである。これらのアプリケーションを用いることで、複雑地盤における地震動・非線形地盤増幅の解析を精度よく、安定に、かつ高速に行うことができるようになっている。
本課題では、これらの高性能計算を活用した計算アプリケーションによる数値シミュレーションを、政策判断や実務等に活用するための基礎を築くことを目指している。まず、国の被害想定における長周期震動評価においては手法高度化のニーズがあり、そのニーズと合致したE-wave FEMは国の被害想定への適用を目指した委員会での検討に組み込まれている。「富岳」でしかできない規模の地震動計算によって精度保証をした上で、国の被害想定における地震動評価で実際に用いられるようにすることが、本課題における目標となっている。プロジェクト初年度である2020年度には、国の被害想定における長周期地震動評価に必要な計算を遂行するための準備を進めた。まず「富岳」の実機を用いて、E-wave FEM・STRIKEに共通する有限要素解析ソルバーに対して「富岳」の性能が引き出されるように、計算科学・計算機科学の最先端技術を駆使したコード改良を行った(Ichimura et al., SC20, 2020)。さらに、E-wave FEMと国の被害想定において従来用いられてきた有限差分法の数値解をベンチマークテストで比較することで、E-wave FEMを被害想定のためのツールとして採用するメリット等を整理した上で、計算環境の整備等により、国の被害想定におけるE-wave FEMを用いた地震動評価が実施されるための準備を行った。また開発した計算アプリケーション群をベースとした国の想定と同等の計算ができる仕組みを、建築・土木系企業等が実務で使えるようなプラットフォームの構築も進めた。ツールを実務で使いやすい形で提供するため、マニュアル、プリポスト処理用計算機とツール群の整備など、計算環境の整備構築を行った。その上で、本課題に連携機関として参画している企業を対象に、E-wave FEMを用いた計算のチュートリアルを行った。チュートリアルを受けて実装されている機能に対するフィードバックをすでに受けており、2年度目にはそれらをもとに環境整備を改善していく。STRIKEについても、重点課題からの共同研究をさらに発展させ、企業ごとのニーズを踏まえた非線形地盤増幅計算を「富岳」で実施する準備を進めており、より実務に即した問題への適用を目指している。
本課題ではさらに、地震動解析アプリケーションとほぼ共通の有限要素解析ソルバーを用いた、弾性・粘弾性地殻変動の大規模計算コード「E-cycle FEM」の開発も重点課題から継続して進めてきている。本アプリケーションは、津波初期水位推定や南海トラフプレート境界面固着度推定などを目的としたものであり、国の被害想定のもとになる地震・津波シナリオの事前評価や、地震発生・準備過程ならびに津波発生過程の現状把握・推移予測・即時予測の高度化に貢献することを目指している。本課題で特に対象とするのは、大領域での3次元不均質構造や、領域は限られているが非常に詳細な構造などでの、「富岳」でしかできない規模の弾性・粘弾性地殻変動計算により、参照解を得ることである。このような参照解は、精度保証したグリーン関数を作成し、上記の想定・評価プロセスへと提供するために重要となる。
本課題では、これらの高性能計算を活用した計算アプリケーションによる数値シミュレーションを、政策判断や実務等に活用するための基礎を築くことを目指している。まず、国の被害想定における長周期震動評価においては手法高度化のニーズがあり、そのニーズと合致したE-wave FEMは国の被害想定への適用を目指した委員会での検討に組み込まれている。「富岳」でしかできない規模の地震動計算によって精度保証をした上で、国の被害想定における地震動評価で実際に用いられるようにすることが、本課題における目標となっている。プロジェクト初年度である2020年度には、国の被害想定における長周期地震動評価に必要な計算を遂行するための準備を進めた。まず「富岳」の実機を用いて、E-wave FEM・STRIKEに共通する有限要素解析ソルバーに対して「富岳」の性能が引き出されるように、計算科学・計算機科学の最先端技術を駆使したコード改良を行った(Ichimura et al., SC20, 2020)。さらに、E-wave FEMと国の被害想定において従来用いられてきた有限差分法の数値解をベンチマークテストで比較することで、E-wave FEMを被害想定のためのツールとして採用するメリット等を整理した上で、計算環境の整備等により、国の被害想定におけるE-wave FEMを用いた地震動評価が実施されるための準備を行った。また開発した計算アプリケーション群をベースとした国の想定と同等の計算ができる仕組みを、建築・土木系企業等が実務で使えるようなプラットフォームの構築も進めた。ツールを実務で使いやすい形で提供するため、マニュアル、プリポスト処理用計算機とツール群の整備など、計算環境の整備構築を行った。その上で、本課題に連携機関として参画している企業を対象に、E-wave FEMを用いた計算のチュートリアルを行った。チュートリアルを受けて実装されている機能に対するフィードバックをすでに受けており、2年度目にはそれらをもとに環境整備を改善していく。STRIKEについても、重点課題からの共同研究をさらに発展させ、企業ごとのニーズを踏まえた非線形地盤増幅計算を「富岳」で実施する準備を進めており、より実務に即した問題への適用を目指している。
本課題ではさらに、地震動解析アプリケーションとほぼ共通の有限要素解析ソルバーを用いた、弾性・粘弾性地殻変動の大規模計算コード「E-cycle FEM」の開発も重点課題から継続して進めてきている。本アプリケーションは、津波初期水位推定や南海トラフプレート境界面固着度推定などを目的としたものであり、国の被害想定のもとになる地震・津波シナリオの事前評価や、地震発生・準備過程ならびに津波発生過程の現状把握・推移予測・即時予測の高度化に貢献することを目指している。本課題で特に対象とするのは、大領域での3次元不均質構造や、領域は限られているが非常に詳細な構造などでの、「富岳」でしかできない規模の弾性・粘弾性地殻変動計算により、参照解を得ることである。このような参照解は、精度保証したグリーン関数を作成し、上記の想定・評価プロセスへと提供するために重要となる。