日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT38] ハイパフォーマンスコンピューティングが拓く固体地球科学の未来

2021年6月5日(土) 09:00 〜 10:30 Ch.21 (Zoom会場21)

コンビーナ:堀 高峰(独立行政法人海洋研究開発機構・地震津波海域観測研究開発センター)、八木 勇治(国立大学法人 筑波大学大学院 生命環境系)、汐見 勝彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、縣 亮一郎(海洋研究開発機構)、座長:堀 高峰(独立行政法人海洋研究開発機構・地震津波海域観測研究開発センター)、縣 亮一郎(海洋研究開発機構)

09:45 〜 10:00

[STT38-04] アラスカ沈み込み帯における3次元温度構造モデリング

*岩本 佳耶1、末永 伸明2、吉岡 祥一2,1 (1.神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻、2.神戸大学都市安全研究センター)


キーワード:温度、3次元モデリング、数値シミュレーション、アラスカ、沈み込み帯

アラスカ沈み込み帯では、1964年アラスカ地震(Mw9.2)に代表される海溝型巨大地震や、スロースリップイベント・深部低周波微動などのスロー地震がプレート境界付近で発生している。
この地域では、北米プレートの下に太平洋プレートが沈み込んでいる。その東端では、ヤクタットテレーンが存在し、沈み込んでいることが近年の研究で明らかになってきた。ヤクタットテレーンは太平洋プレートとテクトニックセッティングが大きく異なり、深部低周波微動が発生し、火山が存在せず、堆積層や海洋地殻がかなり厚い、といった特徴がある。

本研究では、アラスカ沈み込み帯におけるこのようなプレート間地震イベントの発生の場の温度条件を明らかにする目的で、ヤクタットテレーンと太平洋プレートの同時沈み込みに伴う3次元熱対流数値モデルを構築した。
本数値シミュレーションでは、プレート回転モデルを参考にしてプレートの沈み込み史を考慮し、ヤクタットテレーンと太平洋プレートのそれぞれに対し、沈み込み速度を独立に与えた。また、両者で、堆積層や海洋地殻の厚さも区別して与えた。さらに、マントルウェッジのプレート境界面で、新たに低粘性層を導入し、前弧の温度場を低くすることが可能なモデルを構築した。
このような条件のもと、過去数千万年前から現在までの温度場・流れ場の時間発展問題を差分法を用いて解いた。
数値シミュレーションで得られた現在の温度場は、キュリー点深度分布や地殻熱流量の観測データと比較し、観測値と計算値の残差が小さくなるようなモデルの構築を試みた。

数値シミュレーションで得られた温度構造から今後、海洋堆積物や海洋地殻中に含まれる含水鉱物の相図を用いて、プレート間地震イベントと脱水との関連性についても検討していく予定である。