17:15 〜 18:30
[STT38-P02] 主軸線を用いた応力テンソル場の座標系非依存可視化手法
キーワード:可視化、テンソル場、応力
物理問題に現れる物理量は、数学的にはテンソルを用いて表される。0階のテンソルで表されるスカラー場と1階のテンソルで表されるベクトル場を可視化するのは容易であり、多くの可視化ツールにおいて実現されている。
一方で、3次元空間内で2階対称テンソルを用いて表される物理場(例えば、連続体における歪みや応力など)は6個の独立な成分をもつ。例えば、応力の一般的な可視化手法では、3つの直応力と3つのせん断成分であるスカラー値を色づけによって表した6枚のコンター図、または3つの主応力値(いわゆる最大・中間・最小主応力)を色づけによって表した3枚のコンター図と、それぞれの主応力値の向きを表す線分を描いた3枚の線分図が必要となる。これら複数の図を見ながら直観的に2階テンソル場の全体像を把握することは不可能であると言わざるを得ない。
この問題から、これまでに2階テンソル場の直観的な理解を目指したtopology-basedな可視化手法が提案されている。これらの手法では、2階対称テンソルの3つの主軸方向の線分の長さを主値の絶対値によって重み付けすることで決定し、これら3つの線分を軸とする楕円体か、楕円体を長軸方向に連結することで得られる楕円チューブを描画する。しかし、これらの手法は、主値が負の値をもつことがない2階テンソル場では有効であるが(例えばMRI画像のtractographyに用いられる拡散テンソルなど)、応力や歪みテンソルのように主値が負となる場合がある2階テンソル場では、その物理的意味を正しく反映することができない。
そこで、本研究では、3次元空間内での2階対称テンソル場を直観的に正しく把握できる新たな可視化手法とアルゴリズムを提案する。本手法は2階対称テンソルで表される物理量一般に適用可能だが、ここでは簡単のため対象を応力場に限定して手法の概要を示す。
本手法では3次元空間内の可視化領域全体を互いに重なり合わない小領域に分割し、その小領域内に定義される応力テンソルの主軸と主値を用いて可視化を行う。ここで小領域内の応力テンソル場は一定である。これにより、個々の小領域内において主軸方向を接方向とする線分を描画することができる。その線分が小領域の境界を通過すると、次の小領域で定義される3つの主軸方向のうち、線分に最も滑らかに接続される主軸方向を選択し、この向きを接方向とする線分を境界の通過点を通るように小領域内に描く。この主軸方向の選択において、必ずしも最大・中間・最小主応力に対応した主軸を選択している訳ではない点に注意しなければならない。各線分は、小領域ごとに、その主軸方向に対応した主値によって色付けをする。この線分の描画作業を、可視化領域内の任意の位置・数に設定した描画開始点(シード)から行うことで、可視化領域内に複数の線(主軸線)を描くことができる。2階対称テンソル場では、可視化領域内の全ての点ごとに、互いに直交する3本の主軸線を描くことができるが、ここでは、例えば各シードで直交する3本の主軸線を描画することで、領域内に「間引かれた」主軸線を描く。これにより、2階対称テンソル場の独立6成分を1枚の図で表すことができるようになる。
このようにして可視化領域内に描画された主軸線群によって、2階対称テンソル場の「流れ」と「大きさ」を理解することができるようになる。さらに、2階対称テンソルの各成分のスカラー値を表すコンター図は、座標系の向きによって全く異なるが、本可視化手法によって描かれる主軸線群は座標系の向きに依らない。さらに、本可視化手法に必要なデータは主軸線群を構成する線分の頂点座標と線分がもつスカラー値のみであり、2階対称テンソル場データを縮約して可視化することが可能である。
発表当日には、本手法を用いた可視化例をいくつか示しつつ、動的波動場への適用についても議論する。
一方で、3次元空間内で2階対称テンソルを用いて表される物理場(例えば、連続体における歪みや応力など)は6個の独立な成分をもつ。例えば、応力の一般的な可視化手法では、3つの直応力と3つのせん断成分であるスカラー値を色づけによって表した6枚のコンター図、または3つの主応力値(いわゆる最大・中間・最小主応力)を色づけによって表した3枚のコンター図と、それぞれの主応力値の向きを表す線分を描いた3枚の線分図が必要となる。これら複数の図を見ながら直観的に2階テンソル場の全体像を把握することは不可能であると言わざるを得ない。
この問題から、これまでに2階テンソル場の直観的な理解を目指したtopology-basedな可視化手法が提案されている。これらの手法では、2階対称テンソルの3つの主軸方向の線分の長さを主値の絶対値によって重み付けすることで決定し、これら3つの線分を軸とする楕円体か、楕円体を長軸方向に連結することで得られる楕円チューブを描画する。しかし、これらの手法は、主値が負の値をもつことがない2階テンソル場では有効であるが(例えばMRI画像のtractographyに用いられる拡散テンソルなど)、応力や歪みテンソルのように主値が負となる場合がある2階テンソル場では、その物理的意味を正しく反映することができない。
そこで、本研究では、3次元空間内での2階対称テンソル場を直観的に正しく把握できる新たな可視化手法とアルゴリズムを提案する。本手法は2階対称テンソルで表される物理量一般に適用可能だが、ここでは簡単のため対象を応力場に限定して手法の概要を示す。
本手法では3次元空間内の可視化領域全体を互いに重なり合わない小領域に分割し、その小領域内に定義される応力テンソルの主軸と主値を用いて可視化を行う。ここで小領域内の応力テンソル場は一定である。これにより、個々の小領域内において主軸方向を接方向とする線分を描画することができる。その線分が小領域の境界を通過すると、次の小領域で定義される3つの主軸方向のうち、線分に最も滑らかに接続される主軸方向を選択し、この向きを接方向とする線分を境界の通過点を通るように小領域内に描く。この主軸方向の選択において、必ずしも最大・中間・最小主応力に対応した主軸を選択している訳ではない点に注意しなければならない。各線分は、小領域ごとに、その主軸方向に対応した主値によって色付けをする。この線分の描画作業を、可視化領域内の任意の位置・数に設定した描画開始点(シード)から行うことで、可視化領域内に複数の線(主軸線)を描くことができる。2階対称テンソル場では、可視化領域内の全ての点ごとに、互いに直交する3本の主軸線を描くことができるが、ここでは、例えば各シードで直交する3本の主軸線を描画することで、領域内に「間引かれた」主軸線を描く。これにより、2階対称テンソル場の独立6成分を1枚の図で表すことができるようになる。
このようにして可視化領域内に描画された主軸線群によって、2階対称テンソル場の「流れ」と「大きさ」を理解することができるようになる。さらに、2階対称テンソルの各成分のスカラー値を表すコンター図は、座標系の向きによって全く異なるが、本可視化手法によって描かれる主軸線群は座標系の向きに依らない。さらに、本可視化手法に必要なデータは主軸線群を構成する線分の頂点座標と線分がもつスカラー値のみであり、2階対称テンソル場データを縮約して可視化することが可能である。
発表当日には、本手法を用いた可視化例をいくつか示しつつ、動的波動場への適用についても議論する。