日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC27] 火山防災の基礎と応用

2021年6月6日(日) 10:45 〜 12:15 Ch.25 (Zoom会場25)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)

10:45 〜 11:00

[SVC27-01] 新しく構築したシミュレーションモデルによる降灰ハザードマップ

*中谷 剛1、浅野 敏之1 (1. 国立大学法人 鹿児島大学 地震火山地域防災センター)

キーワード:降灰シミュレーション、ハザードマップ、大正噴火、桜島

桜島は活発な火山で、2020年には432回の噴火(鹿児島地方気象台;爆発もしくは概ね噴煙の高さが1000m以上の噴火回数)があった。そのわずか西側6kmの臨海部には、60万人都市の鹿児島市の中心市街地がある。近年、1914年の大正噴火に匹敵するマグマ量の蓄積が観測されており、近い将来に大規模噴火が起きる可能性があるという警鐘が鳴らされている。
大規模噴火に限らず、規模が小さくても頻繁に起こる噴火によってインフラが被害を被る場合がある。2020年5月及び8月の噴火による降灰の影響で、鹿児島空港ではそれぞれ10便、20便の欠航が発生した。鹿児島空港は、火山島を含めた離島を結ぶ国内線が多く、鹿児島空港を中心とした航路の安全確保が重要な地域となっている。

地震火山地域防災センターでは、こうした地域の防災力向上のため、リアルタイムで降灰を予測し、想定される災害リスクを評価する手法について検討を行なってきた。本発表では、新しく構築したシミュレーションモデルによる降灰ハザードマップについて報告する。

降灰シミュレーションモデルは、単位時間あたりに放出される粒径別噴煙量と火砕物の粒径別降下速度を考慮した2次元移流拡散方程式を基礎方程式とした。噴煙量の鉛直分布は、鈴木式(1983)で与えた。計算に使用する粒径分布は、Φスケールで-5から5の11粒径(32mm〜0.03125mm)とした。
降灰シミュレーションでは、2次元移流拡散方程式の移流項を風上差分で、拡散項を中央差分で解いている。計算領域は鹿児島県本土全域の約150km四方で、高度1500m〜20000mまでを計算対象とした。計算格子数は169x169x38の約100万点である。計算時間を短縮するため、水平方向には不等間隔格子を採用した。格子間隔は桜島周辺が500m、計算領域端付近が1330mとした。高さ方向は500m間隔とし、高度1500mを通過した降灰はそのまま地上に堆積するとしている。

降灰ハザードマップは、以下の手順で作成した。
1)2020年の毎日午前9時に大正噴火級の噴火が起きるとする。
2)噴火は39時間継続し、噴煙高度の時間的変化は大正噴火と同じ条件とする。
3)総噴煙量は6億m3とする。
4)鹿児島高層気象台が、午前・午後9時に毎日実施しているゾンデ観測による風向風速から、高度500m毎に東西・南北の2方向成分の風速を算出し、シミュレーションに利用する。
5)1ケースの計算時間は48時間とし、1時間ごとに噴煙高度を、12時間毎に風速を更新しながら計算を実行する。
6)2020年1月1日から2020年12月31日までの366日間の計算を行い、年間最大降灰堆積深を計算地点毎に求め、降灰ハザードマップを作成する。

降灰ハザードマップ2020年版から、鹿児島市中心市街地臨海部で1mを超える降灰堆積深となるエリアがあることなどが示された。