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[SVC27-02] 建物設備吸気口への火山灰流入に対する粒子慣性力影響
キーワード:降灰、建築昨日被害、空間濃度、慣性力、建物空調
都市域に近い火山の大規模噴火では,建物やインフラへの様々な影響が懸念される。筆者らは建物の空調設備への影響に着目,屋外設置される冷却塔に対する降灰実験を行い,降灰深がおよそ20mm~30mm程度を超えると,機器に吸引された火山灰の影響で動作に有意な影響が出る可能性を示した1)。空調設備の吸気は通常機器の側面や建物側面などの垂直面で行われる。そのため,空調設備への吸引過程では,落下する火山灰粒子が水平方向に働く吸引力の影響で,吸気口に向かうように運動の向きを変えることになる。先行研究1)では,火山灰吸引量を降灰深と関係づけるのに,火山灰の空間濃度と吸気速度の積によって吸引速度が表され,一方で,空間濃度と粒度別終端落下速度から降灰強度が決まることを利用して,火山灰吸引量と降灰強度とを関連させた。そこでは,吸気口前面で落下中の火山灰粒子は吸気の気流に即座に応答するとした。これは,重力沈降は考慮するが水平方向へは空気と同じ動きをするという,広域の降灰予測での火山灰のパッシブスカラーとしての扱いと同じである。降灰予測でのこうしたやり方は十分に適切であるが,建物や空調機器周辺では気流の局所的変化が大きいため,粒子の慣性による気流変化への応答の遅れの考慮の有無により,吸引量に違いが出る可能性が高い。
ここでは垂直面の吸気に対し,火山灰粒子の慣性力を考慮した場合の火山灰吸引量について,単なる空間濃度と吸引風速の積として決まるものとの違いを数値的に考察した。多相流体の方法に倣って粒径別に粒子の運動方程式を用い,垂直落下する火山灰粒子について,直方体で近似された室外機の側面吸気口からの吸収量を計算した。その際,吸気口近くの気流場は,非圧縮連続式を束縛条件とする変分法から得られる簡易的なものを用いた。その結果,慣性力を考慮すると,単に空間濃度と吸引風速の積として吸収量を評価するよりも吸引量が少なくなる傾向が得られた。粒子の非球形度の影響についても検討した。非球形の度合いが増すと抗力係数が増加することが多いが,そうした場合には,同じ質量・体積の粒子では,非球形の度合いが大きいと上に述べた減少の程度が小さくなることが示された。こうした結果は,空調機器に影響の出始める降灰深を大きい方にずらす可能性のあることを示唆している。
ここでは垂直面の吸気に対し,火山灰粒子の慣性力を考慮した場合の火山灰吸引量について,単なる空間濃度と吸引風速の積として決まるものとの違いを数値的に考察した。多相流体の方法に倣って粒径別に粒子の運動方程式を用い,垂直落下する火山灰粒子について,直方体で近似された室外機の側面吸気口からの吸収量を計算した。その際,吸気口近くの気流場は,非圧縮連続式を束縛条件とする変分法から得られる簡易的なものを用いた。その結果,慣性力を考慮すると,単に空間濃度と吸引風速の積として吸収量を評価するよりも吸引量が少なくなる傾向が得られた。粒子の非球形度の影響についても検討した。非球形の度合いが増すと抗力係数が増加することが多いが,そうした場合には,同じ質量・体積の粒子では,非球形の度合いが大きいと上に述べた減少の程度が小さくなることが示された。こうした結果は,空調機器に影響の出始める降灰深を大きい方にずらす可能性のあることを示唆している。