日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC28] 活動的⽕⼭

2021年6月4日(金) 10:45 〜 12:15 Ch.25 (Zoom会場25)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)、座長:堀田 耕平(富山大学)、宗包 浩志(国土地理院)

11:30 〜 11:45

[SVC28-04] 非噴火地盤変動による桜島火山の活動評価

*井口 正人1 (1.京都大学防災研究所火山活動研究センター)

キーワード:桜島火山、地盤変動、火山ガス

2017年11月から桜島南岳の噴火活動が活発化している.南岳は1955年10月13日以降,噴火活動を続けていたが,2003年頃から噴火回数が減少し,2009年から昭和火口において噴火が頻発するようになるとほとんど噴火が発生しなくなった(2009年10月3日や2012年7月24日のブルカノ式噴火のようにやや大型の噴火は稀に発生したが).2017年11月以降の噴火活動は20日以上の休止期間によって6つのEpisodeに分けられる.そのうち,2019年9月から2020年6月まで続いたEpisode 5は最も噴火回数と火山灰放出量が多い.

噴火は多くの場合,噴煙の放出を検知することによりイベントと認識されるが,冠雲により噴煙が目視できないことも多いことから,爆発地震や空振の発生をもって噴火(桜島の場合は爆発と定義)イベントとされる.桜島においては,噴火に前駆する膨張と噴火に同期する収縮地盤変動が噴火事象と良い対応関係にあるので,伸縮計の記録から膨張―収縮イベントの検出を行った.噴火活動が南岳に移った2017年11月以降の,膨張―収縮イベント(ここでは5分以内に5ナノストレイン以上の変動のあったイベントと定義する)は4180回であり,そのうち,1230回が噴煙の放出,爆発地震,空気振動から噴火と識別される事象に対応する.残りの2950回は,従来の噴火リストに挙げられていないものであるが,明瞭な膨張―収縮を伴い,火口上には白煙が目視できることから,火山ガスの放出に関連したイベントと考えられる.

ここでは,噴火活動に伴わない膨張―収縮イベントを非噴火地盤変動イベント(NEGD,Non-eruptive ground deformation)として,その発生頻度と地盤変動を引き起こす圧力源の体積変化量を検討した.非噴火地盤変動イベントは一連の噴火活動であるEpisodeの初期から前半に多く発生し,後半では低下することがわかった.Episodeの前半ではgas-richなマグマの貫入と放出が卓越するが,Episodeの進行とともに脱ガスが進行し,ash-richなマグマの貫入が卓越するようになった.このことはEpisode前半にSO2放出率が高く,後半には低下することと整合的である.