日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC28] 活動的⽕⼭

2021年6月4日(金) 13:45 〜 15:15 Ch.25 (Zoom会場25)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)、座長:大湊 隆雄(東京大学地震研究所)、前田 裕太(名古屋大学)

14:30 〜 14:45

[SVC28-10] ファインチューニングを用いた地震波自動検測−八丈島臨時観測点データへの適用−

*國政 光1、東 宏幸1、小田 義也1 (1.東京都立大学)

キーワード:ディープラーニング、ファインチューニング、地震波初動、自動検測

近年, 八丈島付近では火山活動が活発化したことが報告されている(木村ほか, 2002). 火山の噴火リスクを評価するために, 地下構造を解析することが重要である. 地下構造の解析を行うために様々な手法があるが,その中で, 我々は自然地震トモグラフィのような自然地震を用いた手法によって地下構造を解明することを目指している.自然地震を用いて地下構造を精度よく解析するためには、なるべく多くの正確な地震波初動が必要である. しかしながら八丈島は地震活動が低調なため, 発生する地震数が少ない. そこで我々は地下構造解析の精度の向上のため地震数の増加を試みた.

近年のディープラーニングの発達は様々の分野で革新的な成果を挙げつつある. しかしディープラーニングには大規模なデータセットを用意することが必要で, これには膨大な時間がかかる. この問題を解決するために, 我々はファインチューニングと呼ばれる手法を用いた. ファインチューニングは学習済みモデルのパラメータの一部を再学習する手法で, 少数のデータを用いてその少数のデータが持つ特徴を効率よく抽出することができる。我々は八丈島データの地震波初動検出にこの手法を適用することで, 地震数の増加を目指した. また自動検出を行うことで労力の削減も併せて目的とした.

我々は八丈島に設置した地震計で取得した波形をGeneralized Seismic Phase Detection with Deep learning (以降GPD) (Ross et al., 2018)に適用した. GPDとはCalifornia Institute of Technologyグループによって開発されたConvolutional Neural Network (以降CNN)モデルである. このモデルは波形をP波,S波, またはノイズに分類することができる.

GPDを八丈島での観測波形に適用したとき, 多くの地震波形ではないものをP波またはS波と分類する誤検出がみられた. 我々は以下の2つの要因によってこの誤検出が引き起こされたと考えた. 1つが風や波浪によるノイズが観測波形に干渉で,もう1つがGPDの学習に使用したデータと, 八丈島観測波形データの相性である.

これらの問題を解決するため, 我々は2つの目的をもってファインチューニングを適用した. 1つが八丈島のノイズを学習させて誤検出数を低減すること,もう1つが八丈島で観測したP波,S波を学習データとすることでGPDの学習に使用したデータと, 八丈島観測波形データの相性の問題を解決することである.

我々は検出数と検出時刻の正確性について手動検測結果と比較をすることでファインチューニングの効果を評価した. 結果として, 誤検出を低減して高精度の検出ができた場合もあったが, できなかった場合も存在した.