15:30 〜 15:45
[SVC28-13] 2015年8月15日桜島群発火山構造性地震の発生過程
キーワード:ダイク、群発地震、桜島火山
1.はじめに
地殻内において典型的なマグマの輸送形態としてダイクが挙げられる.ダイクのジオメトリは地殻内の差応力に支配される.地殻内にダイクが貫入することにより,周囲の岩石に応力変化が生じ,岩石の破壊強度を超えると脆性破壊が起こり,地震となる.この地震は火山構造性地震と呼ばれるP波とS波が明瞭でスペクトルがブロードな地震である.そのため火山構造性地震の震源分布やメカニズム,そして地盤変動からダイクのジオメトリやダイク成長過程が議論されてきた.
本講演では2015年8月15日桜島火山のダイク貫入による群発火山構造性地震の発生過程について述べる.地盤変動から数時間という短時間で270万m3のダイク貫入が起こったことが分かっている(Hotta et al., 2016).高レイトのマグマ貫入は爆発性の高い噴火に繋がることが多い(Moran et al., 2011)ため,このダイク貫入の地震発生過程について考察することは重要である.
2.震源とメカニズムの時空間変化
群発地震は午前7時頃から発生し,時間当たりの発生頻度が増大していき,午前11時台には150個以上が発生し,その後徐々に発生頻度が低下し,8月15日で887個の火山構造性地震が発生した(Hotta et al., 2016).8月15日に発生した地震を総当たりで相関係数を計算し,地殻変動の変化率との対応から4つの期間に分割して震源とメカニズムを示す.震源は初動走時と相互相関時刻差を用いDouble-Difference法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)にて推定した.メカニズムはP波初動極性とP波とS波振幅比(Hardebeck and Shearer, 2002 and 2003)にて推定した.以下に結果を示す.
期間A(7:00-9:00)・期間B(9:00-10:30):南岳山頂から0.5 km東の深さ0.3-1 kmに震源が分布し,メカニズムは正断層でT軸が北西―南東方向を向いた.期間C(10:30-12:00):深さ0.3-3 kmに震源が分布した.期間D(12:00-24:00):震源が北東に1km拡大し,深さ0.2-1 kmと1.5-3.5 kmに分布した.期間Cと期間Dでは,メカニズムは正断層およびストライク・スリップが混在し,T軸は北西―南東方向と北東―南西方向が混在する.
3.群発火山構造性地震の発生過程
地殻の破壊強度は封圧と温度と地殻歪み速度の関数で表される(長,1993).深くなるにつれて脆性破壊強度が増大する.ダイク貫入の位置が変化せず,ダイクの膨張が地盤変動と同様に進行したと考えると,期間AとBでの浅部で地震が発生し,その後期間CとDで深部にて地震が発生したことが説明出来る.
また,期間CとDにてT軸が北西―南東方向と北東―南西方向と直交する方向に混在して分布しているのは,ダイクの先端部分近傍で発生した地震(Ukawa and Tsukahara, 1996)と,ダイクの側方の領域にて発生した地震(Roman and Cashman, 2006)が混在していることで説明出来る.
4.公表論文
本研究の成果は以下の論文にて公表している.詳細については論文を参照していただきたい.
Koike, M. and Nakamichi, H. (2021) Dike inflation process beneath Sakurajima volcano, Japan, during the earthquake swarm of August 15, 2015. Front. Earth Sci. doi:10.3389/feart.2020.600223.
地殻内において典型的なマグマの輸送形態としてダイクが挙げられる.ダイクのジオメトリは地殻内の差応力に支配される.地殻内にダイクが貫入することにより,周囲の岩石に応力変化が生じ,岩石の破壊強度を超えると脆性破壊が起こり,地震となる.この地震は火山構造性地震と呼ばれるP波とS波が明瞭でスペクトルがブロードな地震である.そのため火山構造性地震の震源分布やメカニズム,そして地盤変動からダイクのジオメトリやダイク成長過程が議論されてきた.
本講演では2015年8月15日桜島火山のダイク貫入による群発火山構造性地震の発生過程について述べる.地盤変動から数時間という短時間で270万m3のダイク貫入が起こったことが分かっている(Hotta et al., 2016).高レイトのマグマ貫入は爆発性の高い噴火に繋がることが多い(Moran et al., 2011)ため,このダイク貫入の地震発生過程について考察することは重要である.
2.震源とメカニズムの時空間変化
群発地震は午前7時頃から発生し,時間当たりの発生頻度が増大していき,午前11時台には150個以上が発生し,その後徐々に発生頻度が低下し,8月15日で887個の火山構造性地震が発生した(Hotta et al., 2016).8月15日に発生した地震を総当たりで相関係数を計算し,地殻変動の変化率との対応から4つの期間に分割して震源とメカニズムを示す.震源は初動走時と相互相関時刻差を用いDouble-Difference法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)にて推定した.メカニズムはP波初動極性とP波とS波振幅比(Hardebeck and Shearer, 2002 and 2003)にて推定した.以下に結果を示す.
期間A(7:00-9:00)・期間B(9:00-10:30):南岳山頂から0.5 km東の深さ0.3-1 kmに震源が分布し,メカニズムは正断層でT軸が北西―南東方向を向いた.期間C(10:30-12:00):深さ0.3-3 kmに震源が分布した.期間D(12:00-24:00):震源が北東に1km拡大し,深さ0.2-1 kmと1.5-3.5 kmに分布した.期間Cと期間Dでは,メカニズムは正断層およびストライク・スリップが混在し,T軸は北西―南東方向と北東―南西方向が混在する.
3.群発火山構造性地震の発生過程
地殻の破壊強度は封圧と温度と地殻歪み速度の関数で表される(長,1993).深くなるにつれて脆性破壊強度が増大する.ダイク貫入の位置が変化せず,ダイクの膨張が地盤変動と同様に進行したと考えると,期間AとBでの浅部で地震が発生し,その後期間CとDで深部にて地震が発生したことが説明出来る.
また,期間CとDにてT軸が北西―南東方向と北東―南西方向と直交する方向に混在して分布しているのは,ダイクの先端部分近傍で発生した地震(Ukawa and Tsukahara, 1996)と,ダイクの側方の領域にて発生した地震(Roman and Cashman, 2006)が混在していることで説明出来る.
4.公表論文
本研究の成果は以下の論文にて公表している.詳細については論文を参照していただきたい.
Koike, M. and Nakamichi, H. (2021) Dike inflation process beneath Sakurajima volcano, Japan, during the earthquake swarm of August 15, 2015. Front. Earth Sci. doi:10.3389/feart.2020.600223.